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マーチャンダイジング(以下MD)の数字面の仕事を磨くには、上場企業の決算資料を読むことが有効です。しかし、決算資料は、心理的なハードルが高く、なかなか読み進められないのが現実です。そこで、Xで見つけた会計学のクイズを参考(パクリ?)に、決算数字を活用したMD向けのクイズを作成し、数字から読み取れる特徴について深く考えてみたいと思います。
今回のクイズの流れを以下にお伝えします。上場アパレル企業の決算資料から数値を読み取り、2種類の図を作成します。
図①:売上=粗利益+売上原価を記載した図
図②: 期首在庫+仕入原価=売上原価+期末在庫を記載した図
今回は、ファストリテイリングとバロックジャパンリミテッドの2社の図を作成しました。
以下のA・Bどちらの図がファストリテイリングの23年8月期、どちらがバロックジャパンリミテッドの24年2月期を示しているか、以下の図から判断してください。売上規模が異なるため、より分かりやすく比較できるように、数値の単位等を揃えて記載しています。
では、クイズのヒントをお伝えします。ファストリテイリングの主力事業であるユニクロは、トレンドに左右されにくいベーシック商品が多く、メンズの売上構成比が高くサイズ展開も豊富です。そのため、商品の販売期間は長いと考えられます。一方、バロックジャパンリミテッドは、レディースが主力業態で、トレンドを意識した商品が多く、商品の販売期間は短いと考えられます。また、ユニクロ・GUは低価格帯中心なのに対し、バロックジャパンリミテッドは中価格帯中心のブランドが主力となっています。これらのヒントを参考に、図Aと図Bのどちらがファストリテイリングを示しているか、考えてみてください。
読者の皆さん、クイズの正解はお分かり頂けたでしょうか?
正解は、Aがバロックジャパンリミテッド。Bがファストリテイリングです。
では、数字から見えるファーストリテイリングとバロックジャパンリミテッドの特徴を簡単にご説明します。
まず、売上と粗利益についてです。 両社とも自社企画商品が中心ですが、特にユニクロは低価格かつ高品質の商品を提供することで知られています。一般的に低価格商品で高品質に拘ると、値入率が低くくなる傾向にありますが、ユニクロはスケールメリットを活かして、年々値入率を向上させていると考えられます。しかし、19年8月期の粗利率は約48%、23年8月期には約52%と、バロックジャパンリミテッドが商品や商品以外の付加価値を提供することを重視していることを考えると、以前よりも値入率は改善されているとはいえ、バロックリミテッドジャパンほど高くないと考えられます。
次に、在庫についてです。図から算出した在庫回転日数は、ファーストリテイリングが約130日、バロックジャパンリミテッドが約80日でした。 (注:この数値はあくまで概算であり、実際の在庫回転日数とは異なる可能性があります。)バロックジャパンリミテッドはレディースが主力であり、トレンドサイクルが早く、サイズ展開も少ないため、1アイテムあたりの在庫金額が少なく、平均在庫金額も低いと考えられます。一方、ファーストリテイリングは商品の販売期間が長く、サイズ展開も豊富であるため、在庫回転日数が低いと考えられます。これらの数字から、ファーストリテイリングは低価格且つ高品質な商品の大量生産・販売を行い、スケールメリットを活かして利益を上げています。一方、バロックジャパンリミテッドは、トレンドに合わせた商品展開を行い、付加価値の高い商品を販売することで利益を追求していると考えられます。
今回のクイズはいかがでしたでしょうか?私の見解が全て正しいとは考えていませんが、読者の皆様が、決算資料に興味を持ち、MDの数字面でのスキルアップに繋がる一助となれば幸いです。次回のクイズは、今回出た反省点を修正し、お伝え出来ればと存じます。
今回の記事は以上となります。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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