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PB担当者から
20AWの商品届いたので、写真送ります。
コーデ組んでください。それをもとにWEB用の写真撮ります。
と連絡があり「?」しか出なかった今日のお昼。
普通はコーデ組んでからオーダーするものではないの?
普通を知らないけど、それこそ非効率すぎません?— なつみ (@kamosiyasan) August 10, 2020
先日、上記のようなツイートを拝見したのですが、文面で見ると本当不思議な事態なのにこういう事ってよくあるんです。
コーディネートも組まずに先に商品を発注して、届いた物で無理やりコーデを組む…。
確かに非常におかしな話ですよね。アパレルには各シーズンにテーマが設けられていて、そのテーマに沿ってコーデが決まる。各月の強化品番や販促計画に沿ってどのアイテムのオーダー点数を増やすかを検討する。などの設計が所謂MDに該当します。それをすっ飛ばして先にオーダー?意味がわからない…。とお思いの方、それはあなたがちゃんとした小売の会社出身だからではないでしょうか?
筆者が新卒で入社した日系インポート商社はまさにMD設計が無い典型でした。インポーターの根本は卸の会社ですから小売のノウハウがありません。本国からやってきたシーズンテーマとルックブックを元に、各ショップの店長がそれぞれ与えられた予算の中から好きに発注をかける、「ショップオーダー」と言われる手法ですね。それに対してMDが展開計画を元に発注をかけ、各店に振り分けるのが「セントラルバイイング」。ショップオーダーを採用すると、MD設計は各店の店長に委ねられます。欠点は店舗によって品揃えにばらつきが出るからサービスレベルに差が出てしまう事、店長の力量に売上が左右されてしまう事でしょうか。顧客の顔が見えている人がオーダーするから、そういった点では取りこぼしはなくなるのですが、業務が属人的になり過ぎるのでよろしくないでしょう。
こういったケースは比較的まだマシな方で、酷い場合は上記ツイートのようにとにかく発注が先に済まされ、店頭にどんどん商品が届くケースですね。恐らく前年実績から各アイテムの発注金額を決め、事前に商品の中身も見せずに店頭に配送。それを店頭販売員さんが無理やりコーデを組んで展開する。OEM・ODM出身のアパレルがよくやってしまうやり方です。以前、このような流れで業務が進んでいる企業さんとお仕事をした事があるのですが、計画を作って欲しいと進言しても、社内の女性社員に付け焼き刃でコーディネートを組ませる程度しか対策が取れずでした。小売のノウハウが無いとこのような弊害が起こるのですが、これがそんなに珍しくも無いから恐ろしいですね。
店頭とWeb、チャネルは違えどECも小売である事に変わりはありません。つまり、MD設計が無い状態でECをスタートするという事がどれだけズレたお話かがわかるかと思います。上記のお話をECに置き換えるなら、コーデも販促も何も無い状態で商品を単品でどんどん発注。それがEC担当者の元に届き、そのままささげ業務に。付け焼き刃でコーディネートを組んで、販売員の着用画像をアップ。同時にそのコーデで特集記事を公開。と、こんな感じでしょうか。恐らく、こういった運用方法を取られている企業さんもいらっしゃる事でしょう。ECの場合、型数を増やして在庫さえ積めば売上だけは獲得できるかもしれませんが在庫過多に陥ります。結局、MDを無視してアパレルの小売は成り立たないのです。
筆者の古巣では外部からMD経験者を採用し、計画自体は作成されました。ちゃんとしたMD設計を初めて見た瞬間、目から鱗がボロボロでしたが喜びも束の間、その企業には「営業」以外の業務が元々無く、MDとして採用された方も普段は営業活動をしなければなりませんでした。結果、業務が他の方の二倍以上になり、早期に退職。外部から技術がある人を連れてきても、組織自体がそれに合わせて再構築されなければ変わらないのです。「MDが最重要」と再三に渡ってお話していますが、組織のトップがその重要性を理解し、形ごと変えていかなければECというプロジェクトの成功確率は上がっていかない事を理解して頂きたく思います。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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