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最近、MDの仕事に関わっていて気になる点といえば、サイズ展開を簡単に増やそうとするケースです。
基本的には、ショップ・ブランドコンセプトから見える顧客像を基に、展開サイズを設定すべきだと思いますが、これまで、ショップやECからのお客様の声に応える形で、いつの間にかサイズ展開が拡がり、在庫が急増してしまった等のことに遭遇しました。勿論、サイズ展開を増やすメリットもあります。サイズ展開を増やすことで売り逃しが減り、売上の拡大が見込める可能性が高まります。逆にデメリットは、サイズ展開を増やすことで、同時に売上以上に在庫が増えやすい。更に言えば、売れ筋のサイズが切れると、売れ筋商品でもデッドストックへと変貌しやすくなります。
そこで、今回は架空のショップを例にサイズ展開について考えたいと存じます。
【ある架空のレディースショップ】
・20~40歳代のOLをターゲットにしたショップ
・年間売上15億円
・商品の1点単価 12,000円
・店舗数 12店舗(今回はECなし)
・標準店舗の商品展開数300 (今回は1SKUにつき1点商品展開と設定)
・商品の標準販売期間設定45日
・1アイテム辺りの平均カラー展開数2
・平均サイズ展開数6
と設定します。顧客ターゲットから考えるとサイズ展開が多めのショップとなります。
先ずは、この商品の年間の商品投入SKU数を計算しますと。
→300(店舗の標準展開SKU数)×(365日÷45日(商品の販売期間))=約2433SKU
となります。
更に、年間の商品投入アイテム数を算出すると。
→2433SKU÷(2カラー×6サイズ)=約203
となり、この組織の年間商品アイテム数は203となります。
次に、この組織の1年間の売上点数を算出しますと。
→15億円(年間売上)÷12,000円(1点単価)=12万5000点(1年間の売上数)
となります。
すると、この組織の商品1アイテム辺りの平均数量は?
→12万5000点÷203=約616点
となります。
上記の組織は、12店舗を展開していますから。
→616点÷12店舗=約51点
1店舗あたり、商品1アイテムにつき51点の数量が、必要だということが理解出来ます。更に言えば、この組織は商品1アイテムにつき、2カラー・6サイズ展開が平均ですから、商品1アイテムあたりのSKU数は12となります。すると、1SKUあたり、どのくらいの数量が店舗にいきわたるのか?と言いますと。
→51÷12=約4.3
となり、一見何の問題もないように思えます。
しかしながら、これはあくまで平均です。商品の発注は売れるものと実験的なものとに、発注数量に差をつけることが当然のこととなりますから、例えば、実験的な商品の発注数量を、平均の1/3にすると。
→4.3×33.3%(1/3)=約1.4
となり、仮に6サイズ展開に拘ると、SKUごとの数量が薄く広くになります。そうなりますと、売れる真ん中のサイズがすぐになくなり、売りにくい端々のサイズが残る。結果、どんなに安くしても売れ残る(アウトレットの店舗を見るとこのことがよくわかる)。更に言えば、徐々にデッドストックが増え在庫が増加します。結果、売れ筋のサイズが切れるのが早いわけですから、売上も低下していきます。また、売れる商品でもカラーによって売れ方が全く違ってきますから、売れ筋のカラーが切れるのが早く、売れ筋以外のカラーのみ店頭に在庫が残ると、その商品もデッドストックへと変貌する可能性が高くなります。
安易にサイズ展開を拡げることで、在庫を増加させない為には?上記のように、1SKU辺りの必要数量の算出等のシミュレーションを、事前に行っておく。実験的な商品や売れ筋ではないカラーは、サイズ展開を減らす。それでも、サイズ展開を拡げることに拘るのであれば、販売期間の設定を伸ばす等のことで、年間の投入商品アイテム数を削減する等ことが求められます。
今回の記事が、何かしらのお役に立つことが出来れば幸いです。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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