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セール売価設定の考え方

★セール価格を適当に決めていませんか?

もうすぐ 夏のセールですが、セール準備をもう終えている組織が殆どだと思います。セール準備において、MDの仕事として重要になるのが、セール対象商品の選定とセール売価の決定です。ここ数年の温暖化で、夏のセールを終える→秋物を立ち上げる!等という組織は、以前よりも少なくなっていると思いますし、これからもっと暑くなるのに、夏物をおいそれとセールにかける組織も減ってきています。とは言え、残してしまった春物や夏物でも動きの鈍いものは、セールにかけて在庫をお金に変えていく!ということをMDは意識しなければなりません。ということで、今回は(商品の)セール価格を決定する際に、MDが意識・実施すべきことを考えていきます。

MDが商品の価格設定を行う際に、やってはいけないことは「(商品の)値引をしすぎる点です。このことをもっと詳しく説明すると。。。

“店頭で70%OFFして売っている商品のOFF率は65%でも良かったのではないか?”
“60%OFFは50%OFFでも売れていたのではないか?””2BUY10%は本当に必要だったの?”

これらのようなことです。このセール価格の設定は、ある程度の根拠を持って設定することができれば、必要以上のOFFで売上・粗利益を喪失する可能性が少なくなります。そのことが、組織の損益に与える影響は軽微ではない!ということを、価格決定権限を有するマーチャンダイザーは踏まえなければなりません。

★何故に、値引きしすぎてしまうのか?

では何故、上述したような”値引きをしすぎる”といった現象が起こるのでしょうか?それは。。。
”目先の在庫金額(数量)ばかりを気にして、適当にセール価格(OFF率)の設定をするから”
このことです。特にOFF率のルールが、70・50・40・30%と使える数字が決まっているからとか、なんとなく見た感じの感覚?でセール価格を設定してきたとか、そのような組織が未だに多いのでは?と思われます。

★必要以上の値引きをしない為には、どのようなことが必要なのか?

では、”(セール時)に必要以上の値引きをしないようにするためには、どのようなことを意識した良いのか?”と言いますと。
”先の売上を予測し(見通し)、在庫ターゲットだけではなく、粗利率のターゲットを設定すること!”
このことになります。これらのことを順を追って簡単に説明致します。

① 先の売上を予測する(先の売上の見通しを算出する)

→これは、まだ店舗をオープンしたばかり、外的要因に大きく左右されるような店舗ですと、先の売上の見通しは立てづらいのですが、長年出店している店舗。分母が大きい組織の売上予測は、過去データ等を活用すれば、それほど大きなズレがなく、先の売上見通しを立てられます。このことがまず必要となります。(精度の高い売上予測を出すには、MD予算をしっかりと設計しておくこと、単品ごとに先の売上シミュレーションを出す等の方法がある。更に併用するともっと精度があがる)

② 在庫金額ターゲットを定める

→これはどこの組織も実践していることだと思います。販売終了期間まで、どのくらい在庫を残しても良しとするのか?このことを決めておく必要があります。この時期ならば基本的には春夏商品の在庫目標を決めるのがベターですが、定番品と呼ばれる商品在庫が多い等もチェックする必要があります。このブログでもいつも記載していますが、在庫の質がすぐにわかる商品分類のルール設定をしておくだけでリスクヘッジとなります。

③ 粗利率のターゲットを定める

①②が終了したら、売上高を鑑みながら、”粗利益率のターゲットを設定し、最低限必要な粗利益高の目標を定める!”このことが重要です。そして、①②③が定まると、売上原価高も同時に算出さます。そのことで、上記の目標に達する必要な売上原価。ある意味、売上点数の目安がわかるわけです。
また同時に、組織の値入率が把握できていれば、値入率と粗利率の差から、上記の目標数値に達するためのOFF率(値引き・割引率)が算出出来ます。このことができれば、前準備が整うということになります。私が常々、“値入率65%の商品がセールして売れた結果、粗利率が50%になった。この商品のOFF率は何%になりますか?”このような問題を連載でよく出題しているのは、上記のようなケースで必要となるからです。

★セール価格決定の手順をシミュレーションしてみる

以下、簡単な例を用い、セール価格決定までにすべきことを、できるだけ皆様にわかりやすくお伝えしていこうと思います。ですが、流石に文章で細かいことまでお伝えするのは、中々難しいことですし、個々の組織で、状況も違うことだと思いますので、あくまでご参考程度の手段である!と捉えて頂ければ幸いですm(__)m今回のある架空の組織の数字を例にお伝えしていきます。ある組織の前提条件を以下、皆様にお伝えしますと。。。

① 現在は6月4日前後。売れていないので、店頭一部セール実施済。
② 今回は春夏商品ブラウスで表を作成。商品の仕入原価率は35%(値入率65%)
③ 6月~8月の売上予測は過去データ等を基に算出。期首在庫原価は1300万円。6月に仕入原価300万入荷予定。
④ 8月末の残在庫目標は200万円(残りは9月ECで無くしていく)

このことを条件に、この組織のMDは下記の図を作成し、各月の粗利率ターゲットを算出しました。→できるだけ多くの粗利高を獲得したい!という前提です。(*各月の売上予測・粗利率ターゲット・在庫金額は、表で確認してくださいm(__)m)


この表の各月の粗利率のターゲットから、各月のOFF率を算出すると。6月20.5% 7月30% 8月41.7%と、このように月ごとのOFF率の目安が出てきます。これで、各商品のセール価格を設定する!という前準備が完了します。

以上のことで前始末が整いましたので、以下、各商品のセール価格決定までの手順をお伝えします。

1. 6月の売上シミュレーションを単品ごとに行い、6月時点末在庫数の予測を算出
2. 6月末の在庫数と6月売上点数を基に、在庫消化日数等を算出
3. 在庫消化日数や商品そのものの位置づけ(特に6月入荷商品)を基に商品をランク分けし、価格を決定
4. ランクに応じ、商品単品ごとに7月の売上・在庫シミレーションを行う

このような順番で、セール価格の決定をしていきます。上記の項目で注意すべき点を以下述べていきます。

1. 6月の売上シミュレーションを単品ごとに行い、6月時点末在庫数の予測を算出

→まずは、商品品番数が多いが組織は、単品ごとに売上シミュレーションを行う!ということが困難である筈です。ですが、このブログでもいつもお伝えしているように、在庫の質を見極めるルールが、しっかりとなされていれば、困難さが軽減される!ということを覚えておきましょう。このことで重要なのは?過去データの傾向・癖をしっかりと活用することです。手法は、商品の追加発注時に行うシミュレーションと同じ考え方になりますので、下記私の過去記事を参照してください。(今回のシミュレーションは、6月4日前後という設定ですから、ある程度精度の高い6月の売上シミュレーションが可能な筈です)
商品の追加発注について考えてみよう1(佐藤正臣)

2. 6月末の在庫数と6月売上点数を基に、在庫消化日数等を算出

→上記のシミュレーションが終わりましたら、6月の予測売上数。時点在庫数を基に、在庫消化日数を算出します。以下、私の独断と偏見で数例を上げてみます。
・商品① 6月の予測売上数100点。6月時点在庫数500点。500÷(100÷31)≒93日
・商品② 6月の予測売上数300点。6月時点在庫数200点。200÷(300÷31)≒20.7日
・商品③ 6月の予測売上数500点。6月時点在庫数700点。700÷(500÷31)≒43.4日
このように、算出していきます。この際に注意すべき点は、在庫消化日数の1日の平均売上数の考え方です。

3. 在庫消化日数や商品そのものの位置づけ(特に6月入荷商品)を基に商品をランク分けし、価格を決定

1.2.の過程を経て、各商品の在庫消化日数を算出できましたら、その在庫消化日数に応じて、在庫をランクするわけする作業を行っていきます。
・商品① 6月の売上数100点。6月時点在庫数300点。300÷(100÷31)≒93日
・商品② 6月の売上数300点。6月時点在庫数200点。200÷(300÷31)≒20.7日
・商品③ 6月の売上数500点。6月時点在庫数700点。700÷(500÷31)≒43.4日
今回のシミレーションでは、春夏商品を8月末日で商品をほぼ無くしたい!目標ですから、このことを踏まえ上記の商品をチェックしてみると、商品①は今の売上ペースでは、8月末に売切るのは不可能そうです。逆に商品②は、7月中旬には商品なくなる可能性があります。商品③は商品②より6月の売上数量は多いのですが、在庫がまだ豊富?にあり、7月中で商品がなくなることはなさそうです。これを基に、商品のセール価格を設定するということになります。

今回のシミュレーションでは、商品①40%OFF(粗利42%)。商品②をセール対象外商品(粗利65%)。商品③を30%OFF(粗利約50%)と決めていきます。この際に、例えば在庫消化日数60日以上はOFF率●%。在庫消化日数30日以内はセール対象外?等と、セール売価を設定する前に、一定のルールを決めておくと良いでしょう。また、●●%オフすると、売上数が前月(週)の●倍になる!等の過去データを活用すると更にその精度が高まります。また、6月入荷商品に関しましては、まだ売って間もない商品ですから、別の考えをする必要があります。

まとめとして、セール売価を設定する際の意識すべき点は?最初に決めた粗利率ターゲットが達成できるような値付けをするのではなく、ターゲットの粗利率よりも高くなるようなセール価格を設定する!という点です。特に、商品③(商品②よりも6月の売上数が良いので、30%OFFもする必要はない)のような店でVP(売れる場所)に置かれる可能性が高い商品等は、%オフという値付けではなく指定セール売価を設定し、顧客の心理に訴求しながら、粗利を出来るだけ高く獲得する努力をするといった姿勢が重要です。
更にもう一つ値付けする際に、注意してほしい点があります。商品②の場合は、在庫数が商品③の半分以下です。また6月の売上予測数が、商品③より少ないですから、SKU欠けが発生している可能性が高いといえます。そのような場合、売りづらい色・サイズばかりが残っている可能性が高いですから、セール対象外からセール売価へ変更する必要がある?等のことにも注意を払う必要があります。

4. ランクに応じ、商品単品ごとに7月の売上・在庫シミュレーションを行う

各在庫のランク付けが終わり、各商品のセール価格が決まったところで、次は、商品単品ごとに7・8月の売上シミュレーションを行っていきます。(セール時の売上シミレーションの方法に関しましては、私の”商品の追加発注”に関する記事を参考ににしてください。要は、この手法を全ての商品に行えば良いということになります。)

商品の追加発注ついて考えてみよう3(佐藤正臣)

7・8月の売上シミレーションを行うと、最初に行った売上・粗利益が予測・ターゲットとズレてくる筈ですので、単品別シミュレーションから算出された数字に、元のカテゴリー単位のOTB計画を修正しましょう!(上記の図はあくまで参考です)これで、一連の作業は完了です。

★最後に

しかしながら、実際の期中での結果が売上シミレーション通りに事が運ぶわけではありません。ですから、現場の状況に注視ながら、予定より消化の悪い商品があれば、スピーディーに値下げを実践してください。ですが、何度も現場(店頭・EC)に値下げ指示をしていると、現場が疲弊しますので、そのことを憂慮するのは当然のことです。
今回、長々とお伝えしたセール価格決定までの流れは、あくまで手段の一つですし、すべて手順を真似る必要はなく、端折っても構いませんし、他にもっと良い方法はあるでしょう。また、先の売上予測はAI等のテクノロジーの力でその精度が高くなる可能性大です。そして、セール価格決定までの流れは、組織によってその手段は相対的に変わってくる筈です。今回のセール売価の決定の流れを文章で伝えるには、私の力が足りない点がまだまだあります。ですが、闇雲にセール価格を決定することによるデメリットは、今回詳しくお伝えいたしました。今回のブログが少しでも、皆様方のお役に立てれば幸いです。

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