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ブランドとして「やらない事」を決める弊害

先日、Fashion Designers Accelerator Tokyoという東京都の支援事業の一環としてECの講義をして参りました。当日は、様々なジャンルのブランドのデザイナー様がご来場され、アパレルECの現状のトレンドから売上アップの初歩的なテクニックを中心にお話しました。講義後、数人の方とお名刺の交換とその間に少しお話させて頂いたのですが、やはり皆様個別の課題をそれぞれ抱えていらっしゃるようで、講義ではなるべく一般化された話をする一方、個別具体的な課題解決をするには不十分であると、いつも感じてしまいます。

筆者もEC歴に関しては今年で14年目くらいになるのですが、皆様の課題を聞いていつも思う事が、

「ブランドとしてやる事・やらない事を決めておく」

という事の難しさですね。特に感度を高く見せたいブランドでよくあるのが、見せ方を気にするあまり有効なアクションを打ちづらくなる、という現象です。これに関してはトレードオフの関係かと思うので、こだわるのは大いに結構ですが短期的な売上には結びつきにくいでしょう。「ブランディング」という観点で中長期的に見ればどうかはよくわかりませんが、それを計る指標が無いので如何ともしがたいのです。そんな訳で、見せ方を気にされるブランドが陥りがちな点と対策をいくつか挙げておきますので、やれるものは手をつけて頂けばと思います。

■タイトルが英字のみ

まずは商品や記事のタイトルが英字しか無いケース。確かに日本語に比べるとカッコいい(のか?)かもしれませんが、これにしておく弊害としては、

・お客様が読めない事がある

・サイト内検索がカタカナだとヒットしない

・title/descriptionが空だと検索エンジンでもクリック数減る

などでしょうか。見せ方を気にするあまり機会損失めちゃくちゃ多いです。せめてサイト内検索ではヒットするよう、商品説明文にはカタカナ表記や一般的なアイテムの呼称は入れておくべきですし、title/description(alt属性もですが)も同様、検索エンジンでもカタカナで検索する人が多いので対策しておいた方が良いでしょう。(空にしている場合、商品タイトルや説明文がそのまま反映される可能性が高いです。)特に卸や他社モール使っているブランドは競合に取られやすいですし、メルカリにもクリック取られてしまう事もあるので。

■着画がルックしか無い

続いてこちら。感度の高いブランドはシーズンルックは定期的に更新するのですが、それ以外の着画が無いケースがあります。シーズンイメージを象徴するルックは確かにとても重要ではあるのですが、それだけだと、

・服のサイズ/シルエットがわかりにくい

・モデルが外国人の場合は自分の着用イメージが湧きにくい

などの問題点が出てきます。スタッフコーディネート画像が重宝されるのはこのような理由もあるからでしょう。商品詳細ページの画像に着画を掲載する事で対策する事もあるかもしれませんが、独特なポーズや着こなしなどは掲載させず、サイズ・シルエットがわかりやすいものがオススメです。instagramのリールでショート動画撮影して、埋め込みコードを商品詳細ページに貼り付ける、という運用がお金もかからず良いのですが、ショート動画の時点で余計嫌がられそうです。

たまにスタッフコーディネートでも独特な着こなしを掲載されている事があるのですが、お客様が見たいのはそんなところではなく、自分の体型と同じくらいの人が着用した際のサイズ感やシルエットの見え方です。

余談ですが、筆者はSSENSEやFarfetchで商品を買う際、外国人モデルの着画のせいで何度かサイズ選びに失敗しています。着画モデルによってサイズの見え方は大きく変わるので要注意です。(「お前の経験値が足らんだけや」というツッコミはご遠慮ください。)

■新作入荷以外のお知らせが無い

お客様へのお知らせが「NEW ARRIVAL」しか無い、なんてことになっているケースもよく見かけます。もちろん、新作入荷がお客様にとって一番のイベントになっているのでしたらこんなに素晴らしい事はありません。しかし、それだけで売上が取れるか?と言われますと、大概のブランドにとってはそうでは無いのです。だからこそプッシュ回数を担保し、リマインドをしっかりしていく事が重要になるのですが、ここも見え方を気にされるブランドではNGとされるケースがあります。弊害としては、

・商品の見落としがある

・着用のイメージが湧かない

などでしょうか。お客様も、新作を全てしっかりと確実に目を通している訳ではありません。良い商品があるのに見落としているケースもあるので、リマインドしないと見落としが発生します。週に1〜2型程度しか発表しない、という事ならまだ問題無いかもしれませんが、売上規模が拡大するにつれて型数は増えていくので、その分見落としが多くなります。また、そのアイテムが自分のワードローブとして活用できるか?のイメージが湧かない事もあるでしょう。そんな場合、着用シーンと絡めて訴求するのが一番なのですが、それを嫌がられる場合もありますね。(メンズにはやや当てはまりにくいかもですが)「オケージョン」なんて一番わかりやすく、一番効果的な着用シーンなのですが、そのような服は作るがシーンごとに訴求しない、は普通に機会損失です。

また、「SNSでプッシュしていたら問題無い」と思うのも早計です。全てのユーザーがSNSから流入している訳ではありませんし、SNSで見やすいコンテンツとそうでないものがあります。ショップナウをタップせず、わざわざプロフィール欄のURLをタップするユーザーが多数な時点でそれは明白ですね。お客様は気になったら商品を一覧ページでさらっと見るという行動を取りがちですから。

お客様に煩わしさを感じさせずECからのプッシュを増やそう

(プッシュ回数の担保はこちらを参考に)

 

他にも「広告クリエイティブの選定」などは揉めやすい項目の一つですね。見せ方にこだわり過ぎるあまり、在庫量が手厚い・効果が見込める画像を使用しない事があったり…。もちろん、ブランド側が何を選択しようが自由なのでお好きなように運用して頂いたら良いのですが、「これをやらない代わりに売上は取りにくい」という事がわかった上でその選択をして頂ければと思います。

「カッコよく見せながら売上が取れる対策」

という都合の良いものは「商品力・MD強化」以外にそんなに無いので、まずはそれを理解した上でやる事・やらない事を決めて頂ければと思います。

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