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無謀な新規参入はどうして増える?

筆者はアパレルECのディレクションをメインに事業を展開しているのですが、メディアで報じられるような、所謂「D2C」ブランドの案件も数多くご相談があります。

その中には、

「それは御社でやる理由が無いのでは…。」

「ECを作ったからといって売れる訳ではないのですが…。」

「それ、どこの話を鵜呑みにしてきたんですか?」

という感想を持つ事が多いです。皆様、共通点としては「簡単に売上が作れる」と思い込んでいる事でしょうか。過去、ファッション・アパレルビジネスでブランドの立ち上げを経験した人間であれば、そのような安易な発想には至らないとは思うのですが、それにしても楽観的な方が非常に多く、

「何故、そんな簡単だと思いこんでいるのだろう?」

と不思議でなりません。むしろ、ファッション・アパレルの小売なんてめちゃくちゃ面倒だし、「効率的にお金儲け」とは対局にあると思うのですが、このようなご相談が増えている原因について少し考えてみました。

メディアが原因?

筆者は情報収集の一環として、メディアが報道する記事を毎日読むようにしているのですが、業界経験が長くないと騙されてしまうような内容のものが多いように感じます。特に注意したいのが「短期間で大きな売上を獲得した。」という切り口でしょうか。これの真相ですが、

①めちゃくちゃ広告宣伝費をかけている

②仲間内や自社でもめちゃくちゃ買っている

③短期間ではなく、過去からそこに売上が集約されるよう準備している

④そもそも数字が嘘

中には倫理観を疑うような内容のものもありますが、話題にあがる事で認知に繋がり、実店舗でも良い売り場を確保したり資金調達もしやすくなったりするようです。多額の広告宣伝費をかける事に関しては、赤字になるかどうかのお話なので自社の方針次第なのですが、それ以外は架空の売上を見せているに過ぎず、あまり褒められたものではありませんね。

継続性の無いビジネスを報じる事の弊害

このような誇大広告の弊害として、冒頭でお話した「簡単に売上が作れると思っているご相談」が出てきます。しかし、裏側を知っている訳ではありませんので、①②のように相当な資金が無いと話題には出来ない、という事もわかっていません。結果、予算も潤沢ではありませんからスタート時点で企画倒れになる場合もあります。また、ECを利用する母数が少ない層向けのブランドなのに、オンライン専業で大きな売上を作ろうとしている担当者もいらっしゃいます。

メディアで執筆するライターさんがアパレルビジネスに精通していないのは致し方ありませんが、裏ではこのような事がよく発生しているのは知っておいてほしいですね。今の時代はPRTIMESで自前でプレスリリースを打って、ソーシャルのフォロワーさえ多ければそれを拡散させる事も可能ですから、怪しい報道をゼロにするのは難しいでしょう。それでも率先してメディアが怪しい情報を垂れ流しているのを見ると辟易とした気持ちになります。

・「計画比」◯◯%達成!という謎指標での達成

・「D2Cというものをやってみたかった」というお試し的な参入

・インフルエンサーが片手間で手掛けるブランドの報道

・自社で出資して達成したクラウドファンディング

こんな内容の記事が其処彼処で溢れていますから、情報収集する側にもリテラシーが必要ですね。相談者の中には「初回の発注数はどの程度にしておけば良いですか?」というご質問をしてくる方もいらっしゃり、MD設計などという概念はそもそも皆無なのでしょう。事業に対する解像度が低いほど、簡単にこなせると考えるのは世の常ですが、専門分野を司るメディアがもう少しリテラシーを高めてもらえると無駄な犠牲者が増えずに済むのに…、と思う今日この頃です。

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