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先日、このWebサイトのオーナーである佐藤マサさんの記事でも出ておりましたが、
上記記事に出てきますように、「セールをしない」というブランドの一方針をまるで真の正解かのように唱える方々が多いように思います。他にもよく語られる、
「実店舗よりEC売上が高い方が良い」
「ストーリーへの共感が大事!」
「ブランドはコミュニティ形成が肝!」
なども同様ですね。最近では、「今はパーパスが必要!」なんていうのも増えたみたいですが…。ちょっと何言ってるかわからない
これらの「よくメディアで取り上げられている事例」は後付けしただけのものが多く、そもそも「それって本当に成功要因だったの?」と思われるものがしばしば見受けられますが、仮に本当だったとしても正解なんて複数ある訳です。なので、「これが真の正解!」のような発信のされ方を見ると非常に違和感があります。
昨今、若者に説明しても全然人気のない卸ですが、卸には下記のようなメリットがあります。
・サンプルで受注を取るから在庫リスクが低い。(条件が買取の場合)
・卸先の店舗を使って全国展開可能。
・卸先の店舗を使って流通量を増やせる。
・卸先が自店のチャネルで拡散してくれる。(EC・SNSなど)
筆者のお知り合いのブランドでも卸から火が付き、認知度が高まり、ECをスタートしたら検索メインで売上を伸ばすことに成功した、なんて事例は何件かあります。むしろ、インフルエンサーがスタートしたブランドより、特定の人のイメージが付いていない分、中心人物の旬が過ぎてもなんとかなるケースが多いです。筆者がデータを確認する限り、そのようなブランドがECで販売する場合、卸先の近辺にお住まいの方に売れるケースが多いので、
卸先からファン獲得→オフィシャルで買いたいユーザーが増加
という動きが見てとれます。
もちろん、「利益率が低い」や「自ブランドの世界観を表現しづらい」などのデメリットもありますが、どのチャネルだろうとデメリットは存在します。ソーシャルを起点にECからスタートしたらブランドの成功確率が上がる、なんてことは一切ありません。
こちらも以前よく言われていた内容ですね。しかし今では「実店舗の方が新規獲得のCPAが低いのでは?」と言われるようになりました。当然ながら普段のランニングコストは実店舗の方が高くつきますが、それは実店舗で獲得した認知や顧客を活用してECで売上を取っていたからですね。ECで新規獲得できないとは言いませんが、一つの側面だけを切り取ってどちらが優れているか?とは言えない訳です。
※CPA(Cost Per Action)…顧客獲得単価
上記のように、ブランドにとっての「方針」やチャネルを含めた「販売戦略」は自社で調整すれば良いのですが、どのブランドでも結局重要になってくるのは「商品力」「MD」に他なりません。
「セールをしない」ブランドが「何故セールをしなくても済んでいるのか?」は、売り切れる分だけに流通量を絞っているだけなので、それはMDの要素です。一部のストリートブランドのように、ブランド名やロゴマークに価値を持たせ、Tシャツやスウェットばかり販売しているケースもこれに当てはまるものが多いでしょう。少なめに発注しておき飢餓感を煽る手法は、それこそラグジュアリーブランドでもよく見かけるものでもあります。
また、初速命で売れたインフルエンサーブランドが長続きしないのは価格に「商品力」が合っていないからでしょう。プチプラにしたからといってもそれが何年もつのでしょうか。それはブランドを立ち上げたインフルエンサーご本人が一番ご理解されているかと思います。わかった上でブランドを売却する為に見せかけのトップラインを作るつもりならまだ理解できますが、長年続くブランドを作りたい、という方向性なら無理筋でしょう。
全ては目的と方針の違いでしかありません。大企業に買収されることを目的にブランドを作り、売却した後はどうでも良いというようなビジネスをしている方々には嫌悪感しかありませんが、それらをまるでブランド運営の正解のように報じるメディアもいかがなものかとは思います。「成長している」「めちゃくちゃ伸びた」など、ガワだけで売れたように喧伝している方々に惑わされず、中身で語れる、地に足を付けた方針・戦略がもっと取り沙汰されるようになってほしいものです。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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