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上場アパレル小売企業の決算資料を参考に、私が個人的によく目にするMD改善策は以下の通りです。
❶ QR(クイックレスポンス)対応
❷ セールの仕組みを変える(気温対策)
❸ プロパー売りの強化
❹ 値入率向上による粗利率の改善
今回は、上記のMD改善策について、そのメリットとデメリットを詳しく検討してみたいと考えております。
QR対応が実現した場合の最大のメリットは、多くの在庫を抱える必要がないことです。 これにより、平均在庫原価を削減でき、在庫回転率の向上に繋がります。 QR導入により、初回発注量を抑えられるため、売れ行きが良くない商品が発生した場合でも、余剰在庫を最小限に抑えることができます。 さらに、在庫回転率の向上は、企業の資金繰り改善に貢献します。 しかし、現在の海外生産依存体制では、真のQRの実現は困難と言えるでしょう。 また、実現した場合でも、小ロット生産による原価上昇が懸念されます。 そのため、QR実現のための努力よりも、中長期的な視点で、どのようなMD体系を構築すべきか検討すべきです。
ここ数年の急激な気温上昇、特にここ数年の夏の暑さにより、従来のアパレル小売の商慣習では、お客様に「適時・適品」な商品を提供することが難しくなってきました。しかし、商業施設全体のセールスケジュールが大きく変わる状況ではないため、独自にセールスケジュールを変更するショップやブランドが増えています。このことによるメリットは、気温に合わせたMDをある程度実践できることです。デメリットとしては、商業施設のセール開始時期と合致しないことで売上が低下する可能性があります。商業施設よりもセール時期を遅らせることは、商業施設の集客力に頼ることができないため、独自に集客活動を行う必要があります。また、適時軸での商品分類が曖昧だったり、ECサイトと実店舗セールとの連携やルールを明確にしておかないと、在庫過多になるリスクが高まります。
このことによるメリットは多岐にわたります。一つは、セール規模の縮小による粗利率の最大化です。また、セールを行わなくても商品が売れるということは、お客様からショップやブランドに対する信頼が高まっていると捉えることができ、実現すれば大きなメリットとなります。しかし、このことを実現するためには、商品力自体の強化が不可欠であり、商品力向上に向けたあらゆる努力が必要です。
次にデメリットについてです。プロパー販売にこだわることで、売れ行きが良くない商品の価格変更判断が遅れる可能性があります。その結果、多くの余剰在庫を抱えてしまうケースも考えられます。特に、プロパー消化率をKPIとしている組織は注意が必要です。そもそも、割引クーポン券などを販管費に計上することで、数値上はプロパー消化率を上げることができますが、この指標はMDの実務においてはあまり意味がありません。自身の課題に早く気づくことが、優秀なMDの条件と言えるでしょう。売上、粗利率、在庫回転率といった目標達成のために、MDはどのような決断をすべきか常に意識し、行動に移すことが重要です。
値入率向上による最大のメリットは、高い粗利率を確保できる点です。MDにとって、可能な限り高い値入率を目指することは重要な責務の一つと言えるでしょう。また、ある程度の価格変更を行っても、一定の粗利率を維持できます。
しかし、高い値入率の確保が目的化してしまうと、商品品質の低下を招くリスクがあります。その結果、余剰在庫が増加したり、過度なセールを実施せざるを得なくなり、顧客からのブランドイメージ低下に繋がる可能性も否定できません。さらに、値入率向上にこだわりすぎるあまり、仕入先から必要以上の数量を求められ、結果的に余剰在庫が増加するリスクも高まります。
以上、私が個人的によく目にするMD改善策を検討してみましたが、如何だったでしょうか?
組織のMD改善に必要なことは、「このショップ・ブランドを良くしたい!」という”熱意”が最も重要だと考えます。 意識する点として、自組織の特徴を把握することが不可欠です。特に、長所と短所を具体的に把握することが重要です。 そして、常に店頭に足を運び、お客様と直接触れ合うことも重要です。 さらに、MDにおける事前の準備を徹底することが大切です。感覚に頼った安易なスタートではなく、具体的な計画を立て、緻密な準備を行うことが、アパレル小売のMD改善には不可欠である!ということを訴えて、今回の記事は終了です。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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