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ECとMDが密接に関わってくるポイントの一つに「消化率」があります。特にプロパーで販売できる確率がECは非常に低く、余った在庫を処分する為にセールにかけたり、大手であればアウトレット店舗に放り込んだりと、最終的には利益を削りながら在庫を処分しているケースが多く見られます。
これに関しては筆者も様々なところで口すっぱく言い続けてきていますが、何故こういった事が起こってしまうのでしょうか。今回は改めてその中身についてしっかり振り返ってみたいと思います。
まず一つ目はオーダー手法が原因説。ECで売上を最大化したければとにかく型数を求められます。ECモールで検索をかけた際に、ブランドのSKU数を担保しなければ商品が上位表示されないのですが、そういったアルゴリズムにする事でブランド側から在庫量を引っ張りだそうとしているのです。これが原因でブランド側もECのオーダーをかける際になるべく型数を多く取らざるを得なくなっています。自社ECはまだモールより消化率は高い傾向にあるのですが、それでも型数が多ければその分、キーワード検索で引っかかる確率は上がります。Webの特性上、型数が多い方が有利なのはわかるのですが、これが在庫の温床になっているのです。モール側は在庫リスクがありませんから、ブランドがいくら在庫を余らそうと知った事ではありませんし、流通総額に対するテイクレートで自分たちの売上が決まってくる訳ですから、当然この流れを止める気は無いでしょう。
上記のようにオーダー手法によって余りやすくなっている在庫を捌こうと思うと、当然値引き施策中心になります。これが原因でプロパー、つまり定価販売の割合が減ってしまうのです。また、モールに出店しているブランドからすると、膨大な数のブランドの中で顧客に見つけてもらわないといけない。そして露出する為に必要になるのが「クーポン」「タイムセール」そしてモール内の「広告」になります。モールは売上が作りやすい反面、在庫が余りやすい上に値引き施策で利益が削られてしまうので運用は注意が必要です。
じゃあモールを辞めて自社ECと実店舗中心に運用し、MDを緻密に設計して型数も極力絞ればいいのでは?という事なんですが、それが上手くいかない理由がこれです。かかる手間に比べて最終利益が割りに合わない場合はMDの見直しが必要なのですが、PLを気にせず「売上」を追う事ばかりに目がいってしまう人は少なくありません。特にオンライン専業でやっている会社さんなんかはMDに無頓着ですから、
「ブランドコンセプトから紐解いた商品企画やオーダー、アイテム構成比」
なんていう考え方が無い場合が多い。そうなるとオーダーに全くロジックがありませんから、前回お話しした「商品展開計画」や「販促計画」と連動したMDの設計が無く、場当たり的に商品が入荷し、ECにアップ。結果、消化率が上がらず最終的にセールで捌くしかなくなってくるのです。佐藤マサさんもよく言っている「粗利」の大切さはEC担当者も同様ですね。
ECが全く新しい魔法の杖のように報道されがちですが、上記を見てもらったらわかる通り、小売の一チャネルでしかありません。こんな時期ですからこれからEC強化に乗り出す企業さんも多くいらっしゃるでしょうけど、ECに過度な期待をして在庫過多から手間の割りに利益が削られるような事態を避ける為にも、健全なMD設計を心がけるようにしてほしいですね。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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