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よくX(Twitter)で見かける光景なのですが、自分が得意とする領域をプッシュしたいが為に極端な発信が散見されます。どんな手法も100%の正解なんてものは無く、自社の取り扱う製品や置かれている環境に合わせて最適解を模索する、というのが正しい手法なんだと思うのですが、SNSは極論を言い切った方が影響力を持ってしまう事があるので非常に厄介。変にライクやブックマークが多数付いてしまい、その手法が正しいと勘違いしてしまう方も出てきてしまいます。
言い方が極端ですね…。PL組んで自社ECの計画しているケース普通にたくさんあるし、その場合広告費もおり込み済み。モールは確かに集客力あるけど、僕が生業にしているファッション関連は「モールにアジャストした商品」じゃないと逆に運用が難しい。またSNSのインフルエンサーじゃなくとも0→1で、… https://t.co/XcLNP5BIY0
— 深地雅也 (@fukaji38) August 7, 2024
(そんな一例がちょっと前にありましてな…。)
中には「◯◯の先生」「◯◯の専門家」のようなユーザーネームを付けて発信される方々もたくさんいらっしゃいますので、その道に詳しい人だと思い込む方もいらっしゃるでしょう。誤解を恐れず言うと、我々のような支援会社のお仕事はお客様よりちょっとでも情報量が多ければ成り立ってしまうケースもありますから、誇大広告がバレない事もあるのです。
モールにはモールの、自社ECには自社ECの特性があるのにそれを無視して「これがベスト!」は言ったらあかんでしょ。逆に知見の無さを露呈しているし、変に勘違い招いて事故る人いたらどうするんよ。本当「先生」名乗るアカウントは地雷が多いわ。(定期) pic.twitter.com/s1ca6uBuNY
— 深地雅也 (@fukaji38) August 7, 2024
そんな訳で、上記でも語られていたのが自社ECとモールの比較。古から伝わる論争ですが、これに関して筆者も様々なケースを見てきました。一概にどちらが良いとは全く言えないのですが、ある程度の傾向と向いているケースは見てきましたので、その辺りについて本日は書いてみたいと思います。
よく語られる、「自社ECは販管費が安い」などのお話は、正直運用次第なので何とも言えません。安い時もあれば、広告費や手数料が嵩んで高くつく時もあります。一方が「高い・安い」と言い切ってしまっているケースを見た際は「お前のさじ加減やないか」と思っておいてください。
ただ、自社ECの最大のメリットは何か?と言うとやはり、
<メリット>
・顧客管理
・独自ドメイン
だと思います。自前でお客様の名簿を獲得、育成して収益率を上げていく。だからこそ、最初から店頭に顧客がいる大手アパレルや、SNSでフォロワーという名の見込み客がいるインフルエンサーブランドは相性が良い訳です。もちろん、量販的なブランドにてお客をSNSで誘引してShopifyのようなエクスプレスチェックアウトで販売する、なんて事もできてしまうのでライトユーザーに向かないか?と言われますと「ブランド特性による」という解にはなりますが。顧客管理に関しては明確に他社モールよりコントロールはしやすいでしょう。昨今は大手アパレルでもロイヤリティプログラムがトレンドになっておりますが、そのあたりの取り組みももちろん含みます。
独自ドメインに関しては、単純に自ブランドの指名検索という資産を他社に握られている状態が健全では無いから、という理由ですね。せっかく広告費かけて、出店して得た指名検索なのに、他社に手数料払って肥えさせてどうするってお話です。SNSのフォロワーも同様なので、SNSでモールに送客するのはやめておいた方が良いでしょう。(販路がモールしか無いなら致し方ありませんが)
一方、デメリットは何か?と言われますと一般的には、
<デメリット>
・幅広い知識/技術が必要
・自前での集客が必要
・作業コストが高い
あたりでしょうか。このあたりも支援会社使えば自社でやらなくて済むのですがそれだと販管費率が上がりやすい、とモールと大差無い状況にもなったりしますのでどっちもどっちな気はしますね。
他社モールを推奨する方々がよく発信しているのは下記のような内容でしょうか。
<メリット>
・集客力
・作業コスト軽減
・認知拡大
他社モールで販売促進して店頭への来店が増えた、というお話は実際に聞いた事がありますので確かにそれはあるのでしょう。作業コストと費用のバランスはモールとの料率次第なので、自社ECと同様何とも言えないとは思いますね。確実に強いのは集客力ですが、クーポン・セールで担保するケースもありますので、ここは利益率との兼ね合いもあるでしょう。
<デメリット>
・値引き施策に偏重
・顧客名簿の獲得が不可
そんな訳でデメリットはこちらになりやすい。また、値引き施策が多くなりやすいので→原価率が低い方が運用しやすい、という傾向はあるでしょう。筆者がよくぶち当たるケースとしては下記のようなものが多いですね。
・トップライン伸ばしたいけど自社ECではやや限界に近づいてきた
↓
・複数の他社モールで展開してトップライン伸ばす
↓
・トップライン伸ばすにはクーポン/セールが必要になる
↓
元々の製品の原価率では採算取りにくいので評価減したキャリー品をメインに販売 or 廉価版作ってモール用で販売
or モールだけ値段を上げる
みたいなお話。確かに売上は作りやすいのですが、値引きが主体になりやすいので原価率低い方が有利です。なのでショッピングモールと売り方ちょっと似ていますね。ODMがブランド立ち上げの際にZOZOで拡販しているケースもあったりします。そこから売上・利益を確保した後、販路を拡張していくのは良い手法でしょう。
注意点としては、他社モールで売上しっかり取れたからと言って、モールのお客を自社ECに連れてくるのは非常に難しい。モールのお客はモールのお得さで購入している方が多いので、自社ECでそれ以上のお得さ(金額だけとは言いませんが)を提供しなければなりません。また、モールで売上が伸びたからと言って「指名検索」が大きく伸びるか?と言われると、余程の売上規模にならない限りは知れています。それならリアルの販路を拡張した方が指名は取れますので。(ポップアップショップ・卸強化・実店舗出店など)ZOZOTOWNなんかでは、その商圏に合わせた商品を作り込む方が売上が取りやすいケースも多分にありますので、売れる商品の特性にも違いがあるかと。
いくつか書いてみましたが、あくまで傾向なのでもちろん例外はあります。それだけ、どちらが良いなんて断言する事ができないものなのです。他社に顧客名簿とドメイン握られていようがトップライン伸ばす事を優先する、というならモールで積極的に販売するのも良いでしょう。感度が高いブランドが他社モールで売れない、という事もありませんし、モールだからといってクーポンを絶対乱発しないといけない訳でもありません。結局は自社の方針次第なので我々支援会社からすると、
お客様の希望と売上・利益・ブランドの見え方のバランス
でしかないかなぁと。それを包み隠さず全てテーブルに乗せた上でお客様に納得頂き、運用を支援するのが我々の仕事ではないでしょうか。SNS上で極端な言説で煽り、自分の得意な領域に誘引した結果、お客様の勝ち筋が薄くなるというのだけは回避してほしいものですね。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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