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先日、弊社サイト(有料記事)にて深地さんの決算記事が公開されました。
先ほどご紹介した深地さんの決算記事では、取り上げた上場アパレル企業の売上のみならず、粗利率や在庫状況についても言及されていました。この領域は私の専門分野でもあるため、自ら執筆したい気持ちもありますが(スミマセンm(__)m)、今回は深地さんの記事を引用させていただく形で、マーチャンダイザーの視点から決算資料を読む際のポイントを簡潔にお伝えできればと思います。(以下、私の過去の決算記事をご覧くださいm(__)m)
先に取り上げた深地さんの決算記事において、バロックジャパンリミテッドについて触れた箇所に以下の記述がありました。
粗利率がやけに高いところを見るとセール抑制したのでしょうか。それが要因で売上が伸びず販管費率が高騰しての赤字でしょうかね…。でも在庫も減っているのでそもそも仕入れ自体を抑制している可能性があります。
読者の皆様には、ぜひ「粗利率の変化」から以下の背景を読み取ってほしいと思います。
・(過去に比べ)粗利率が高い→セールを抑制している可能性が高い
・(過去に比べ)粗利率が低い→セールを促進している可能性が高い
この2点を念頭に置くだけで、決算の捉え方がぐっと変わります。さらに、アパレル小売の実務に携わっている方ならイメージしやすいかと思いますが、ここに「在庫」の視点を加えてみてください。「セールを抑制すれば在庫が残るリスクが上がり、セールを促進すれば在庫は減る」という相関関係です。
これらを踏まえると、一つの仮説が浮かび上がります。 例えば、メディアで「売上・粗利率ともに向上し、増益を達成」とポジティブに報じられている企業があったとします。その際、MDの視点を持つ私たちは、「(セールを抑制した結果)実は在庫が大幅に積み上がっているのではないか?」という懸念も同時に持つ必要があるのです。上場企業の在庫状況は、決算資料の「貸借対照表(B/S)」にあるから確認できます。ここには決算期末時点での在庫残高が記載されています。期首在庫と期末在庫を突き合わせれば、その期間の在庫の増分が一目でわかります。仮に在庫が大幅に膨らんでいた場合、それは「危険な兆候」と捉えるべきです。なぜなら、在庫が増えた分だけ、企業のキャッシュ(現金)が減少していることを意味するからです。
今回、深地さんの記事で言及されたバロックジャパンリミテッドのケースを見てみましょう。「粗利率は向上したが在庫は減少した」という事実からは、商品の仕入れをかなり抑制している可能性が読み取れます。しかし、トレンドサイクルが極めて早いレディースアパレルにおいて、仕入れの抑制は売上の機会損失を招きかねません。結果として、粗利率の向上や在庫削減には成功しても、肝心の売上規模が縮小し、業績全体が低下するという悪循環に陥るリスクがあります。このような数字の推移を見せる企業は、商品力そのものを見直すなど、本質的なMD改善が求められる局面にあると言えるでしょう。
次に、積極的な出店攻勢によって店舗数と在庫が大幅に増えた場合、それに見合う利益を出すには、一体どの程度の売上が必要になるのかを考えてみましょう。先に取り上げた深地さんの決算記事において、ユナイテッドアローズについて触れた箇所に以下の記述がありました。
第二Qはセール売上増加により粗利が削られたと報告がありますが、出店過多→在庫消化が悪化→セール強化で粗利が削られたという流れでしょうか。
出店により店舗数が増えると、在庫の積み増しだけでなく、出店費用や人件費などの影響で販管費も増大する傾向にあります。そもそも事業部のMD予算は、損益計算書(P/L)の予算に基づいて策定されるものです。そのため、以前と同水準の営業利益率を確保しようとするならば、出店コストをカバーできるだけの売上・粗利益高の予算も当然引き上げられることになります。
具体的な例を挙げて考えてみましょう。前年よりも大幅に出店し、規模を拡大した組織の数値が以下の通りだとします。
当期実績:売上10億円、粗利率55%、販管費率50%、営業利益率5%(在庫回転率:4回転)
来期目標:売上25億円、粗利率58%、販管費率53%、営業利益率5%
この計画を見ると、売上を2.5倍に伸ばしながら、増大する販管費率をカバーするために粗利率も3ポイント引き上げるという、非常に高い目標が設定されていることがわかります。では、この計画をMDの立場で読み解くために、あえて「在庫回転率」という切り口から物事を考えてみることにします。
先ほど触れたように、出店が増える際に注意すべきは在庫の増加です。もし出店が増えたことで在庫回転率が低下してしまえば、その組織は「売上の伸び以上に在庫が増えている」という危険な状態にあると言えます。
今回の例で言えば、当期の在庫回転率は「4」でした。来期に店舗数が増えたとしても、効率を落とさないためには、最低限この「4」という数字は維持したいところです。この視点で、まずは当期の実績を紐解いてみましょう。 売上10億円、粗利率55%、在庫回転率が4の場合、期間中の平均在庫高は1億1,250万円と算出されます。次に、来期の目標についても同様に計算します。 売上25億円、粗利率58%の計画で、在庫回転率4を維持すると仮定した場合、必要となる平均在庫高は2億6,250万円です。
したがって、この組織においては、売上拡大に伴って約1億5,000万円ほど在庫が増えたとしても、回転率さえ維持できていれば許容範囲内であるということがわかります。先に述べたように、在庫高は「貸借対照表(B/S)」、売上や原価は「損益計算書(P/L)」に記載されています。これらの公開データから在庫回転率を算出し、前期と今期を比較することで、積極的な出店が「健全な成長」なのか、それとも「在庫過剰」に陥っているのかを客観的に判断することが可能となります(今回は平均在庫算出の話は端折ります。私の過去記事に在庫回転率の記事が多数ありますので、そちらをご覧くださいませ)。
今回の内容が少しでもお役に立てば嬉しいです。 この記事をきっかけに、アパレル小売の現場で働く皆様が、決算書という「数字の裏側にある物語」に興味を持っていただけることを願っています。次回もよろしくお願い致します。
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