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アパレルECの運用支援をしていますと、
「何故、このようなページを作成したのだろう?」
という事態によく遭遇します。詳細なお話を聞いてみますと、
「◯◯(有名ブランド)がやっていたので真似しました」
という回答があったりします。売れているブランドが何をやっているのか?を調査して、似たような施策を実行すること自体は、特に悪いことだとは思いません。(もちろん丸パクリはダメですが。)
競合や先進的なブランドの事例を調査することは重要ですし、そこからヒントを得ることもたくさんあります。しかし、
「売れているブランドがやっているから、自社でもやった方がいい」
となると話は別です。何故なら、そこには、
「自社で実行した際にどうなるのか?」
という視点が抜け落ちているからです。ブランドが置かれている環境はそれぞれ違います。
ブランド認知度も違えば、顧客層も違う。商品の価格帯も違いますし、指名検索の多さ、SNSのフォロワー数、店舗数、リピーターの割合なども違います。そのような前提条件を無視して、表面的な施策だけ真似しても、同じ結果になるとは限りません。では、他社のEC施策を参考にする際、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
まず前提として知っておきたいことがあります。
売れているブランド=EC運用が上手いブランド、とは限りません。
当たり前の話なのですが、ブランドが売れる理由はECサイトだけではありません。商品そのものが魅力的なのかもしれませんし、ブランド自体に強い認知があるのかもしれません。店舗が強いケースもありますし、著名人の着用によって話題になっているケースもあるでしょう。インフルエンサーがSNSで商品を紹介し、それを見たユーザーがECサイトで購入するケースもあります。
この場合、ECサイトに売上は立ちますが、その売上を生み出した大きな要因は「EC運用が上手かったから」ではなく、SNS上での認知獲得やファン形成が上手かったからかもしれません。
もちろん、そこで獲得した顧客をリピーターへ育成したり、回遊や購買率を高めたりするにはEC運用のノウハウが必要になります。ただ、何度も書いていて恐縮ですが、ECサイトにおいてまず重要なのは、
「買いたいと思っているお客さまの機会損失をできるだけ減らすこと」
です。欲しい商品が見つからない。サイズ感がわからない。在庫があるのかわからない。送料がわからない。決済方法がわかりにくい。購入ボタンがどこにあるかわからない。
こうした理由で、本来買ってくれるはずだったお客さまが離脱してしまう。まずはこれを防ぐことが重要です。売れているブランドの場合、多少ECサイトが使いにくくても、ブランド自体の強さによってユーザーが頑張って買ってくれることは非常に多いのです。
ファッションブランドのECでは、意図的に情報を少なくしたり、商品を探しにくくしたりするケースがあります。一般的なECサイトであれば、
「カテゴリを細かく分ける」
「検索や絞り込みを充実させる」
「関連商品を表示する」
「商品情報を詳しく掲載する」
といった改善を行うでしょう。しかし、ブランドによってはあえてそれをやらない。商品一覧を眺めながら商品を発見してもらうことで、宝探しのような楽しさを演出したり、情報を限定することで希少性を感じさせたりすることがあります。これはブランド体験としては十分に理解できる施策です。ただし、成立するためには一つ重要な条件があります。
「それでも商品を探してくれるお客さまがいること」です。
強いブランドであれば、「新作が発売されたから見に行こう」「このブランドの商品が欲しい」という状態でECサイトに訪問してくれます。多少探しにくくても、ユーザー自身が頑張って商品を探してくれるでしょう。一方、まだブランドへの関心がそれほど高くないユーザーに同じことをすると、「何が売っているのかわからない」「探すのが面倒」で終わってしまう可能性があります。
つまり、
「買いにくいけれど、それがブランド体験になっている」
のか、
「単純に買いにくいだけ」
なのか。
ここにはやや違いがあります。
これもよくある話です。例えばラグジュアリーブランドのECサイトを見ると、トップページで大きな動画が再生されていたりします。高感度ブランドではバナーの文字数は最低限の英単語だけ。特集ページも商品情報を大量に掲載するのではなく、ルックを中心に構成されています。
当然、ブランドの世界観を表現するという意味では非常に重要です。しかし、それをそのまま真似する必要があるか?は別問題です。例えばトップページに重たい動画を設置した結果、表示速度が遅くなっている。雰囲気を重視するあまり、バナーを見ても何のコンテンツなのかわからない。ルックは格好良いけれど、着用商品の情報が少なく、商品ページへ移動しにくい。サイズ感やディテールがわからない。
このような状態になってしまうと、世界観を表現する代わりに購買体験を犠牲にしている可能性があります。もちろん、それ自体が間違いという訳ではありません。ブランドによっては「商品を効率よく販売すること」だけでなく、「ブランドイメージを形成すること」もECサイトの重要な役割だからです。重要なのは、
「何故、そのブランドはこのような見せ方をしているのか?」
まで考えることです。見た目だけ真似してはいけません。ブランド認知が高く、商品について説明しなくてもユーザーが理解してくれるから成立しているのかもしれない。店舗やSNSなど、別の場所で十分に商品情報を伝えられているのかもしれない。あるいは短期的なCVRよりもブランド価値を優先しているのかもしれません。表面だけを見て、
「有名ブランドはこうしているから、これが正解」
と判断するのは危険です。
では、他社事例は参考にならないのでしょうか?もちろんそんなことはありません。むしろ、筆者も普段から大量のECサイトを見ています。ただし、参考にする際には、
「何をやっているか?」だけではなく、「何故それが成立しているのか?」を見る必要があります。
例えば、
・どの程度ブランド認知があるのか/指名で訪問するユーザーが多いのか
・新規/リピーターの割合はどうか
・店舗がどの程度強いのか
・自社と商品の価格帯は近いのか
・自社と商品特性は似ているのか
・その施策によって何を改善したいのか
条件が違えば、同じ施策を実行しても結果は当然変わります。そして、もう一つ重要なのは、
外から見ただけでは、その施策が本当に成果を出しているのかわからない
ということです。格好良い特集ページを公開しているからといって、そのページ経由で商品が売れているとは限りません。実際に、そのようなルックページに広告で送客して、CVRがめちゃくちゃ下がったという事例もたくさんあります。便利そうな機能が実装されているからといって、ユーザーが使っているとも限りません。
有名ブランドのECサイトにも、当然ながら「やってみたけれど成果が出ていない施策」はあるでしょう。私たちが外から見られるのは、基本的には「実装されている」という事実だけです。
「実装されている=成果が出ている」ではありません。
ここは他社事例を見る際に、かなり重要なポイントだと思います。
そんな訳で他社事例を見る際に重要なのは、
「何をやっているか?」ではなく、「何故それが成立しているのか?」
まで考えることです。そして最後は、
「それを自社のお客さまに実行した場合、本当に便利なのか?本当に買いやすくなるのか?」
に戻って考えて頂ければ幸いです。
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