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ZOZOの直近の決算を確認してみた

大手アパレル上場企業のEC売上推移はある程度まとめましたので、今回は久しぶりにZOZOの決算を確認してみたいと思います。と言いますのも、直近でモール売上が鈍化している企業・ブランドが散見されましたので大元がどうなっているか?ちょっと気になった次第です。

店頭回帰・EC鈍化の中、ファッションEC代表のZOZOはどのような推移なのか?見ていきたいと思います。

 

■直近の業績は好調に推移

ZOZOの24年3月期決算は引き続き増収増益で推移。商品取扱高は5743億円と、 相変わらずファッションECモールとしてはぶっちぎりの1位かと思われます。(楽天のファッションカテゴリーの方がGMVは大きいですが) 昨年からGMVは300億円程度増加と申し分ないと思われますが、コロナ禍で急成長しすぎたせいもあり、やや鈍化している指標もいくつかありますね。

■会員数・ショップ数の伸びがやや鈍化

まずは会員数ですが、年間で269,506人の増加と、過去からの推移を見ますとやや伸びが弱い1年でした。出店ショップ数の増加もやや少なく、SKUが担保できないと新規獲得の数字は悪化しそうですね。 特に第4Qに関しては全体で減少に転じており、暖冬の影響から会員数増加が鈍化したとのこと。

アクティブ会員の伸びが弱かったということですが、以前からゲスト会員の数は減り続けており、ライトユーザー減少は止まらず。 国内では既に取り切った感があるので致し方ないと思いますが、今後はファッション関連以外のものも多数取り扱っていなかいと大きな成長は見込めないでしょう。(既にファッション以外も取扱いは増え続けているのでしょうけど)


(直近のデータをまとめたのがこちら。単位バラバラですみません…。)

ちなみにコロナ禍の2020年3月期から2021年3月期はGMVが743億5300万円、2021年3月期から2022年3月期は894億3800万円伸びております。緊急事態宣言からショップが完全にストップした際、多くのブランドが在庫をモール・自社EC用に移管したかと思いますが、そこからの伸びが脅威ですね。モールの比率を徐々に下げていた企業も、あの時点でまたモール回帰に踏み切ったと思われますし、クーポンも大盤振る舞いでしたので相当数字は伸びやすかったかと。(クーポンはブランド負担ですしね)

■値引き・プッシュが昨年より強い?

現在、店頭回帰から当然ながらECは成長鈍化しやすくなっていますので、モール側としては何としてもSKUの担保(ショップ数・ブランド数の増加)と、ブランドの値引き施策は強化したいところでしょう。大手アパレルでも最近は粗利・営業利益を 意識してクーポン販売を抑制するブランドが増えてきましたので、ZOZOとしては「あなただけのタイムセール」(ZOZO負担)を連発するケースもちらほら出てきているようです。 直近で数字は悪くないとは言え、以前よりは成長鈍化からか、LINEのプッシュ回数や値引き施策も昨年と比較して多い印象。おかげで自社ECの売上にも影響出るケースがちらほら散見されます。(指名検索からのクリック率低下や、検索経由のCVRの低下など。担当者が理由わからなかったらどうするんや…。)

実際に直近5月のLINEのプッシュを確認しましたが、8回のプッシュに対し昨年は2回のみ。GW期間中のタイムセール訴求からMAX95%OFFのZOZO WEEKの訴求まで、この春夏はこのような取り組みのプッシュが多いですね。(大手アパレルも自社ECで値引き施策多くなっておりますが)

■アクティブ会員の高年齢化

また、アクティブ会員の高年齢化が止まらず、とうとう平均年齢が35歳付近まで来ました。こちらも21年3月期に一時34.2歳まで上がったのですがそこからやや下がり、また上がってきたという状況ですね。人口の分布的には致し方ないと思われます が、

アンティローザ、30〜40代の女性向け新ブランド「オーピュレンス」を立ち上げ

アンティローザのようにZOZO専業のブランドを多数展開している企業からすると、このような取り組みはよく理解できます。顧客が歳を取り、新規で若年層を誘引しても割合的にどうしても年齢の高いユーザー数が上回ってしまう、という状況なんですかね。 それが要因なのか、出荷単価・商品単価の下落はやや改善されております。(コロナ前の水準に戻った程度ですが)

余談ですが、ZOZOでも値段を安い順番で並び替えると数百円の商品がたくさん出てきます。(これだけ見るとSHEINと大差ないように見える…) 現在のZOZOで売上上位ブランドがClassicalelfやMONO-MARTあたりなので、今後劇的に出荷単価が上がることはないでしょう。(ZOZOVILLAですらクーポン連発するのやめれ

その他、こちらも上位店舗のフリークスストアですが、ZOZOにアジャストしている?と思われるような低単価商品の並び。(もちろん買い付けも展開はしているのですが)

■to B事業の鈍化

あと気になった点は、to B事業がやけに減少している事でしょうか。2022年3月期に266億円あった売上が、昨年156.8億円、そして2024年3月期には144.7億円にまで減少。決算短信には2年連続で、

“商品取扱高の多くを占めるブランドの支援撤退があったものの、支援を継続しているブランド各社においては自社ECサイト活用の積極化が続いている状況です。”

と記載がありますね。(コピペか) ZOZOのto B事業と言えばフルフィルメントの受託がメインですが、Fulfillment by ZOZOからの撤退が相次いでいるのでしょうか。あのサービスが出た当初も「これから物流は自前」のようなトレンドがややありましたので、撤退は何となく理解できます。ECだけでなく店頭在庫まで握られてしまうと 身動き取れないですしね。

■その他

最後に、直近で報道のあった取り組みですと、

WEAR、AIによるパーソナライズでコーディネート提案が進化 ファッションジャンル診断やフルメイクARを導入しリニューアル

こちらでしょうか。周辺からお聞きしている情報ですとWEARは経由売上がずっと伸びておらず、マネタイズには苦労しているようでしたが、これが起爆剤になるかどうかですね。 (niaulab、何回応募しても予約取れた試しがない…。)DL数が1700万と結構な数にはなっているものの、WEARISTAが業界的に注目度が高いとはあまり思えません。若者に聞いても「存在は知っているが活用はしていない」との声も多いので、この取り組みが盛り上がってくれると良いですね。

 

直近の決算からZOZOの状況をまとめてみましたが、業績は好調で利益率も相変わらずめちゃくちゃ高いですが、今後の成長を見据えた際に気になる指標がいくつかある(会員数・ショップ数の増加がやや鈍化など)、という印象です。また、ZOZOTOWN事業以外の売上インパクトは弱いものの、to B事業は鈍化、ZOZOUSEDはとてもゆっくり増加、PBやマルチサイズプラットフォーム事業は影も形も無くなり、LINE・ヤフーコマース事業は順調に成長という感じでした。

服以外のカテゴリーでも相当なSKUがありますので、今後はこちらがメインで増えてくるのでしょうか。おしゃれな家電の取扱いあったりしますし、もはや行き着く先はちょっとだけおしゃれな楽天市場なのかもしれません。

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