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何故アパレルECでは値引き販売が多いのか?

本日は以前、EC支援を完全に外注している企業(A社とします。)にお勤めの方から頂いたご相談を一つご紹介したいと思います。

A社では契約がレベニューシェア(売上に対する手数料での支払い)であった為、運用はほぼ丸投げ状態。主な販売施策はWEB広告と値引き施策に偏重との事でした。こちらの方は値引き施策に対して懐疑的であった為、ご相談があったのですが「何故、EC運用は値引き施策に偏重するのか?」といったご質問でした。

アパレルECの現場にいらっしゃる方ならよくご存知かと思いますが、このような状況は特に珍しい事ではありません。特に低価格商材ならクーポン・セールを見かけない日はありませんし、そうでなくともプロパー期間中にクーポン配信連発。最近ではPRE ORDER予約販売で10%OFFも当たり前になっています。(プロパー消化率とか言うてる意味あるんか…。)

月末には毎月MAX80%OFFのタイムセールを実施している大手アパレルもありますし、何でしたらセール期間中にまでタイムセールやクーポンを被せるショップもあります。(フリーク◯ストアの悪口はそこまでだ)ECモールは言わずもがなですね。

では何故、このような運用になりやすいのか?について、筆者の考えを書いておきたいと思います。

■仮説①:分析の数字だけで判断するならそれが正解になるから

EC支援会社や担当者なら、日々の数字を分析する際にGA4や広告のレポートを使って状況を確認するのは日課でしょう。

例えば、WEB広告を打った際の効果を高める場合、セールを連発していたとしたらどうでしょうか?当然ながらこれはCVRが上がりやすくなります。そして、残念な事にこれらのレポート画面には「粗利」「粗利率」なんて数字が出てくる事はありません。つまり、GA4等のレポート画面だけで判断するのであれば、値引き施策が正しい施策立案になってしまうのです。

(Googleマーチャンダイズストア:Paid Search・Cross networkなどが広告経由の効果になります。)

一方、着用シーンの提案や着回しコンテンツ等を頑張って作り込んだとして、その手間・かかるコスト・売上インパクトを天秤にかけた際、値引き施策に勝てるのか?と言われると、売上だけなら勝てない事の方が多いでしょう。

そんな訳で粗利・営業利益を無視するとこれが正解になってしまいますし、アパレル・ファッションに詳しくなくても対応できる内容なので採用されやすいのではないかと。

■仮説②:売上に対しての手数料ならそれが一番儲かるから

事業者がいくら利益を削ろうが、売上に対して手数料が報酬の支援会社の場合、売上を伸ばすのが正解になります。実際には利益の事を何も考えていない、なんて事は無いでしょうし、事業者の言い分を無視して値引き施策だけを連発する事はできないとは思いますが、そうなりやすい環境である事は間違いありません。

そしてWEB広告は別途での支払いでその運用費も発生しますから、値引き施策×WEB広告の組み合わせはめちゃくちゃ利益が削られやすいのです。他社ECモールもこの構造なので、同様に値引き施策に偏重しているのが良い証拠でしょう。(在庫リスク・値引きの負担・広告費の負担は全て事業者側)契約を簡単に切れないよう、ドメインの権利から決済代行から全て握っているえげつないやり方している会社もありますのでご注意を。

こうなると事業者側のメリットは何なのか?という状況ではありますが、自社ECの場合は顧客名簿が獲得できるのでそれだけが救いでしょうか。

◯PLを確認しよう

このような運用をしていると、自社ECがどのような状況に陥りやすいか?はおわかりでしょう。

これらを簡単に確認する術が、EC単体でのPL(損益計算書)の作成です。言葉にすると作っていて当たり前、と思われがちですが意外とやっていない企業が多いです。また、仮説①でも書きましたが、WEB広告の効果は値引き施策と相性が良いので、広告の費用対効果もPLで確認しておいた方が良いでしょう。ROASやCPAだけでなく、粗利率も合わせて見ておかないと、効果が良いからといって広告出稿が嵩みやすいです。(粗利率の低下と共に広告の費用対効果が上がるケースはあるあるです。)

また、レベニューシェアなら手数料が嵩むので営業利益が削られている可能性も非常に高いでしょう。無駄に高いサービスを導入して利益を圧迫していないか?も注意が必要です。(とはいえ、内製だからといって全てが解決する訳でもないのですが。)

値引き施策を散々悪のように書いておいて何ですが、在庫消化が進まなかった為に粗利を削ってでも優先的に値引きをするケースもあるでしょう。マサ佐藤氏もブログにいつも書いていますが、粗利目標が設定されているなら特に問題のないお話なのですが、筆者が過去見てきたケースは赤字垂れ流し状態も多々ありました。

ECは利益率が高いチャネルとして認識されているかと思いますが、このあたりが嵩んでいるとEC単体で普通に赤字のケースも出てくるのです。筆者は中小規模のアパレル企業出身ですが、管理職クラスでないと損益計算書を見る機会がなかったので、役職によってはこのあたりが無視されたままプロジェクトが進行してしまう事もあるでしょう。

このあたりを重点的に学びたい方は、ぜひ10月18日から開催される「Fashion Reducation MD講義~基礎理解編~」にお申し込みください。ご興味のある方は、以下のリンクから詳細をご確認いただけます。

〇MD講義~基礎理解編~

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