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最近、資本力のある大手アパレルや商社がD2Cに参入するケースがだんだんと増えてきました。イニシャルコストが大きく発生する実店舗からではなく、スモールスタートが可能なECから始めるからこそ、小資本でもブランド運営が可能だと思われていた領域ですが、それがそうもいかなくなってきた様子ですね。(そもそも有名なD2Cブランドは資金調達してSNS広告やインフルエンサーメインに販促費かけまくってますが。)
そんな訳で、大手の様子がどんな感じなのか簡単にご紹介したいと思います。
大手アパレルの事例をちょっと例に挙げてみましょう。オンワード樫山が運営する「uncrave」では下記のような感じですね。
https://www.instagram.com/uncrave_official/
まずある程度、影響力のあるインフルエンサーをディレクターとして起用。uncraveの場合、エディターの方ですが、最近よく見られるのはスタイリストが多いですね。単純にソーシャルメディアでエンゲージメントが高いインフルエンサーを起用するのではなく、ちゃんとファッション業界関係者を選定しているケースがよく見られます。
次に、結構な頻度でファッション誌に出稿。発行部数こそ減少しているファッション誌ですが、認知とブランディングにはまだ効果的でしょう。
有力百貨店でのポップアップ定期開催で商品を直に見てもらえる機会を創り、
同じ現場でスタイリストを呼んでのインスタライブ。
展示会の来客や着用がインフルエンサーというより、もう芸能人。
そもそも自社ECモールでの展開だから、既存顧客にもセールス可能。
と、これだけ見ても大手の資本力によるパワープレイが見てとれます。また、大手は社内にMDもいれば生産背景もしっかりしていますから、ここに関しても大きな強みがあります。
そもそもブランドの企画・製造から品揃え計画・販促計画のようなMD設計は、D2Cより既存アパレルの方がノウハウがありますね。足らなかったのはソーシャルを起点とした販売方法だったのですが、それも資本力でどうにかしてしまいそうな勢いです。今のところ採算取れてないでしょうけど。販管費を店舗と販売員に充てるのか、WebコンテンツとSNS関連に充てるのかの違いでしか無いでしょう。
以前から再三に渡ってD2Cというスキーム自体には夢が無い事をお伝えしてきましたが、大手アパレルに加え伊藤忠や日鉄物産のような商社までもが参入を決めています。しかしながらD2C支援会社が乱立している様子を見ると、このような状況でも参入したいプレイヤーが多いと推測します。アパレルはその参入障壁の低さが原因で、以前から新規参入が多い業界ではありますが、元々期待出来なかったスキームが、更に期待出来なくなってきた印象ですね。「ソーシャルメディアを活用してファン獲得を促進したい」というお話ならまだ理解出来るのですが、「D2C」となると話は別です。
先日もとあるショップから「ECを強化したい」というご相談があったのですが、ECを始めたらからといってブランド全体の売り上げが劇的に伸び、新規獲得出来る訳ではありません。店舗を持っているなら、店舗とスタッフ起点で店舗カスタマーの数を増やした方が結果的にECの売り上げは上がります。「ブランドを新しく作る」という行為自体は否定しませんが、ブランドが過去どのように認知され、ファンを増やして来たのかを改めて考えたいものですね。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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