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私は現在52歳ですが、唯一の趣味は服を買うことです。若い頃はオーディオ機器や音楽鑑賞など、比較的多くのジャンルに興味があり、お金を使っていました。しかし、今となってはファッション以外に「趣味」と呼べるものはありません(強いて言えば、歴史本や会計学の本を読むことくらいか)。この年齢でファッションにこだわるのは少数派だと自覚していますが、この先もこの趣味が変わることはないでしょう。そんなファッション好きの性ともいえる行動は、クローゼットに十分なアウターが揃っているにもかかわらず、毎シーズン、新しい防寒アウターが欲しくなることです。おそらく、ここ数年続く暖冬であっても、その思考が変わることはないでしょう。
続いて、今年の冬商戦は終わりに近づいていますが、冬のアウター市場の動向について述べます。近年の冬アウター市場は、暖冬の常態化や、消費者の「重量のある素材」に対する敬遠傾向を背景に、変化が生じています。具体的には、以前主流であったメルトンなどのヘビーな素材から、ダウンや中綿などの軽量素材へと需要がシフトしています。とりわけ中綿は、ダウンの価格高騰に加え、温度調整機能やデザイン面での汎用性の高さから、注目度が急上昇しています。
それでも依然として秋冬シーズンの主役といえる冬アウターですが、近年の暖冬による売上低下の影響から、多くの企業がマーチャンダイジングの組み立てに苦慮しています。一方で、ヒット商品を生み出し、売上を伸ばしている企業も存在します。アパレル小売において、冬アウターの秋冬シーズンの売上は全体の大きな割合を占めるため、今回は冬アウターのマーチャンダイジングを組み立てる上で重要なポイントについて考察します。
前述した市場の変化を踏まえ、あくまで個人的な見解を述べますと、冬アウターの売上が伸び悩む組織は、得てして商品型数を広げすぎている傾向にあります。そこで私は、思い切って冬アウターの型数を絞り込むことを提案いたします。
冬アウターの投入型数を決めるポイントは、「商品展開数」と「販売期間」の掛け合わせにあります。短期間で売るメリットは、在庫回転率が上がりやすい点です。1アイテムあたりの発注数が少なくて済むため、売り場を埋めるための在庫金額も抑えられ、計画通り売れればかなりの高回転率が見込めます。ただ、これを計画的に実践しているなら良いのですが、商品数が過剰になっている組織の場合は、結果として「個々の商品の販売期間が短い設定になってしまっている」だけと言えるでしょう。
この短期間販売が招くデメリットは、主に以下の二点です。
1 販売機会の損失: 1アイテムあたりの商品数が少量となるため、売れ筋商品が出た場合、品切れするタイミングが早まります。結果として、売れ筋商品品切れによる売上の低下を招くだけでなく、他の商品が売れなかった場合は、その在庫が残ってしまいます。
2 粗利率の悪化: 1アイテムあたりの数量減は値入率の悪化を招き、目標粗利の確保を困難にします。 加えて、多品種化は「売れ残り在庫」のリスクも高めます。これらをセールで処分することで、値入率の悪化に値引きロスが重なり、最終的な粗利率は大幅に低下してしまいます。
これらの課題を解決するためには、投入アイテム数を削減し、その分1アイテムあたりの発注数量を増やす「品番集約」が必要です。次項にて、この施策によって得られる具体的なメリットと、実行に向けたアプローチを考えてみます。
前述の通り、冬アウターの投入型数を削減することは、販売期間を長く確保し、同時に1品番あたりの発注数量を増やすことを意味します。そこで重要になるのが、「長く売る商品」と「短期間で売る商品」を明確に区別して品揃えを計画するという点です。
長期間販売する商品は、レディースなら42週頃、メンズなら44週頃から展開できるよう準備します。リードタイムが2カ月前後の組織であれば、期中追加(追加生産)も見越した数量設定や予算取りをしておくことが可能です。短期間での販売を想定する商品は、主に以下の2つのフェーズで計画すると良いでしょう。
1. 店頭の「見せ筋」として早めに展開する商品
2. 46週以降の売上伸長に合わせて展開する商品
ここでのポイントは、短期間販売商品の動向データを確実に蓄積・分析し、シーズン後半や次シーズンの精度向上に繋げることです。加えて、商品型数削減には「MD業務の質向上」というメリットもあります。逆に、与えられた型数をただ埋めるだけの「やっつけ仕事」や「数合わせ」のようなMD業務は避けるべきです。そのような仕事の進め方は商品の魅力を損ない、結果として顧客離れを招く要因となってしまいます。
もちろん、投入アイテム数の考え方や販売期間の設定は、各ブランド・ショップのコンセプトによって変わってきます。しかしながら、本記事でお伝えした「商品展開数と販売期間のバランス」という考え方は、今後の冬アウターのMD戦略のみならず、春夏シーズンの商品企画にも応用できる普遍的なものです。本記事の内容が、読者の皆様の今後の商品計画の一助となれば幸いです。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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