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昨今の地球温暖化に伴う「夏の長期化」や「暖冬」など、アパレルマーチャンダイジング(MD)を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。このような状況下、MDの立場として理想的なのは、「小ロット(ミニマムの少なさ)」「短納期(リードタイムの短さ)」で、かつ「高品質」と「高い値入率」を兼ね備えた商品調達です。しかし現実には、人件費や原料価格の高騰、さらには歴史的な円安の進行により、生産工場などの供給側も疲弊しきっています。業界内には「QR(クイックレスポンス)に対応したサプライチェーンの構築」を声高に主張する識者も少なくありません。しかし現場のMDとしては、そのような外部環境の劇的な改善を期待すべきではないでしょう。
マーチャダイザーに今求められているのは、商品の安定供給すら容易ではないという厳しい現実をあらかじめ織り込んだ上で、MDとしての計画や運用の精度を自ら引き上げることです。そこで今回は、この逆風の中でMDがすぐにでも実践すべき具体的なアクションとして、以下の3つのポイントを分かりやすく解説します。
〇過去データの取り込み精度の向上
〇仕入先(背景)の特徴の可視化と共有
〇MD予算策定の具体化と、期中運用の精度向上
この3点です。それでは、以下各項目ごとにわかりやすくお伝えいたします。
よく「アパレルは感性のビジネス」と言われますが、データを活用する重要性は他の業界とまったく同じです。これからはAIやデジタルツールがさらに発達し、誰でも高度な分析ができる時代になっていきます。だからこそ、今改めて見直さなければならないのが、「自分たちのブランドの商品分類が、正しく定義されているか」という基本です。実は多くの組織で、MDの肝である「適時(出すタイミング)」に関する分類や、トレンドなどの顧客の気分を反映する「適品(出すモノ)」の分類定義が曖昧になっています。データの器がいくら立派でも、中身の整理整頓ができていなければ、せっかく集めたお客様の購買行動データの精度はガタガタになってしまいます。この厳しい時代を乗り切るために、過去データの正しい検証と活用は欠かせません。
もし「耳が痛いな……」と感じる組織があれば、今すぐ改善に向けて動き出しましょう。商品分類をどう整理すべきかについては、こちらの記事で解説しています。ぜひ合わせてお読みください。
次に取り組むべきは、「仕入先の特徴の可視化と共有」です。可視化すべきポイントは、ショップのビジネスモデルが「自社オリジナル中心」か「他社バイイング(セレクト)中心」かによって異なります。
① 自社オリジナル中心のショップの場合
自社で商品を開発する場合、仕入先ごとに異なる「LT」「値入率」「ミニマムロット」を表にまとめ、チーム全体(生産管理や商品企画など)で共有できるようにしておくことが重要です。特にMDは「商品の販売期間」と「LT」のバランスを必ず把握してください。例えば、LTが3ヶ月で、販売期間を半年(6ヶ月)と想定している定番商品があるとします。
この場合、いきなり半年分の売上予測数量をすべて発注する必要はありません。初回の発注は「最低でも3.5ヶ月分の売上予測数量」に留めておけば、期中の売れ行きに応じて追加生産の判断ができ、在庫回転率の向上に繋がります。

ただし、仮に「5ヶ月分以上の数量をまとめて発注すれば、劇的に値入率が良くなる(原価が下がる)」といった条件があれば、あえて半年分を発注して勝負に出る、という判断もMDの役割です。だからこそ、生産管理や企画メンバーと円滑に意思決定を行うためにも、各仕入先の条件の可視化が不可欠なのです。
② 他社バイイング商品(セレクト)中心のショップの場合
他社ブランドの仕入が中心の場合は、「値入率」と「メーカーの展示会回数(年何回か)」を可視化しておくことが重要です。
・年2回など展示会回数が少ないブランド:
商品の発注はほぼ「一発勝負」になります。展示会の熱量に流されて予算を大幅にオーバーした発注をしないよう、事前のコントロールが必要です。また、こうしたブランドは一般的に値入率が低い傾向にあるため、その確認も怠れません。
・展示会の回数が多いメーカー:
1商品の販売期間は短いと捉え、どのタイミングで商品を投入し、入れ替えていくかの期前計画が重要になります。一方で、回数が多いメーカーは期中在庫を持っていたり、細かい条件交渉に応じてくれたりするケースが多いため、そうした特徴(強み)も可視化して共有しておくと実務がスムーズになります。
本記事の冒頭で、「小ロット化やQR対応といった外部環境の劇的な改善に、MDは過度に期待すべきではない」とお伝えしました。このような厳しい状況下でMD精度を引き上げ、売上と粗利を確実に拡大させるためには、事前の「MD予算」をいかに具体的に策定できるかが勝負の分かれ目となります。その際、ベースとなるのが先ほどお伝えした「過去データの精度向上」です。
信頼できる過去データをもとに検証と仮説を重ね、「次のシーズンに、お客様に喜んでいただくための品揃えはどうあるべきか」を徹底的に突き詰めます。そしてそれを、先に述べた「仕入先の特徴」なども加味しながら、具体的な売上・粗利・仕入・在庫の予算として数値に落とし込んでいくのです。こうして緻密に策定された具体的なMD予算は、期中に入ってから真価を発揮します。予算という強固な「物差し(目安)」があるからこそ、日々の売れ行きの変化に対して、迅速かつ的確なリスク対処(追加発注や値引きコントロールなど)が可能になります。
具体的なMD予算の策定方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
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今回の記事はこれにて終了です。この記事が、日々厳しい現場で奮闘されている皆様のお役に立てれば幸いです。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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