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EC比率に意味はあるのか?

いまだに業界内でよく議論されるワードの一つとして「EC比率(EC化率)」というものがあります。全体売り上げに占めるEC売上の割合で、筆者もお仕事柄「どの程度の割合が適正ですか?」と聞かれることもあります。回答としては、

「御社の方針次第ですよ。」

とお伝えするようにしています。なぜこのような質問が出てくるのか、それは多くの方(特に企業の上層部)が「ある誤解」をしているからではないかと思うのです。

◯現状の売上を維持しながら「EC売上」だけをどんどん伸ばしていける?

よくご相談を受ける際に感じる違和感なのですが、既存のチャネル戦略を見直さず、そのままEC売上・EC比率を伸ばしていけると思われている方がたくさんいらっしゃることです。ではここでユニクロの店舗数の推移を見てみましょう。

ファーストリテイリング「店舗数」

国内店舗数が徐々に減少しているのがわかります。この傾向、実は2014年から出ていまして、ユニクロは国内店舗はもう7年ほど増やしていません。スクラップ&ビルドと店舗拡大・増床で対策しているのです。

また、最近はあまり決算書に掲載されませんが、ZARA擁するインディテックスも同様の動きです。

inditex IR

2017年時点でこの動きなので、コロナで店舗を1200店舗減らす、というのもややハードではありますが、既定路線だったように思います。

これだけ認知度が高いアパレルトップレベルのブランドですら、ECに売上をシフトしていく中で店舗の出店は抑制しています。面白いのは認知のある場所では出店を抑制し、これから認知を伸ばしたい場所ではどんどん出店していたということでしょうか。

◯「EC比率」はブランド力とチャネル戦略に依存する

結局どういうことかと言いますと、EC比率はブランド力とチャネル戦略に依存している、ということです。オンラインからスタートしたブランドは、その特性上、メインのチャネルがECになるでしょう。結果、後から出店したところで店舗数は少なく、EC比率が高いままですし、販管費を考えるとそれが適正でしょう。一方で、多店舗展開で規模拡大してきたブランドはどうでしょうか?今や知名度が高いので、出店を減らし、オンラインメインで販売していく、という方針であるなら、年商は下げながらも利益率を高めていくことは可能でしょう。しかし、今の店舗を維持しながらECだけを伸ばしていくという方針は、店舗とECのお客様が全く違うところからやってきている、と勘違いされているのではないかと思うのです。

何度も言いますが、EC自体が需要を創出するものではありませんから、新規獲得を促進し、売上を伸ばしていく方法論は過去からそう大きく変わっていません。ブランドの需要自体が伸びていないのに、ECだけが都合よく伸びる世界など無いのです。現状、ECが右肩上がりに伸びている要因は、ブランドが持っていた実力が可視化されたに過ぎません。そして、そんなにEC比率を高めたいのであれば、既存店舗を閉めれば達成します。これが実態です。

 

大手アパレルでも「EC比率50%」を掲げる企業が出てきたりと、メディアでもよくそのような報道を見かけます。様々なリスクを考慮すると、そのような方針が出てもおかしくはありませんが、それを実現するには具体的にどうしたらいいか?実現した先には何があるのか?はわかっておかなければなりません。

筆者は毎年百人を超える若者に「好きなブランドとそれをどこで知ったか?」をヒアリングしていますが、1位は店舗・2位は友人・知人の紹介です。ソーシャルでブランドを知る、というケースも多くなってきていますが、若者ですらこれが現状であり、いまだに店舗はブランドを知る・ファンになる入り口として大いに貢献しています。ラグジュアリーブランドが今になって改めて店舗に重きを置くような声明を出したり、積極的に出店を進めているのは何故なのか?自社が過去、どのように新規のファンを獲得してきたのか?今一度よく考えるタイミングなのではないでしょうか。

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