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古着ビジネスの持続可能性:感性とそろばん、二つの視点が導く持続への道

★2025年1月4日、下北沢の古着屋を廻った時の話し

2025年1月4日、初詣の帰りに下北沢に立ち寄りました。下北沢は若者や観光客で賑わっており、活気に満ちていましたが、特に驚いたのは古着屋の多さでした。コロナ禍前の2018年頃から下北沢では古着屋が増加傾向にありましたが、コロナ禍が明けた現在も、その勢いは衰えず、むしろ増えているように見受けられました。(日本の古着カルチャーの歴史は、以下の記事をご覧いただけると良いです。1990年初頭から古着を買い続けている私も大凡納得の記事です。)
日本古着カルチャー史から紐解く、ヴィンテージ市場のこれから

若い頃から古着を集めるのが趣味なので、1月4日は多くの古着屋を見て回りました。結果、購入には至りませんでしたが、その中で気になったのは、各店の売り方でした。1月4日という時期的な要因もあるかと思いますが、派手なセールを行っている古着屋が多く、中には○○円でかご詰め放題という販売方法をとっている店もありました。このことを、私の専門分野であるマーチャンダイジング(MD)の視点から考えると、資金繰りに苦労している古着屋が多いのではないかと考えられます。

★商品の「目利き」と店の「スタイル」

ここで少し話題を変えますが、1990年代初頭から古着を買い続けている私の主観では、古着屋を長く続けるには、商品の「目利き」と店の「スタイル」が不可欠だと考えています。商品の「目利き」を磨くには、古着屋での下積み期間を経験した方が有利に働きますし、ファッションビジネスの経験も同様です。特に自身の「ファッション感度」に自信がない場合は、商品分析の精度を高めることで、「目利き力」を補う方法もあります。また、私の専門分野である在庫管理を含むマーチャンダイジング(MD)を学び、活用することも有効です。古着屋に適したMD体系(緩くてもよい)を確立することで、資金繰りの悪化を防ぐ可能性が高まります。更に言えば、店の「スタイル」を確立するには、豊富なファッション知識や多くの買い物経験が求められるでしょう。
話を戻しますが、1月4日に下北沢で見かけた過度なセールを行っていた店からは、独自の「スタイル」を感じ取ることはできませんでしたし、商品の「目利き」も良くないのでしょう。付け加えると、ファッションビジネス経験が少ないと推測されることから、買い手目線での「適価」の設定が出来ず、むやみに在庫を増加させる結果となっているのでしょうし、商品を叩き売りしてでも現金が必要となるのではないでしょうか。(もちろん、セール自体を否定するわけではありません)

★古着屋を続けるには「感性」と「そろばん」の両立が必要

親しい古着屋の店長から最近の古着屋事情を聞いたところ、現在の古着屋は昔と異なり、バイヤーが直接海外へ買い付けに行くことは少なく、ディーラーを通して仕入れを行っている店が多いとのことでした(親しい古着屋の店長は、年6回前後海外に買付に行っている。コロナ禍の時も、隔離されることを前提に買付に行っていた)。当然ながら、ディーラーを通すと仕入れ値はその分高くなりますし、古着屋の数が増えていてもディーラーの数はそれほど増えていないため、後発の古着屋は良い(売れそうな)商品を仕入れるのが難しくなります。そのため、独自の「スタイル」を確立するのが難しくなっているのかもしれませんが、この記事でご紹介した記事で以下のように述べられています。

古着人気が拡大すると共に、「ヴィンテージの概念」も以前より増して拡大していった。それまではヴィンテージ的価値を見出されていなかった古着も「ニューヴィンテージ」や「ネクストヴィンテージ」というネーミングのもと、注目を浴びるようなった。その代表例が、米大手SPA「ギャップ(GAP)」だ。近年、1990年代のギャップのアイテムは「オールドギャップ」と呼ばれて高値で取引されているが、それまでは付加価値がなかったので、ワゴンセールの常連的な存在だった。以前はファッションアイテムという認識がほとんどされていなかったアニメTシャツも、古着として人気を集めるようになった。

このことからも、発想や視点を変えれば、独自の古着の「スタイル」を確立させることも可能な筈です。

古着屋を長く続けたいと考えるのであれば、商品の目利き力やスタイルの確立といった「感性」を磨くだけでなく、商品分析や仕入・在庫管理といった「そろばん勘定」も重要です。古着屋の場合は、古着屋にあった緩い商品分類・分析でも十分に効果は上がりますし、バイイング活動をする際の重要な切り札となる筈です。昨今、古着屋が増えすぎているのではないかという思いもありますが、それだけ古着を通してファッションに興味を持つ若い世代が増えることは、ファッション業界にとって好ましいことです。この記事が、古着に興味を持ち、ファッション業界の仕事に携わる、または携わりたいと考えている多くの若い世代の役に立てれば幸いです。

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