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企業の部・課長クラスであれば、部・課の販管費を含む損益コントロールを行うことが求められるケースが増えてきています。これはアパレル小売業においても同様です。しかし、小売業、特にアパレル小売業の場合、損益に関する知識だけでは、部・課が日々の業務で実践していることが適切か否かを判断するのは難しいのが現状です。
特にアパレル小売業においては、売上だけでなく、粗利、仕入、在庫といった複数の要素を同時に把握し、それぞれがどのような状態にあるのかを具体的に分析することが重要です。これにより、（部・課が）抱えている具体的な問題点を明確化し、より効果的な問題解決に繋げることができます。このことは、私がマーチャンダイザーに向けて発信しているOTB表（売上・粗利・仕入・在庫表）を読み解く力を養う必要があることを意味します。
しかしながら、アパレル小売業企業の部長職においては、MD経験者はむしろ少数派であり、MD経験のない方が多いのが現状です（個人的には、販売経験を長年積み重ねた方が、部長職に就くことがベターだと思うので、MD職を経験していない方が部長になる傾向は、悪くないと思う）。したがって、損益を理解していても、アパレル小売業を運営する上で重要なOTB表を読み解けない人が多いのが現状です。それでは、今回の記事はOTB表を読む力を養うきっかけとなるよう、OTB表の読み解きポイントを解説します。
OTB表を読み解きポイントは以下の4つです。
〇予算比を見る
〇先数か月の見通しを数字で表現してから、現状を確認すること
〇売上のピーク月の前月末が、在庫のピークになっていることが理想
〇OTBの構造を正しく理解すること
では、それぞれに見ていきましょう。
最も簡単な方法は、売上だけでなく、粗利、仕入、在庫の予算を立て、その内容をOTB表に反映させることです。これにより、現在の状況を一目で把握することができます。それでも、部長クラスともあると、MD予算設計の良し悪しを見抜き、チェックをする必要がありますから、MD予算設計そのものを学ぶ必要があります。MD予算設計の詳細な方法を学ばれたい方は、私が繊研plusで連載している記事に記載していますので、そちらも参考にしてみてください。
算数で極める達人MDへの道《第2講》
（39講までありますm(__)m）
アパレル小売業の場合、リードタイムが長いため、数か月先の仕入が既に決まっている組織がほとんどです。そのため、数か月先の仕入見通しを数値で表現することは容易です。さらに、過去の売上実績や今後の販促スケジュールなどを考慮し、数か月先の売上・粗利を予測することで、在庫見通しを算出することも可能です。重要なのは、過去のデータや単月の数字にばかり注目するのではなく、数か月先の状況を数値で予測し、どのように改善できるかを考えることです。最低でも3か月先の数字は把握しておくべきでしょう。
以下はあくまで個人的な見解ですが、もし私がMDであれば、納期遅延を防ぐため、店頭展開の2週間前には商品が納品されるようなスケジュールを組むでしょう。このことを踏まえ、売上のピーク月の前月末に在庫がピークとなるよう、MD設計をします。このようにすることで、繁忙期の売り逃しを大幅に減らし、理想的な在庫運用が実現可能です。この点が重要です。しかしながら、セレクトショップの場合は、在庫のピークが売上のピークの数か月前に来てしまうこともありますし、仕入先の特徴によって、在庫のピーク月は変わる可能性もありますので、その点も同時に理解しておきましょう。
OTB表の数式ではなく、OTB表の構造を理解することこそが重要です。OTB表の構造を、図で表現すると、以下の図のようになります。
イメージとしては、この図の各項目のボックスに数値を入力していくと、全体像が把握しやすくなります。さらに、図の期首在庫（前月末在庫）と売上原価の数値を比較することで、「前月末在庫の金額は、当月売上原価の○倍」という関係性がわかります。この関係性を意識することで、在庫の状況をより深く理解することができます。（上記の図では、売上原価の2.5倍の在庫が前月末在庫の金額）
OTB表そのものを見る際は、以下の図の矢印の見方をすることがポイントです。
今回の記事はいかがでしたでしょうか。この記事を読んだだけで、すぐにOTB表を完璧に読み解けるようになるとは限りませんが、アパレル小売業に従事されている皆様の業務に少しでもお役に立てれば幸いです。
【（株）エムズ商品計画オフィシャルサイト】（株）エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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