メールマガジンを登録していただくと、セミナー・イベント開催のお知らせやブログの更新通知をお届けします
先日、深地さんが以下の記事をアップしていました。
私自身もそうでしたが、新しい事業を始めるときは、誰しもが素人です。そして、ファッション・アパレル業界でブランドを立上げ、成功させたい!という人は、才能のある若者・インフルエンサーに限らず、縫製工場の経営者等も含めて、多くいらっしゃることだと存じます。私自身は、異業種の方を含め、多くの方々がファッション・アパレル業界に参入してくれることは、業界の活性化の為にも良いことだと感じています。一方で、勢いだけでブランドを立ち上げると、なかなか成功に結びつかないケースも少なくありません。また、多くのブランドが、初期の成功を維持することが難しいという現実もあります。ということで、今回はブランドを立上げる前に必要なマーチャンダイジング(以下MD)における決め事をお伝えしたいと思います。
(過去記事にも事業立上げ前の前始末について記事を纏めていますが、再度記事に纏めたいと存じます)
新しくファッション・アパレル関連のショップ・ブランドを立上げるとき、当然のことながらコンセプト・顧客ターゲット・卸・小売等の商品の売り方等が具体的に設定されていることが大前提となります。前提を満たした上で、MDを実践する上で必要な事項を以下箇条書き致します。
○商品の調達手法の確立
○MDスケジュールの作成
○損益計算書
○商品分類の選定
○(店舗における)商品の標準展開数量の決定
○MD予算設計~事前シミュレーション~
他にもあるとは存じますが、MDを実践する上で必要な事項は上記の通りです。では、各項目ごとにお伝え致します。
新しくブランド・ショップを立ち上げる際に、先ず行わなければならないことは、商品の調達先の確保です。商品を作るのではなく、完成品を仕入れるのであれば、コンセプトに見合ったメーカーを探さなければなりませんし、オリジナル商品を提供する場合でも、OEM・ODMメーカーと取り組むのか?、縫製工場や生地のベンダーさん等、生産自体も内製化をするか?等を決めなければなりません。その際にミニマムロット(必要最低数量)の把握も必要で、この部分を無視してブランド立ち上げなど出来ません。
そして、商品の原価がどのくらいになるのか?ということを把握しなければなりません。オリジナル商品の場合は、原価に対してどのくらいの値入が欲しいのか?このことがMDにおける”適価”の部分に大きな影響を与えます。更に必ず確認しておかなければならないことは、商品のリードタイム(以下LT)です。LTの期間が短ければ、在庫を多く持つ必要がなくなりリスク低減されますが、アパレル業界の現状を鑑みると、LTの短縮は期待できないので、精度の高いMD運用が求められます。
商品の調達先が決まったのちに行うべきことは、MDスケジュールの作成です。先述したように、現状のアパレル業界では、商品のLTの短縮は期待できません。ですから、MD予算設計・商品のLT・商品の発注数量決定までを加味して、MDスケジュールを作成しておくことが、リスクを低減さえることに繋がります。(下記の図はMDスケジュール表の例)
損益計算書を作成することは、新事業を立ち上げる際には必須です。損益計算書の作成の仕方に関しては、ここでは詳細に述べることはしませんが、MD的に大事なのは、売上・粗利益・売上原価となります。
特に粗利率の目標値は重要で、上述した商品の調達手法で目標の値入率が決まります。そして、年間どのくらいのOFFを考えているのか?で粗利率の目標値が決まります。粗利率の目標値が決まると、売上の目標値も算出され、売上原価を基に年間の仕入金額が算出することが出来ます。仕入金額の算出に関しましては、繊研plusさんの私の記事をご覧ください。
MDにおける”適時”のルール。そして”適品”のルール設定を行うことは、ブランド・ショップを永続させる為には、極めて重要なことです。商品分類の重要性に関しましては、私の過去記事に詳しい内容を記載していますので、以下の記事をご覧ください。
更に付け加えますと、商品分類のルールを具体的に決めておくことで、商品分析の精度が各段に上がります。商品分析の精度の向上は、ブランド・ショップを永続させることに繋がります。ですが、ブランド・ショップ立上げの際に、初期投資を多く出来ない組織もあるでしょう。そのような方々に向けての新サービス立上げも、弊社と深地さんの会社とで企画しておりますので、準備が整い次第、皆様方にお伝え出来ればと存じます。
ブランド・ショップを立ち上げる際、最初はECのみでと考えておられる方も多くいらっしゃることだと思います。ECのみでショップを立ち上げる際の利点は、実店舗に比べてランニングコストが低いという点が挙げられます。このことで20年前に比べ、ファッション・アパレル業界への参入障壁が下がったというのも事実でしょう。しかし、ECでブランド・ショップを立ち上げるデメリットも存在します。それは、在庫過多になりやすいということです。(ECが)在庫過多になりやすい理由は多々あるのですが、大きな理由しては、実店舗のように商品を展開する数量に限りがないから!というのが理由です(実際は倉庫に入る数量に限りはあるでしょうが、実店舗ほど収納できないということは少ない)。ですから、ECのみでブランド・ショップを立ち上げる場合でも、店舗の標準展開数量を決めておくことが重要です。このことも私の過去記事に記載しておりますので、以下の記事をご覧いただければと存じます。
最後はMD予算設計です。MD予算設計の重要性に関しましては、過去に何度も記事しています。また、繊研plusさんでも長く連載しておりましたので、以下の連載を参考にしていただければ幸いです。
上述したこと以外にも、仕入等の管理会計帳票の準備や、MDにおける管理面の仕事を円滑に行えるように、事前準備をしっかりと行う必要があります。特に自社ブランドを立ち上げる場合は、誤表示や優良誤認を防ぐために、生産管理的な商品の知識を身につけることも重要ですし、自身でそこまで手が回らない場合は、生産管理が出来る人の雇用の検討も必要になるでしょう。(特にインフルエンサーブランドなどは、この辺の認識が甘い気がする。。。)長い文章になりましたが、この記事が新規ブランド・事業を立ち上げたい方々のお役立てれば嬉しく存じます。今回の記事はこれにて終了です。次回もよろしくお願いいたします。
マーチャンダイジング関連のサービスは、以下のリンクをクリックしてご確認くださいm(__)m
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
小売ビジネスに関するMD(品揃え政策)アドバイス・サポートを
ご希望の方はお気軽にお問い合わせください。