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MD区分を細分化することは良いことなのか?

*過去のブログでよく読まれた記事を掲載しています。(2016年)

 

★2015年AWのニュース

15F/Wシーズン暖冬の影響で業界全体が厳しいといわれるなか、セレクトショップのユナイテッドアローズ(以下UA)は、先シーズンの暖冬のなかでも売上自体は好調でした。

好調の要因としていくつかの理由が挙げられていましたが、その一つにMD区分を6つから8つへと変更したことが功をそうした。という理由が挙げられていました。以下その記事を抜粋します。

【「グリーンレーベル リラクシング」は、昨年春から1年のMD区分を以前の6つから8つに細かくしたことで、売れ筋商品を迅速に追加対応できるようになったことも奏功し、ロングカーディガンはシーズンを通して高い売上を保ったという。】(2/6 fashionsnap.comより抜粋)

 

★シーズン8区分を考察する

UAが2015年の春からMD区分を8つにするということは、ニュースにもなっていましたし、そのことについて賛否両論いろんな論評もありましたが、こういった記事が載るとどこの企業の経営者もあたかも「MDを細分化させることは良いことだ。」→「真似をしよう。」という風潮になりがちです。
ということで、私の独断と偏見でMD区分に対しての考察をしてみようと思います。

 

記事やインタビュー等で判断するMD区分を8つにするということを額面上受け取れば、年間8回商品を入れ替えるということで、1アイテムの平均販売日数が45日ということになります。凡そ45日で1つの商品の販売を終えるということです。

当然上記の記事にも記されているように、追加対応できるということなのですべての商品を8区分で考えているのではないのだろうと思います。
推理・推測すると、商品全体の6割から7割を8区分で考えているイメージではないでしょうか?

あとMD区分を8つにすることと追加対応しやすくなるということ全くは関連性がありません。おそらく海外生産だとリードタイム(以下LT)が2か月はかかると推測されるので、45日の販売日数では追加商品は間に合いません。事前に新規商品と追加商品の売上予算区分を高い精度で作っていれば可能ですが。
(そこを読み取らないで、8区分だけが先行してしまうと痛い目にあいます。)

 

★販売期間を短くするデメリット

仮に店頭に展開できる型数を100型だとすると、年間800型生産するということになり、1型あたりの平均生産量が減ります。(スケールメリットはより出しづらくなります。)当然企画・仕入・管理する型数が増えるので、人数も増やさなければならなくなり、固定費も増加するおそれがあります。

また、販売期間が平均45日ということは、当然すべての商品が思い通り売れるわけではなく、投入型数も増えるので店頭で出し切れない商品も増えるのではと推測されます。そうすると、店頭での作業内容が増え店頭スタッフの疲弊へと繋がりかねません。

 

★自分たちの組織にあったスタイルを構築せよ!

以上のようなことが起こると当然売上に対して仕入が増加することが予測され、在庫過多になってしまう可能性が上がります。
(商品回転を8回転させることで、在庫回転が下がる。)

MDを8区分するということは、かなり精度の高いMD実践が求められますし、UAのような大きい企業は人材がそろっているので可能なのかもしれませんが、現実なかなかデメリット以上のメリットを見出すのは難しいのではないでしょうか。

 

事実、前出の記事の最後はこのように締めくくられています。

【売上は好調だが、売上総利益率が前年同期よりも低下しており、セールの短期化などによって値引きロスを低減させ、同時に商品力を向上させることで中長期的な改善に取り組む。】
(2/6 fashionsnap.comより抜粋)

 

最後に、ここから何を読み取らなければならないかというと、要は目先の情報に踊らされることなく、できもしないことを導入する前に、自分たちの持っているスペック(生産・生地背景・リードタイム・MDスケジュール)の強み・弱みを理解する。そして、会計的思考・要素をMDに取り入れ、自分たちにあったMD区分を探し、「お客様に喜ばれる」MD構築しなければならないということはないでしょうか。

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