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ECサイトのリニューアル時にショップ名を変更するケースをよく見かけます。アパレルECの場合、自社にて複数ブランドを展開しているケースが多く、最初は1ブランドごとで運営していたECサイトを統合したい、もしくは新規ブランドを一緒のサイトで運営したい、などのご要望からこのようなお話になっていきます。しかしこの変更、安易に意思決定してしまうと結構な損失を招く事のなりかねません。筆者の周りでもこのショップ名変更により「検索流入が減少した」という声を聞く事もちらほらあります。
ブランド側からすると1つのサイトに統合する事で顧客を一元管理できますし、横断してお客様にお買い物もして頂ける可能性もあります。また、 作業効率も上がりますのでブランド側の視点だけで判断すると良い事が多いのですが、お客様側の利便性は上がるのかどうか?そのあたりについて筆者の見解をいくつか書いておきたいと思います。
冒頭でも書きましたが、やはりこれが一番発生しやすいですね。いくつか原因を挙げていきます。
当たり前のお話なのですが、新しいショップ名を付けたところでそれを認知しているお客様の数は非常に少ないでしょう。プレスリリースを出し、ファッションメディア等で拡散したところでそんなすぐショップ名を認知してもらえたらブランドビジネスは苦労しません。結局は過去から認知している「ブランド名」で検索するので、検索→トップページからの流入は減少するでしょう。ブランドを統合する場合、URLも変更されている事が多いので、ドメインパワーの問題もあります。「ブランドごとにページを作る」「旧URLからリダイレクトの設定」くらいは大体やっているのですが、それでも解決しづらいのが次の問題。
「ブランド名 アイテム名」は、各ブランドページの下層にディレクトリを作って対応するのが望ましいのですが、意外とこちらの抜けが多いです。特に旧URLで検索が取れていたアイテムカテゴリーごとの商品一覧ページは、新しいURLでどのページにあたるのか?を前もって確認しておき、リダイレクトの設定は必須です。アイテムカテゴリーも大分類だけでなく、中分類もしっかり設定しておきましょう。そのあたりをしっかりやっても、新しいURLが競合に負けることはよくあります。特にZOZOはアイテムカテゴリーの商品一覧はしっかり対策されてあるので、筆者の経験上では高確率で負けていますね。
また、カテゴリーごとのページをクエリパラメーターで絞り込むだけで対応しているケースも見かけますが、これだと表示されたページのタイトルとディスクリプションの整備ができませんので検索対策が不可です。結果として、「ブランド名 アイテム名」で競合他社に負けるケースが以前より増えてしまい、検索流入減少から売上に影響が出てきます。
対策に関しては先述した通り、「リダイレクトをしっかり設定しておく」「タイトル・ディクスクリプションをしっかり整備する」ということが一番求められますが、それでも予想外の事態が発生する事もあります。特定の検索クエリで、全く想定していなかったページがヒットする事もありますので、リニューアル後に日々データを細かく確認し、どれが取れていてどれが落ちているのか?をしっかり確認しておきましょう。面倒なのは、ブランド数が増えれば増えるほど、そのブランドのアイテムカテゴリーの整備が必要になる事でしょうか。そもそも、そのカテゴリーのページ自体が用意されていない場合、他社モールに流入を全て取られてしまいます。また、どうしてもクリック率が戻らないようでしたら、リスティング・ショッピング広告等で対策するのも良いでしょう。流入が増加し、そこからユーザーの滞在時間やページセッションが増加すれば、サイトの評価が上がる可能性もあります。そこから徐々に当該クエリで順位を伸ばしていけるかもしれません。
ショップ名・URLの変更や、リニューアル後によくあるケースについていくつか書いてみましたが、このようなお話をしますと「統合自体やめた方がいいのか?」と聞かれることもございます。それに関しては自社の方針による、としか言えません。サザビーリーグのように自社ECモールを完全にやめて、ブランド単体のECをそれぞれ運営していく企業もあれば、ブランド単体の自社ECとは別に自社ECモールを運用するマッシュスタイルラボのようなケースもあります。大概の大手アパレルは1つのサイトに統合する自社ECモールとしての運用ですが、方針によって変わりますし、ブランド属性によって向いている・向いていないがあるかと思います。また、統合した場合は検索だけでなく、CRMもやや複雑にはなりますね。多くの顧客は「ブランド」のファンであり、自分の購入していないブランドの情報を欲していないことも多いでしょう。どの顧客がどのブランドのファンなのか?買い周りはどの程度あるのか?も簡単にセグメントできるようにしておかないと離脱を招きやすくなります。話がショップ名変更からやや逸れてしまいましたが、メリット・デメリットを最初にわかった上で決断するようお気をつけください。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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