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優秀なマーチャンダイザーの条件とは?

★プロパー消化に拘りすぎると、在庫が多く残る?

先日、弊社のお客様ではない組織のマーチャンダイザー(以下MD)の方とお話する機会がありました。
その場でその方が仰っていたのは、「この秋冬(2022AW)は、売上も粗利率も良かったが、結果として、多く在庫が残ってしまった_| ̄|○」ということでした。
顧客からみたブランド・ショップの価値を保つために、プロパー売りを促進し、極力割引・値引をせずに売り切りたい!という考え方は、何一つ間違っていませんし、正しい考え方です。そして、そのことでアパレル・ファッション小売業界で良く出てくるのが、”プロパー消化率”という指標です。この指標が、MDの実務では使い物にならない!ということは、このブログでも何度も述べていますが(理由は下記の記事をご覧ください)、現状アパレル・ファッション小売業で使用されている”プロパー消化率”なるものは、売変していない在庫の消化率等の意味でしかありません。(レジでの値引きの場合は、プロパー消化になるということ。)

プロパー消化率という指標は、MDの実務には使えない


話を戻しまして、冒頭に登場したある組織のMDの方は、「自分たちの組織では、プロパー消化率という指標に皆が意識を振られ、結果、売価変更のタイミングが遅くなり、多くの在庫を残してしまった。」と、仰っていました。

このようなことは、どの組織でも起こり得ることであり、私も5・6年前に某上場企業の決算資料を読み解き、利益は出てるけど、在庫が大幅に増加しているから、この組織の来期は危険!等の記事も執筆しています。MDが重要すべき指標(KPI)は、売上・粗利高(率ではない)・在庫関連(消化率・回転率等)であり、プロパー消化率という指標が良くても、在庫が多く残ってしまったら、何の意味もありません。

★利益は出たけど、多くの在庫をのこしてしまった例

以下、プロパー消化を促進し、在庫を多く残してしまった例を上げます。

(例)ある組織の半期の数字
・売上1億円・粗利率57%
・販管費5200万円・営業利益500万
・期間中仕入原価5500万円

以上のような組織があったとします。この数字だけ見て、どのくらいの在庫が残ったか?を、算出できる方は、私のファンであることは間違いないでしょう(笑)。話を戻しまして、上記の組織の営業利益をみれば、黒字なので何の問題もないように見えますし、粗利率も高いので値引や割引を抑制出来たようにも思えます。しかしながら、この組織の問題点は、在庫を多く残してしまっていることです。何故、この組織が在庫を多く残しているのか?
上記の組織の売上原価は?
→売上1億円×((1-57%(粗利率))=4300万円(売上原価)
となります。会計学上では、売上原価は=仕入原価となりますから、1億円の売上を上げるのに、必要な仕入原価は4300万円となります。しかしながら、この組織は、仕入原価5500万円となっておりますので。
→5500万円(仕入原価)-4300万円(売上原価)=1200万円(残った在庫)
となり、1200万円在庫を残したことになります。期間中の消化率を計算しますと。
→4300万円÷5500万円=78.2%(消化率)
となり、決して良い消化率でなかったことが、ご理解頂ける筈です。
また、会計学的な視点でみると、期間中の営業利益が500万円で、現金が500万円増えた。しかしながら、期首より期末は、在庫が1200万円増えたので、結果、期首よりも組織の現金が700万円減った!ということになり、組織に損害をもたらしています。上記の例は、かなり大袈裟な例ではありますが、実際こんな状態になっている組織が少なからずある!ということです。

★優秀なマーチャンダイザーの条件とは?

上記の組織のような状態に陥らない為には?

・まずオーバー仕入にならないように。MD予算設計の基本である仕入設計を理解すること
・期中での気づきを早められるようなMD予算設計を行うこと(測定できるメーターの数量を増やす)
・更に期中での対応の精度を上げること。ダメな商品は売変。そして良い商品を仕入れる枠を空けるということ
・商品・品揃えそのもの精度を上げる

このことが必要だと考えます。
今回の記事では、上記のことを詳しく申し上げることはしませんが(過去の記事や繊研plusの記事をご覧ください。)、私自身が考える優秀なMDの条件として。

①(当然のことですが)商品に強い人
②前始末である事前準備をしっかりと行う人
③自分の非に素早く気づき、その解決策をスピーディーに実践することが出来る人
④現場である店頭に足繫く足を運ぶ人
⑤他者に物事を伝えることが上手な人
⑥整理整頓が出来る人

以外にもありますが、上記のことを実践できる人こそが、優秀なMDだと考えています。
特に、今回の記事の例で言えば、③の条件がとても大切となります。プロパー消化に拘ること自体は、間違いではないのですが、プロパー消化に拘りすぎるばかりに、在庫を残してしまっては何の意味もありません。全て売れる商品を品揃えする!というのは、MDにとって理想ではありますが、適量以上の商品を仕入してしまった場合には、素早くその非を認め、売価変更等の在庫消化施策を実施する人こそ、MDとして優秀である!ということを訴えて、今回の記事は終了です。

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