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私が販売員時代・MD時代を通じた経験の中で。。。
ということがありました。このことは、特にアウトレットの店頭に立つと顕著に感じることです。しかしながら、このような事実があったとしても、現場からの
”もっと大きいサイズがあれば売れた!”
と言う声を単純に鵜呑みにし、サイズ展開を拡げると、結果的に端々のサイズだけでなく、全体の在庫金額が膨れ上がり、ドツボにはまる_| ̄|○このような経験をしたMDは多くいるのではないでしょうか?そして、そのミスの責任を取るべきなのは、現場ではなくMDです。
(上記のようなことが起こった場合に、MDや責任者が、その責任の所在を現場に押しつけている場面を、これまで多く見てきた)
そんな昔ばなしを思い出しているときに、下記のような記事を見つけました。
う~ん。久しぶりにタイトルからして胡散臭さ満載です(笑)。そして、この記事の中で下記のようなことが書かれています。
”プライベートブランド『ZOZO』を立ち上げた当初は、老若男女問わず親しめるベーシックな商材を顧客それぞれの体型に合わせて作成し、世界中の誰もがおしゃれを楽しめるところを目指していました。
こうした取り組みを行う中で、『自分に合ったサイズの服を着たい』という顧客からのニーズの高さに気づいたのです。”
更に、記事の中で以下のように書かれています。
”ZOZOSUITで得た体型データやプライベートブランド「ZOZO」の運営経験を活かした新施策は、顧客が入力した身長と体重のデータを基に、約20~50のサイズ展開の中から自分に合ったサイズの衣類をサジェストし、顧客が自分に合ったサイズの衣類を購入できるもの。サービスを開始した2019年秋冬シーズンにはおよそ100品番の取り扱いからスタートし、1年経った2020年の秋冬シーズンには昨年の約2.5倍の品番数での展開を予定している。”
とあり、取り扱い商品を拡げているようです。
因みに当初発表されたマルチサイズ参加企業は下記の通りです。
“株式会社アーバンリサーチ、株式会社ストライプインターナショナル、株式会社デイトナ・インターナショナル、株式会社パル、株式会社ビームス、株式会社ベイクルーズ、MARK STYLER株式会社、リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社”
現在は、他の企業も参加しているようですが、この参加企業の特徴は、ZOZOの躍進を支えてきたセレクト業態の組織が多いのに目が行くと思います。あとは、若年層のレディースが強い組織でしょうか?
ここで、話を少し変え、在庫回転率が悪く、在庫過多になりやすいアパレル小売りの特徴は?
・商品そのものがお話にならず、売れない。
・メンズが強い。特にビジネス関連の品揃えがある。
・販売期間が長い(継続的に売ることのできる商品が多い→ベーシック商品)
・サイズ展開が多い
・リードタイムが長い
他にもありますが、このようなことが考えられます。以前、私がこのブログ内で、ユナイテッドアローズの在庫回転率の悪さを記事にしましたが、アローズで上記の特徴を考えると、多くの項目が当てはまります。
このことからも、現状の大手セレクト業態は、総じて在庫回転が悪く、在庫過多なのでは?と推測することが出来ます。
そのような状況であるにも関わらず、今回ZOZOのマルチサイズに参加した企業は、ただでさえ在庫コントロールの難しいマルチサイズ展開に賛同し企画に参加していることが、私にはまるで理解できません。現状は、大した品番数を作成しておらず、実験的に行っているのかもしれませんが、私が責任者ならば実験さえさせないでしょう(笑)大手セレクト業態には、もっと先に手をつけるべき、課題があるはずです。
また、このインタビューの文言を再度確認しますと。。。
とZOZOスーツ立ち上げの経緯を上記のように語っています。要は、売場の制限のないEC空間でデジタル技術を使いユニクロに対抗しようとしたのでしょう。そのような中で、ジャストサイズに対するニーズを感じたようですが、このことから考えると、ベーシック商品の品揃えが多少なりともある、セレクト業態が参加したくなるのは、少しだけ理解は出来ます。ですが、ZOZO側が言う“老若男女問わず多くの人にファッションを楽しんでもらう!”ということを、ショップコンセプトに掲げているセレクト業態が、どこにあるのか?ということから考えると、この企画の主旨にまるであっていないのでは?と感じるのは、私だけなのでしょうか?
続いて、ストライプインターナショナルやMARK STYLERのような、若年層女子をターゲットした組織です。これも、老若男女問わず・・・なブランドコンセプトではないでしょう。ですが、百歩譲ってそのような層の中に、サイズが合わない顧客がいるのも確かでしょう。しかしながら、この考え方も危険です。
上記のようなレディースブランドは、販売期間を短くとり、店の鮮度を意識して、多くの商品アイテム数を店舗に投入するのが、その特徴です。ということは?サイズ展開を増やせば、1アイテムあたりの平均数量が減り、更に1サイズ当たりの数量平均が少なくなります。(サイズ別の発注数量にメリハリがなくなる。)
すると、売れるであろうサイズの商品数量が足りなくなる確率が高まることで機会損失を起こし、売上が低下します。また、不必要なサイズが売れずに残る可能性が大なので、冒頭私が述べた。。。
と同じようなことが起こります。しかも、多サイズでそのようなことが発生するでしょう。結果、アウトレット事業に商品を回しても、商品は売れ残り、在庫が積み上がります。(ストライプやMARK STYLERが、まともなMD設計を行っているとは、とても思えない)
更に言えば、今回のことで”テック脳””テック信奉者”が全く理解出来ていないのは、服にはデータだけでは、拾えない要素がいくつもある点です。(ZOZO側に在庫リスクが無い可能性もあるので、ZOZOにとっては、どうでも良いことかもしれないが。。。)特に着心地やジャストサイズという点では、このことが多く発生します。その要素として。
・パターン(型紙)
・素材
・トレンド
があります。
同じサイズ表示。同じ数字寸法でも、パターン次第で着やすい服。着づらい服へと変貌します。私は、現役MD時代に常にトワルチェックに立ち会うようにしていましたが、そのミリ単位。しかも直線ではない、線の微妙な違いで、着やすさが変わっていくのを目の当たりにしました。こうした事象は、簡単にサイズデータ化できるものではありません。また、ブランド・ショップのコンセプトに沿って、体型の基準を設定し、モデルやトルソーを選びパターンメーキングするということから鑑みても、ZOZOで得られただけのデータを活用し、マルチサイズで商品を展開する!などということは、本末転倒にしか感じません。
また、皆様ご存知の通り、素材によって服の着心地は全く変わります。しかも、洗濯すれば縮む素材もあるのです。
ですから、こうしたパターンや素材に着目した上で、少しでも多くの人のサイズをカバーすることに着目する方が、私の経験から言っても、有意義であるのは間違いありません。
更に、ここ数年ビッグシルエットのトレンドが続いていますが、今はベーシック商品でも多少大きめに商品が作られています。実際、古着好きの私は、ジャストサイズに拘りは昔からありませんし、拘るのは精々スーツくらいです。それも約2年くらい着ていません(笑)
アパレル・ファッション業界に、テクノロジーを導入し、そのデータを活用することに、私は何の異論もございません。
服のマルチサイズ展開が需要があるのは、誰がみても明らかです。しかしながら、メリット以上のデメリットが数多く存在します。そして、現状のテクノロジーでは、まだそのデメリットは解決出来るものではない!と、テック側はしっかりと語るべきです。ですが、その辺の姿勢が、テック側には著しく欠けています。ですので、そうしたテクノロジーの発展に関わる、アパレル・ファッション関係者には、もっと、アナログの世界のこと。そして、顧客の本当に必要なニーズを、現場に足を運び掴んでもらい、業界の発展に貢献してほしい!と切に願います。
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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