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ショップの店頭に春物が並び始める2月。それと同時に、マーチャンダイザーの仕事はすでに次を見据えています。展示会が相次いで開催され、2026年AWシーズンに向けた準備が動き出す慌ただしい季節です。本来であれば、この時期には2026年AWのMD予算が完成していなければなりませんが、実際にはまだ策定の前段階という組織も多いことでしょう。そこで、MDが予算(売上・粗利・仕入・在庫)を策定する前に、ぜひ徹底してほしいことがあります。それは、2025年AWシーズンの「具体的な検証」です。
特に今回おすすめしたいのは、個別の商品に対して「売れた・売れなかった」を判断する手法ではありません。そうではなく、シーズン全体の各カテゴリーにおける「(月別の)売上・粗利・仕入・在庫」の数字の推移を俯瞰して検証する方法です。私が常々申し上げているように、期中のMD運用を「OTB表(売上・粗利・仕入・在庫管理表)」で行っていれば、この検証は容易に可能です。たとえそうした運用が未導入の組織であっても、自社システム等からカテゴリー別の実績数字を抽出することはできるはずです。次シーズンの精度を高めるためにも、ぜひこの手法にチャレンジしていただければと思います。

この検証を行う上で、意識するポイントは以下の通りです。
〇売上と在庫の「ピーク」のズレを確認する
〇カテゴリー別の「売上・粗利予算達成率」をみる
〇粗利率の推移と値下げのタイミングをリンクさせる
また、期中の消化率(売上原価÷仕入原価)を算出し、数字が振るわない場合の要因を分析することも有効ですが、まずは、先ほど挙げた各項目に沿って話を進めさせていただきます。
・売上のピークに対して、在庫の入荷ピークが早すぎなかったか、あるいは遅すぎて機会損失を生んでいなかったかを月別推移で確認します。
ブランドコンセプトやリードタイム(以下LT)によって「理想的なピーク」の定義は異なりますが、特に機会損失を検証する際、「当月末在庫 < 翌月の売上原価」となっている箇所は、(売れる商品の)在庫が不足していた可能性が高いと言えます。その場合、要因が「納期遅延」によるものか、あるいは「予測を上回る需要」によるものかを詳細に分析し、次シーズンのMD精度の向上に繋げることが重要です。

→売上・粗利予算を高くとったカテゴリーが売上予算達成できなかった要因を特定し、次に繋げていく。
アパレルMDの現場では、発注から入荷までのLTが長く、半年先の需要を予測してカテゴリー別のMD予算を策定せざるを得ません。仮に期待値の高いカテゴリーが予算を大きく下回った場合、その要因が「気温などの外部環境」にあるのか、それとも「昨年踏襲商品」が期待通りに売れなかったことにあるのか、あるいは「トレンド予測の誤り」にあるのかを切り分けて検証する必要があります。もし予測に齟齬があったのであれば、当時の判断プロセス(MD予算策定時の会議や商品の発注検討会等)のどこに問題があったのかを詳細に分析し、次シーズンのMD精度向上へと繋げることが極めて重要です。
→どの時期に粗利が削れたのかを特定し、それが計画的な値下げだったのか、在庫過多による場当たり的な処分だったのかを明確にします。
MDにおいて値下げ(マークダウン)は避けて通れない施策ですが、過度な依存は利益を損なうだけでなく、ブランドやショップの付加価値低下を招きます。一方で、値下げの判断が遅れると消化スピードが上がらず、最終的に大幅な値下げを強いられ、粗利益と在庫の両面で損失を出し兼ねません。月別の粗利率推移を検証し、値下げのタイミングが適切だったかを精査することは、MD精度の向上のみならず、店頭やECにおける販売戦略・施策の改善にも直結するため、非常に重要な工程となります。
最後に、残在庫の質を丁寧に確認します。具体的には、次シーズンも(プロパーで)販売可能な「継続品」か、処分が必要な「賞味期限切れ商品」かを明確に区分します。これらキャリー品の資産価値が次期の仕入枠をどれだけ圧迫するのか、その影響額を事前に把握しておくことが、健全な予算管理の第一歩となります。
本記事の冒頭で述べたように、シーズンの振り返りにおいて商品単体の良し悪しに目を奪われると、構造的な課題を見落としがちです。重要なのは「なぜその結果になったのか」というメカニズムを、数字の推移から客観的に解明することにあります。今回挙げた「売上・在庫・粗利・残在庫」の4つの視点で過去を直視することは、単なる反省ではなく、次シーズンを確実に成功させるための「戦略」となります。2026年AWシーズンの予算策定という重要な局面を前に、まずは昨日の数字を、未来の利益へと変えるための「具体的な検証」から始めてみてください。その一歩が、ブランドやショップの健全な成長と、MDとしての真の精度向上に繋がるはずです。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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