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マーチャンダイザー(以下MD)の仕事は、「お客様の欲求・要求に適う商品を適切な数量・価格・タイミング等で提供すること」だと言われています。MDは、この仕事を通じて、主に以下の2つの目標(予算)を達成することが組織から求められます。
●売上・粗利益をより多く獲得すること
●目標の在庫回転を達成し、組織のキャッシュフローの効率を上げること
しかし、たとえ売上・粗利益の予算を達成できたとしても、在庫金額が大幅に増加し、在庫回転が悪化してしまうと、組織には悪影響が出ます。たとえば、以下の図に示すように、ショップの売上・粗利益が同額であっても、在庫回転率(日数)の違いで、組織の手元に残るお金は大きく変わってきます。特に、過剰な仕入れによる在庫増加は、組織のキャッシュフローに多大な悪影響を及ぼすことになるため、注意が必要です。
それでは、組織の在庫回転率(日数)を向上させるためには、どのようなことを意識し、実践すべきでしょうか。その前に、改めて在庫回転率(日数)の計算式を確認しておきましょう。在庫回転率の計算式は?
〇在庫回転率=(期間)売上÷(期間)平均在庫
となります。上述した計算式に、原価を当てはめるのが一般的です。在庫回転率を向上させるには、そもそも商品が売れなければ意味がないという前提はありますが、売上原価を増加させるか、平均在庫原価を減少させることが、在庫回転率を向上させるポイントです。
〇売上原価をアップさせる手法
・ヒット商品を産み出す(これが一番大事)
・値下げをして商品を売る(粗利を犠牲にする)
等の方法があります。
〇平均在庫原価をダウンさせる方法
・リードタイム(以下LT)が短く、細かく追加発注ができる
・商品の販売期間を短く設定する(商品がある程度売れることが前提)
・オーバー仕入をしない(仕入予算設定と期中の仕入コントロール)
等の方法があります。
しかしながら、視点を変えると、在庫回転率を上げることだけに注力すると、上述した方法にもデメリットが生じる場合があります。例えば、値下げ販売が増えたり、値下げ幅が大きすぎたりすると、粗利益を必要以上に損なうことになります。さらに、商品の販売期間を短くしすぎると、1アイテムあたりの必要数量が減り、販売機会の損失につながります。付け加えると、値入率の減少(原価率の増加)を招き、結果として得られる粗利益も少なくなるというリスクをはらんでいます。
それでは、以下で在庫回転目標を達成するために重要なことをお伝えします。
〇事前準備として意識すべきこと
・自分たちのブランド・ショップのコンセプトを深く理解し、顧客像を具体化し、顧客の購買行動を把握しておくこと。
・リードタイムの長さやミニマムロットなど、仕入先の特徴を正確に理解すること。
・コンセプトや仕入先の特徴を考慮し、どの時期にどのくらいの在庫を持ち、いつまでに在庫をなくすのかというストーリーを具体的に設計・策定すること。
〇MD予算の策定
・月別の売上、仕入、粗利、在庫の予算を詳細に策定(このことで在庫回転予算が策定出来る)。→出来れば組織の稟議を通すイメージ
〇期中における対応
・不振商品への気づきを早めること。
・セールをためらわないこと。
・在庫だけを意識するのではなく、OTB(Open to Buy)のロジック(計算式)を理解し、売上・粗利・仕入・在庫を一貫して管理すること。
これらの点が非常に重要です。MD(マーチャンダイザー)はその業務を通じて、売上・粗利益の最大化を目指すべきなのは間違いありませんが、組織が目標とする在庫回転率を達成することもまた重要です。今回の記事はこれで終わりです。本記事が、読者の皆様のお役に立てたなら幸いです。
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