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最近立て続けに数件、お話があったのですが、
「WEB広告費が今の費用で正解なのか知りたい」
というご相談。広告周りは本っっっっっっっっっっっ当に質問多くてですね…。理由はいつもお話している通り、広告代理店の出すレポートとGA4の数字が違うという点。(261948579847469回目)
これのせいか、
「経由売上は伸びているのにトップラインが伸びていない」
という感覚があるようで、それを検証してほしいという事らしいです。(間接効果までまとめて「コンバージョン」でレポーティングするからや…。)で、その上で最適な広告費を算出したいという事なんですが、結論から申し上げますと、
そんなものはない(三国志の絵)
のです。本日はその理由についてと、ではどうやって広告の予算決めたら良いのか?について筆者の経験した事を踏まえて個人的な考えを書いておきたいと思います。
いきなりハードなやつが来ましたが、一番簡単に広告費の予算を決めたいならまず今配信している広告を全部ストップしてください。以前そんなことを書いてある記事を見たことがありますが、中々勇気ある決断だったと思います。なんせ、確実に売上下がるので、その分の仕入れだとか物流の人員だとか様々なことが計算と違ってくる訳ですね。
で、筆者もこれと同様のケースにぶち当たった経験があるのですが、まぁわかりやすく売上はめちゃくちゃ下がりました。ですが、その際意外と利益率はそこまで下がらなかったんですよね。まぁ冒頭でも記載しました通り、広告費に疑問があるケースはトップラインが伸びていない時なので、こうなる事は多いような気はしています。
その後、徐々に徐々に広告費をつり上げていきつつ、営業利益の最大化を模索しました。結果として、年間で営業利益はめちゃくちゃ改善されたので、これはわかりやすい成功パターンだったのではないでしょうか。できればこのくらいの荒療治で調整するのが良いのですが、難しい場合は次の項目から進めて適正な費用を模索するしかないかと。
トップがこのような決断をしてくれるならやりやすいですが、売上規模が大きいほどこの手段は使えないでしょう。あと、これで全てが解決するか?と言われるとそうでも無いです。(必要だと思われる広告費は算出しやすいですが。)
では何故、先ほどの手法で問題が全て解決しないのか?ですが、アパレルECの広告の費用対効果なんて、商品が変われば大きく変わるので、身も蓋も無いですが超ヒット商品で広告回せばROAS(広告の費用対効果)は改善します。また、その時に打っていた他の広告施策(TVCMや雑誌掲載、著名人を起用したキャンペーンビジュアルなどなど)にも影響を受けるので、その時実施したWEB広告が「最適」だったか?なんてわかるはずが無いのです。
全く環境要因が同じだったならいざ知らず、毎年そのような環境で広告を回す事なんてほぼありません。強いて言うならユニクロくらいベーシックアイテムが多く、商品の販売期間が長いアイテムなら環境は似た感じになるかもしれません。それでも平均気温は毎年変わりますから、その要因で広告効果は変動します。
余談ですが、現場の方々がやる事やっていたとしても、環境要因が大きく変動した結果、どうしようも無い時はあるので、報道だけを見て「何で対策していないんだ?」と偉そうに言っている人は現場を知らないだけでしょう。皆さん、できる限りのことはやろうとしていますよ。
では広告費の最適化はできないのか?ですが、精度の高い目標設定が一番重要であり、それに対してWEB広告を使って達成できたのならそれで問題無いと考えます。
しかしここでよく発生するのは「ROASしか重視しない」なんてケースです。この場合、高い確率で新規獲得が鈍化していたりします。新規獲得を狙う際、ある程度のCPAの高騰はいたし方なく、ROASは当然悪化するのですが、変に費用対効果ばかり追い求めるとリターゲティング中心の広告に偏重してしまい、新規獲得が鈍化することが多いです。
顧客は一定期間で離脱するものですから、新規獲得サボっていると数年後に新規もリピーターも売上が減少している、という地獄の事態に陥りかねません。ブランドの方針次第ではあるので、既存顧客と長くお付き合いしていくというスタンスのブランドもあるでしょうし、それで上手くいくケースも見たことはあるので、一概に「新規獲得が絶対」とは言いませんが、長い期間で見たら鈍化するケースの方が多い気はしますね。
まぁそんな訳で適正な目標設定を作成する必要があるのですが、一部は以前にも書いてましたね。
手順は下記のような感じでしょうか。
これは過去データから算出できますね。単純なCPAの計算などですが、Shopifyなら広告経由で新規・リピーターがどの程度獲得できたか?まで細かく追えるので計算がめちゃくちゃしやすいです。
次に顧客の離脱の確認ですが、これは直近1年の購買頻度別の売上を確認してください。
このデータを数年単位で見ておりますと、どのくらいの顧客がどの期間に離脱しているのか?が大体わかります。そこから新規でどれくらいリカバリーしたら良いか?を算出します。
最後にこちら。もちろんPLの作成は必須ですね。売上目標自体は会社が作成しているでしょうから、そこから想定される粗利・販管費を設定。営業利益が減少する理由は広告費だけではありませんが、それもPLを細かく見れば比率の判断は可能でしょう。広告効果はセール施策の影響も受けますから粗利率の変動と合わせてみておきましょう。
とまあ、ここまで設定しても商品軸が課題で予測が狂うことは当然あります。なので、期中に入ってからやるべき事としては、
「比較的当たりの良い商品の露出を増やす」
「当たりの悪い商品は情報を改善する・値引きする」
などが随時求められる訳です。なので、先述しました
「商品にあまり変化が無い」
「施策がルーティン化されている」
ブランドほど予測はしやすいでしょう。
あと、大前提として精度が高いMDを設計していたら当然広告効果は良くなります。悲しいお話ですが、我々EC側が実行する施策より、
「当たりの良い商品を開発する」
「当たりの良い商品・カテゴリーの仕入れを改善する」
方が売上インパクト大きいです。
業界経験が無い・普段から身銭切って大して服買っていない人たちの売上対策は主にWEB広告の出稿・CRM分析あたりに偏重し、商品軸のお話が出てこないのですが、お客さんがその商品を本当に欲しいと思っていないのにWEB広告で接触頻度だけ増やして売れるようになる訳ないんですよ。そんな方々がアパレルECで分析・売上対策の発信やセミナーみたいな事しているのを見る度に、「その前に服くらい買えよ」って思いますね。
期中に入ってからの広告施策は「比較的当たりの良い商品」を探す事が重要なお仕事になりがちですが、売れる商品なんて大概初速でわかるので、初速が悪い時点で露出を強化してもそれほどインパクトは無いのです。「やらないよりやる方がマシ」だから当然やりますし、優れた商品開発や大きめの販促を実行した際の効果を最大化する為にWEB広告はとても重要な手段です。そんな訳で、広告費に関しては最適解を探すのではなく、目標に到達するにはどうすれば良いか?を前提に考えてみてはいかがでしょうか。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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