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先日、繊研新聞で、約束手形の支払い期間が短縮されるというニュースを見ました。
記事によると、今年11月から、下請法の運用が変更され、事業者の規模や取引内容によっては、支払期間が60日を超える支払いが行政指導の対象となるそうです。この記事を読んで感じたことは、「このことで資金繰りが厳しくなるアパレル小売企業は増えるだろうな~」ということです。ここで少し話を変えまして、企業は赤字が数年続いた場合でも倒産しないケースが多くあります。企業が倒産するケースは、赤字が続くことも一つの要因となりますが、手元の現金がなくなることによって、倒産に追い込まれます。その為、企業は資金繰り表を運用し、資金が手元からなくなることがないよう努めます。
話を本題に戻しましょう。アパレル小売企業の資金繰りを改善する方法として、いくつかの方法が考えられます。まず、売掛金を減らし、買掛金を増やすという方法があります。 しかし、先述した例からも見られるように、支払いサイトの短縮化により、仕入先への支払いを遅らせることが難しくなっており、この方法は以前ほど効果的とは言えません。
次に、銀行からの融資という方法があります。 これは、企業の財務状況や信用力によって、実行できるかどうかが大きく左右されます。今回は私の専門外のため、詳細については割愛させていただきます。
そこで今回は、私が専門とする「在庫回転率の向上」について詳しくお話したいと思います。 在庫回転率を向上させることは、資金の効率的な活用につながり、ひいては資金繰りの改善に大きく貢献します。在庫回転率とは、一定期間内に在庫がどれだけ入れ替わったかを表す指標です。簡単に言うと、商品がどれだけスムーズに売れているかを示すものです。
在庫回転率の計算式を以下の通りです。
在庫回転率=(期間)売上原価÷(期間)平均在庫原価
です。この数式から考えると、売上原価を拡大させるか?平均在庫原価を抑えることで、在庫回転率の数値が向上することがわかります。では、それぞれに考えてみましょう。
・売上拡大
売上拡大をさせるには、売れ筋商品を産み出す必要があります。これは誰もが理解できることです。その為、アパレル小売企業は、売れ筋商品を産み出す為の努力は、どの組織でも行っています。このことに関しましては、感覚ではなく商品分析で補える部分もありますが、売れ筋商品を産み出す為に必要なことは何なのか?を、組織それぞれに考えてみましょう。
・売上点数を増やす
売上点数を増やす一番手っ取り早い手段は、商品の値下げを断行することです。特に商品の販売期間を過ぎても、在庫が残りそうな場合は、早めに値下げを断行し、商品をお金に変えるということを、MDは躊躇してはなりません。但し、値下げによって粗利益が下がりますので、売上・粗利率の目標値を決めた上で、値下げを断行するようにしましょう。
・リードタイム(以下LT)の短縮
商品を発注してから店頭に入荷されるまでの期間であるLTが短縮されれば、平均在庫原価を抑えることができます。しかし、海外生産に多くを依存するアパレル小売の現状では、LTの短縮は至難の業です。とはいえ、商品を分納で納品してもらえるよう交渉する(この方法を積極的に仕入先に強いるのは微妙(・_・;)、新しい仕入先を開拓するなどの余地も残されている可能性もありますので、仕入先の現状を今一度、再確認してみましょう。
・MD予算の作成
MDにおいて重要な”適量”の精度を上げる必要があります。それには、「売れる分だけ仕入れる」という、仕入計画における基本的なことを実践するだけでなく、商品分類別それぞれに、MD予算(売上・粗利・仕入・在庫予算)を、緻密に作成する必要があります。MDにとって、予算作成は、将来へ向けた目標を設定し、具体的な行動計画を立てるためのプロセスです。MD予算を具体的に作成することで、「どのタイミングでどの在庫をどのくらいの量持てばよいのか?」ということが、数値で明確に表現されます。予算作成を通して、目標達成に向けた具体的な施策を検討し、期中のリスクを事前に想定することで、より効果的な事業運営が可能になります。
(MD予算作成に関しましては、以下の私の連載を参考にしてください)
上述したように、支払いサイトの短縮で、今後資金繰りが悪化するアパレル小売企業が出てくる可能性が高いでしょう。だからこそ、現状の在庫回転率を少しでも高めるために、マーチャンダイジングの精度を上げることを実践して頂けると幸いです。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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