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最近、POP UPショップの在庫の持ち方についてご質問をいただくことが増えました。そこで今回の記事では、この在庫に関する考え方をお伝えしたいと思います。
POP UPショップを開催するブランドやショップは、卸売を主体としたブランドや、EC専業のブランド・ショップが多いようです。開催目的は、ブランドやショップの認知度向上とEC売上の拡大、あるいは将来的な直営店舗出店など様々でしょう。しかし、複数店舗を運営していない組織の場合、物流センターから毎日商品が補充されることは稀です。そこで本記事では、POP UPショップ開催期間中の在庫は、営業開始前にすべて準備するという考え方で話を進めていきます。
POP UPショップの在庫に関して、結論からお伝えしましょう。基本的な考え方は「売れる分だけ在庫を準備する」です。たとえば、以下のようなショップがあったとします。
(例)
・POPUPショップの期間は1週間。今回は値引き販売はしない。
・売上予算300万円 粗利率予算60%(粗利高予算180万円)
上記のケースでは、売上原価が120万円ですから、その分の在庫、つまり原価120万円分の商品を準備すればよいということになります。この計画がうまくいけば、POP UPショップの終了日には、店舗に商品が一つも残っていない状態になるはずです。
しかし、この考え方でPOP UPショップを運営すると、デメリットもあります。もし想定よりも多くのお客様が商品を手に取ってくださった場合、売上・粗利予算分しか在庫を用意していないため、POP UPショップの会期終了を待たずに商品が完売し、販売機会を逃してしまう可能性があります。また、別の視点から見ると、POP UPショップの会期後半には、在庫が欠品する商品が増える可能性があります。こうなると、販売機会を逃してしまい、結果的に売上低下を招き、売上や粗利の目標が未達成となるケースも考えられます。したがって、先ほどのような販売機会の損失を防ぐためには、売上原価予算以上の在庫を用意する必要があります。そこで、ここからは売上原価予算に上乗せする在庫の考え方をいくつかご紹介致します。
まず、店頭陳列分の在庫金額を上乗せするという考え方があります。この考え方の基本は、POP UPショップ会期終了後も、会期開始時と同じ陳列を維持できるようにすることです。具体的な方法としては、まずPOP UPショップ開催前にショップの平面図を作成し、商品をどのように配置するかを決めます。次に、その配置に基づいて必要な商品数を算出し、最後にその商品の原価を計算します。この計算された原価分が、上乗せする在庫原価となります。
この考え方を用いる際に注意すべきなのは、すべての商品が均等に売れるわけではないという点です。そのため、上乗せする原価分を各商品に均等に割り当てるのではなく、売れ筋商品や「見せ筋」となる商品を見極め、それぞれの商品の数量にメリハリをつける必要があります。
次に、売上原価予算の数日分を余分な在庫として確保するという考え方があります。例えば、先に紹介したショップの場合、POP UPショップ7日間の売上原価予算は120万円でした。この場合、120万円を7日で割ると1日あたり約17万円になります。この約17万円分を余分な在庫として追加する、といった考え方です。1日分の売上原価予算を追加在庫として確保すれば、POP UPショップの会期中に商品が完売した場合、約343万円(売上予算の約114%)の売上を達成できる可能性があります。また、この考え方の場合でも、各商品の数量にメリハリをつけることは同様に重要です。付け加えると、1日分の売上原価予算が上記①のケースよりも少ない場合は、売上原価予算の2日分を余分在庫として持つなど、柔軟に対応しても良いでしょう。
POP UPショップの在庫の持ち方についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。POP UPショップを成功させるには、具体的な事前準備が非常に重要です。また、POPUPショップの活用・運用は、ブランド・ショップそれぞれに目的があるとは思いますが、私から言えることは「ご利用は計画的に!」(消費者金融のCMみたい(笑))ということをお伝えして、今回の記事は終了とさせていただきます。
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