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前回の記事では、三陽商会の在庫が1年で24億円増加しているのは何故??
ということで、一つの理由としては、MDの予算設計(とくに仕入の考え方)が、うまくいかなかったのでは?ということを考察しました。
しかしながら、在庫増加の原因は、どうも他にもあるように思えてなりません。
MD設計や期中の仕入・粗利コントロール以外で、在庫が増える要因を以下、簡単に記載しますと。
① 商品そのもの問題
② 生地・生産等ミニマムの壁
③ 展開SKUの多さ
他の要因もあるとは思いますが、このようなことが考えられます。
三陽商会ものづくりに対する姿勢は、業界ではよく知られたところです。
実際、系列会社で日本に工場も持っています。
”サンヨーソーイング青森”
http://www.sanyocoat.jp/sewing/
サイトを見てもモノづくりに対する真摯な姿勢が伺えます。
もしかすると、MDの商品面。ディレクションに問題があったのかも?しれません。しかしながら、決算説明会資料を読んでも、その影響は少ないと考えられます。
”三陽商会 2018年度決算説明資料 ”
https://www.sanyo-shokai.co.jp/company/ir/pdf/30_76_renketu_s.pdf
三陽商会は、600億弱の売上規模ですが、レディースで13事業。メンズで10事業。メンズレディース共用が6事業あります。
(WEBサイトで確認。しかし、実際は重複しているブランドがかなりあるので、捉え方が難しい。)
全部で29事業です。ということは?
上記の金額は1事業当たりの平均金額になり、思っている以上に、生地・生産ミニマムの壁をクリアするのは、大変そうです。
しかしながら、前述したように三陽商会は系列工場を抱えています。
また、1点単価が高いブランド。国内生産が多く、海外生産の多い大手他社に比べれば、その壁は、私の経験上から低いのでは?と推測されます。
(但し、海外生産の多い事業部は、この可能性も大いにあるが。。。)
最後にSKU展開の多さの問題です。
三陽商会のWEBサイトには、各ブランドの展開サイズチャートが記載されていますので、こちらを確認してみると。
”三陽商会ブランド別サイズチャート”
https://faq.sanyo-shokai.co.jp/faq/show/33?site_domain=sanyo-shokai
これを見てみると、高価格帯であるレディースのEPOCAが、7サイズ(全てではないだろうが)展開されていることがわかります。少し価格帯の低いAMACAも7サイズです。
またメンズもシューズの三陽山長は仕方がない部分がありますが、価格が低くない、MACKINTOSH LONDON MENのトラウザーズパンツはなんと9サイズも展開されています。
ある意味。低価格・定番商品(販売期間が長い商品が多い)中心のユニクロ並みのサイズ展開です。
三陽商会の多くのブランド。とくにレディースは、定番商品ばかりの展開ではなく、商品そのものの付加価値や、トレンド等を意識した品揃えの筈です。
また、価格帯も高いブランドが多いですから、顧客ターゲットもマスに売るようなブランドなど、あるように見えません。
事実。決算説明会資料にも
ジャパン・プレミアム・ファッションカンパニー
•⽇本のクラフトマンシップに基づく、圧倒的なモノづくりの実現 -製造⼯程の⼀部/全部を⽇本に置き、⽇本固有のクラフトマンシップに則った ⾼品質なモノづくりを⾏う
•⾼品質・⾼付加価値商品を買いやすい価格で提供 -ラグジュアリーとアフォーダブルの中間に位置し、既存ブランドや企業にはない 新たな価値を適正な価格で消費者に提供
と記載されています。
にも拘らず、なぜこんなにも、多くのサイズ展開の必要性があるのか?まったくをもって意味不明です。
そもそもの事業規模が小さいブランドが、豊富なサイズ展開を行えば、当然多くの商品アイテム数は投入できません。
しかし、商品投入アイテム数を削減しなければ、必然的にサイズ欠品が増え、逆に売上減少を招きます。そして、サイズ欠品を防ごうとすれば、在庫量増加のリスクが高まります。
以上のことから考えると。
というのが、私の考察です。
ファッション・アパレル小売とは言っても、組織それぞれに,商品そのもの・ターゲット・価格帯・販売期間等違うわけですから、”最適”はそれぞれ違うのが当たり前田のクラッカー🎉です。
サイズ展開を増やせば、ユニクロのように売れるなど幻想でしかありません。
実際。界隈では以下のようなことが言われているようです。
三陽商会も、AIや肩書のみが立派な人には頼らず、現場で頑張っている社員を中心に、一丸となって知恵を出し合い、素早い改革を実行してほしいものです。
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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