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2024年のファッション業界振り返り -気になったニュースを総括してみた

2024年もあと1週間で終わり…、ということで今年度のアパレル・ファッション業界で何が起こったのか?を振り返ってみました。そこで、ファッションニュースウォッチが趣味の筆者が個人的に特に気になったニュースをいくつか抜粋して備忘録として残しておきたいと思います。これで2024年のファッション業界の復習は完璧です。(誇大広告オブザイヤー)

では早速見ていきましょう。

■栄枯盛衰・EssilorLuxotticaがSupreme買収

エシロールルックスオティカが「シュプリーム」を約2356億円で買収

EssilorLuxotticaがVF CorporationよりSupremeを買収、という事で結構な話題になっておりましたね。Supremeは、VFが2020年に21億ドルで買収していたのですが、それをルックスオティカに15億ドルで売却と、お値段が大きく下がった訳です。SupremeはラグジュアリーストリートのトレンドからLOUIS VUITTONとのコラボなどで価値が高騰し、高値でVFに売却…、までは良かったのですが、直近ではストリートブランドに過去ほどの勢いがなく、金額が下がるのも致し方ない状況だったかと。VFはVFで直近業績がめちゃくちゃ悪く、以前からSupreme売却の予測はあったので突然のお話でもなかったのですが。(VFの保有するブランドはアウトドア関連が多く、ここもダウントレンド…。)しかし買った先が個人的にはちょっと意外でしたね。「ルックスオティカってサングラスのライセンスの?」というイメージが強かったので…。

 

■ストリート・ゴルフカテゴリーのダウントレンドもECの取り組みが先進的なTSI

こちらもダウントレンド(ストリート・ゴルフ)のブランドが多かったTSIですが、ナノユニバースのECサイトをShopifyにリプレイスし、年始にはMIX.Tokyoまでもリプレイスする予定と、これはEC業界からするとめちゃくちゃ大ニュースだったのではないでしょうか。大手アパレルではジュン、三陽商会で自社ECモールがShopifyに切り替わっており、サザビーリーグ・パルグループ・アダストリア・ベイクルーズでも一部のブランドは既にShopifyを採用。そこに加えて大規模リプレイス案件なので、結構な数の大手アパレルが次々とShopifyへのリプレイスを検討し始めているという噂が界隈では出てきております。詳細な説明は省きますが、これは非常に先進的な取り組みと言えるでしょう。先々の販管費の推移がどうなるのか気になります。

一方でTSIの中のブランドは動きに波があり、冒頭で記載しましたゴルフ(PEARLY GATES・New Balance Golf)やストリート(HUF・STUSSY)の業績が悪化。不採算ブランドの整理が始まったのか、ローズバッドは事業譲渡、BAITやメクルはブランド休止など、激動の1年だったように思います。新ブランドの開発や、既存ブランドからの派生は多いので、それらがどうなるか?に今後注目ですね。

TSIホールディングス 「ローズバッド」をビーズインターに譲渡

インフルエンサーMAIが手掛けるD2C「メクル」がブランド休止、育児に専念

 

■ゲーム関連銘柄の勢い

「ボルトルーム」が国内初の直営店をオープン、不定期で営業

ゲーミングコミュニティのボルトルームが店舗を出店した、とのニュースも今年ありましたね。以前から有名セレクトショップやVtuberとのコラボ商品が即完売するなど話題になっておりましたが、売上高が10億円に迫る?などと噂されており、結構な額に成長しているそうです。その他、Eスポーツのチームが自前でアパレル製品を販売している事例はよく耳にしますし、ファッションブランドとのコラボもニュースで見かけますので、一応注目しておいた方が良いかと思いピックアップ。ファングッズの側面が強そうで、継続してファッションブランドの顧客になるかどうか?はやや未知数ですが。(FENNELの中には元ファッション業界でがっつり経験ある人がいるようです)

zeta division

fennel

 

■相変わらず多い雑誌休刊の件

もはや毎年のことではあるのですが、ファッション雑誌の休刊や、出版する頻度を下げるとのニュースが今年も複数ありました。過去から有名な媒体も休刊していますので、もうそんなに驚くことでもないかもしれません。筆者も普段、お客様のブランドが雑誌に掲載された際の効果をEC側で計測しておりますが、当たり外れは大きいように思います。30代アッパーの女性はそこそこ効果が見込めることが多いのですが、若年層は中々厳しく、SNSに箇所分時間を奪われていることを実感します。

ファッション雑誌は掲載しても効果が無いのか?

(雑誌掲載の効果に関してはこちら参考までに。)

ララビギンが定期刊行終了、事実上の休刊

(ララビギン、初期は結構な効果あったのに…。)

 

創刊70周年、雑誌「メンズクラブ」が定期刊行終了 不定期刊行へ

雑誌「bis」が隔月刊から季刊に刊行形態を変更

 

昨年末にはジンジャーが月刊での発刊を休止。芸能人載せればいい思っている幻冬舎らしい雑誌でしたね。

幻冬舎の女性誌「ジンジャー」が月刊を終了 14年9ヶ月にわたり刊行

ファッション雑誌がカタログ通販に見えてきた今日この頃

最近は広告費だけで運営は厳しいのか、雑誌社がECサイトを運営したり、PBを開発したりという運営が珍しくなく、カタログ通販みたいな見え方になっている雑誌も散見されるようになりましたね。(流石にモード誌はそんな感じでもないのですが)

 

■「売らない店」は何処にいった?

OMO店舗「オンワード・クローゼットセレクト」 地方都市で手応え

明日見世 リニューアル

数年前に、店頭で即売せず試着をメインに、あとはECで販売するショップがいくつか出てきておりました。それが今や、店頭でしっかり在庫を持ち、販売するに至っております…。「OMO店舗」と銘打って華々しくスタートしたものの、これだと既存店と何も変わりませんね。(『買わなきゃいけない』と負担に感じる強迫観念を取り払いたかったんちゃうんかい。)

東京大丸の明日見世では、各商品ごとに相変わらず自社ECへの導線は残されていますが、それぞれが別サイトなのでQRをスキャンして購入しようとする度に決済情報の入力を求められるのは変わっておりません。その上で店頭に在庫があるなら、ほぼ店頭で購入するのでは…。

オンワードクローゼットは、店舗の無いブランドのタッチポイントにはなるでしょうけど、既存店でもクリック&トライはやっているので、そこまでの広さを取って既存ブランドまで展開させる意味がちょっとよくわからず。直近の在庫の増え方も尋常じゃないので、これが在庫の温床になっていなければいいのですが。

 

■SHEIN・Temuがベトナムでサービス停止

TemuにSHEIN…中国ECがベトナムで停止

個人的にとても良いニュースだと思ったのはこちらで、SHEIN・Temuがベトナムで販売停止との事。(日本もはよ)双方、まぁ評判がひどいですからね…。

 

シーイン のマーケットプレイス、「グレーマーケット」商品であふれる:ホカなどトップブランドの商品も

模倣品の報道が相次ぎ、広告の打ち方も節操のないものが多く散見されます。

 

SHEIN、月内に英上場申請か

SHEINはアメリカで上場しようとしておりましたが、それが頓挫。現在、イギリスで上場申請中とのこと。ヨーロッパでもSHEINは規制対象になる可能性もあるので、これもどうなるか微妙ですね。

フランス下院、ファストファッション罰則法案を全会一致で可決 「シーイン」などが対象に

 

中国系ECのSHEINが競合Temuを知的財産権侵害で提訴、訴訟合戦つづく

そんな中、SHEIN・Temuの2社同士も係争中。知的財産権侵害て…。究極の目くそ鼻くそ戦争。こんな「おまいう」案件珍しいですね。どちらも早急に消えて欲しいので、潰し合いは歓迎したいところです。(個人の感想です。)

(イメージ画像)

エイリアン vs アバター  ※アフィリエイトリンクは貼っておりません。

 

余談ですが、「SHEINになる方法」というやべぇ記事が掲載されているのはこちら↓

ZOZOに勝つ!日本のアパレルが「シーイン」になる唯一の手法とは

(なったらあかんやろ。倫理観どうなってるんや…。)

■膨らみ続ける伊藤忠グループ

毎年、伊藤忠関連の記事は非常に多いのですが、今年度気になったのは下記でしょうか。

「カラー」を伊藤忠傘下のコロネットが事業承継

伊藤忠がデサントにTOB、買付価格は約1826億円

デサントに関しては元々、株式を保有しておりましたがこの度、伊藤忠が完全子会社化したと。また、傘下のコロネットがカラーを事業継承したとの事で、筆者の古巣の競合にあたる会社でしたので個人的に気になった次第です。コロネットは元々、インポーターなのでドメのブランド取り扱うのにはやや違和感があります。インポーターの得意先は、大手セレクトショップ or 地方のインポート中心に取り扱っているセレクトショップなので、そこにセットで国内のデザイナーズブランドを持っていってもはまらないケースは多い気がしますね。逆にカラーの卸先に、自社のインポートブランドを差し込みたいという思惑もあるのでしょうか。筆者もサラリーマン時代、これを試みましたが大体門前払いでしたね。(「お前の営業力がないからや」という正論はご遠慮ください。)

マッシュスタイルラボ、伊ラゲージ「FPM」を独占輸入販売

こちらのニュースも今年ですが、マッシュはバブアーも同じ座組みでしたね。マスターライセンシーが伊藤忠、製造・販売は他のアパレルという座組みは結構多いような気がしています。(マッシュスタイルラボのBarbour以外に、水甚とEddie Bauer、美濃屋とL.L.Bean、アダストリアとFOREVER 21などなど…。)

 

■ラグジュアリーECの勢力図が激変

韓国のEC企業クーパン、ファーフェッチを買収 700億円超の資金援助で事業継続へ

昨年末、Farfetchがクーパンに買収されたとの事で話題になっておりましたが、ラグジュアリーECの勢力図が大きく変わった一年だったと思われます。また、同じタイミングで売却されたMATCHESFASHIONですが、こちらは今年度に入ってすぐ閉鎖。

フレイザーズグループがマッチズファッションを閉鎖へ 買収からわずか3ヶ月で

再建しようと試みたところ、”一部のブランドからの支払いが数ヶ月間滞っていたことが要因”との事でなかなかのトンデモ案件…。投げ売りもやばかったので、一部のブランドが「マッチズが安く売りすぎてうちのショップで売れない」というお話も耳にしました。

マイテレサがリシュモンから「ユークス・ネッタポルテ」の全株式取得へ

また、Farfetchが買収しようとしていたユークス・ネッタポルテは、ドイツのラグジュアリーEC「マイテレサ」が買収。ラグジュアリーECで利益がしっかり出ていた数少ない勝ち組ですね。FarfetchがM&Aを繰り返して最大手になるか?と思われていましたが夢叶わず。まぁコロナ禍以外、利益大して出てなかったですし、買収したニューガーズグループの有効活用も進んでなかったような。(Farfetchビートが盛り上がってる感まるで無かった…。)ニーマンマーカスにも投資して、リアルを抑える動きしていたと思いますがこちらも、

米百貨店大手サックス・グローバル、「ニーマン・マーカス」の買収を完了 取得額は約4200億円

Saksが買収したと報道あり。そのSaksの親会社はカナダの小売大手ハドソンズベイ・カンパニーで、ここにAmazonが絡み高価格帯ファッション分野のEC販売強化を狙っているのでは?という予測もあるようです。ニーマンマーカスは過去、マイテレサを買収していたんですがこの10年で相関図激変し過ぎ…。

米百貨店“再編”が意味するもの サックス親会社によるニーマン・マーカスG買収

ちなみにラグジュアリーECのセール販売の雄、SSENSEは黒字らしいです。(何故なんだ…。)

Farfetch、Matchesの二の舞を避けられるか。 Ssense が取り組むECのストーリテリング

 

1年を振り返り、毎年のことなんですが大きな動きが結構ありまして、注視していないとすぐに置いていかれるなぁという印象です。(小並感)考察記事を頻繁に書いておきながら何ですが、事実を羅列した際に見えてくるものがあると考えておりますので、誰かが書いた考察記事を鵜呑みにするのでなく、事実から「何が起こっているのか?」を考える方が有益なんではないかと。そんな訳で、今年報道された記事を見ながら皆様の方でも各々、考察して頂ければ幸いです。

今年も記事をお読み頂きましてありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。それでは皆様、良いお年を。

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