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消化仕入れで売り場の鮮度は保たれません

先日、とある百貨店の社長のインタビューにて「消化仕入れの利点は店頭の鮮度が保たれること」という旨が記載されていました。

ロジックとしては、

・店頭に多くの商品が並ぶ

・商品がよく売れる

・在庫が回る

から、という事なのですが、多くの商品が並べば商品がよく売れる、というロジックがまず成り立ちません。消化仕入れが要因で、店頭の消化スピードが上がり、在庫回転が促進されるのであれば、百貨店は軒並み業績好調のはずです。過去、消化スピードを押し上げていた要因は、百貨店が流通の中心であり集客が担保されていた事や、市場の選択肢が限られていたから、などの点でしょう。しかし、昨今のアパレルブランドがプロパー販売できる割合は店頭で5割あるか無いかと言われており、都度セールしながら消化スピードを促進するケースが多々見られます。仮に、そのあたりの事情を知らないで消化仕入れを肯定していると非常に危険ではないかと。

消化仕入れはECにも悪影響

これは筆者が常々発信している事なのですが、消化仕入れはECこそデメリットが大きいです。百貨店のECが一向に強化されないのはこれが最大の原因でしょう。

先述しました通り百貨店の消化仕入れが成り立っていたのは、百貨店の集客力があったからです。集客があれば、出店する事でより多くの人に知ってもらえる、商品を見てもらい購入してもらえるチャンスが増えます。先に集客があるから、ブランド側は在庫リスクを自社で抱えても出店しようと思えるのです。ではこれをECに置き換えてみたらどうでしょうか?

百貨店のECサイトは、全くトラフィックが無いとは言いませんが、多くのユーザーが服を買う為に来訪しているか?と言われると、現時点では限定的だと言わざるを得ません。代わりに集客力が担保され、出店する事で売り上げがたつのはECモールでしょう。だからこそ、ブランド側はZOZOやAmazonに出店する際は全て委託販売なのです。プラットフォームに顧客が付いており、集客が担保されて初めて消化や委託は成り立ちます。逆に、集客力の無いプラットフォームに消化や委託で商品を放り込んだ場合、ブランド側としては単なる機会損失です。自社ECと同じCSVでアップして、在庫は全て自社の倉庫から出荷出来るなどの対応が可能ならまだやりようはあるでしょうけど、百貨店として売り上げを立てるのであれば在庫は一度、百貨店に(消化or委託でも)納品という形を取らなければなりません。

AmazonZOZOも初期は買取りで販売してましたし(Amazonは現在も買取枠がありますが)、力が十分でない段階は自社で在庫がコントロール出来る範囲からやるしかありません。百貨店だと、自主編集売り場と呼ばれるショップで一部買取りの商材もあるでしょうから、そのショップを冠にしたECを展開して、そこから広げていくべきでしょう。(と数年前から皆さんよくおわかりでしょうけど、全く動く気配無し。)今のままだと、ECでは消化仕入れで鮮度が保たれるどころか、そもそも十分な在庫量すら担保出来ないハリボテの状況が続きます。一刻も早く対策を取られる事を勝手にお勧めしておきます。ECはおろか、店頭の集客すら担保出来なくなってくると、ブランドへの交渉力がどんどん弱くなり、利益をあげる事も難しくなってくるかもしれません。地方百貨店が弱体化していき、空いたスペースにオフプライスストアが出店するくらいには、出店者を選べない立場になってきているのですから。

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