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EC×MDの連動に関して~損益計算書編~

★ECにおける損益計算書の重要性

私はマーチャンダイジングを専門としており、ECの専門家ではありませんが、このサイトに毎週記事を寄稿していただいているECの専門家、深地さんから、ECを円滑に運営していく上で、損益計算書(P/L)を理解することの重要性を教わりました。深地さんから教わったEC運営における損益計算書の重要性を、私なりに解釈すると、主な理由は以下の2点になります。

1 値引き施策の多用
→(ECでは)ポイントやクーポンを活用した値引き施策が売上アップのために頻繁に行われる
→在庫消化店舗としての位置づけ(販売期間が終了した商品も継続して展開可能。キャリー品消化にも活用できる)
2 SNS広告と売上直結のしやすさ
→施策にもよりますが、ECではSNS広告などの施策が売上に直結しやすい

つきましては、今回の記事では、EC運用における損益計算書理解の重要性を、MD視点でお伝えします。

★損益計算書の構造

損益計算書の構造は、以下の図でご確認ください。

上記の図をご覧いただければお分かりのように、損益計算書の構造自体は決して複雑ではありません。しかし、読者の皆様に特にご理解いただきたいのは、本業の儲けである営業利益の計算式は「売上 − 販売費及び一般管理費」ではなく、「粗利益高(売上総利益高)− 販売費及び一般管理費」によって算出されるという点です。 この重要なポイントをご理解いただいた上で、話を先に進めていきましょう。

1 値引き施策の多用

まずは値引き施策についてです。セールなどの値引き施策を活用して商品が売れると、必然的に粗利率が低下し、粗利益が減少します。特にMD視点では、この粗利率の低下がどれだけ最終的な利益に影響するかを常に考慮に入れておくことが重要です。なぜなら、仮にセールなどの値引き施策で売上目標を達成できたとしても、値引き率が大幅な粗利率の低下を招き、結果として粗利益が減少し、赤字になってしまうケースもあり得るからです。以下の図をご覧ください。

セール施策などで粗利率が下がると、同じ粗利益高を確保するために達成すべき売上目標のハードルは大きく上昇します。商品の売価変更の権限は原則として MD側にありますが、ECの場合は値引きクーポンなどの発行を独自で行えるケースもあります。したがって、値引きを実施した際は、粗利益高の目標達成のために、その分だけ売上目標も同時に引き上げられることを、十分に理解しておく必要があります。

2 SNS広告と売上直結のしやすさ

深地さんから教えていただいた、一般的な自社ECの販管費の内訳をまとめた図が以下になります。

この図からすぐにわかる特徴として、自社ECは実店舗よりも広告宣伝費率が高いことが確認できます。
(*上記の数字は、あくまで一般的な数字とされるものです。当然諸事情により、数字は変動します)
先に述べたように、ECではSNS広告が売上に直結しやすく、実際には多種多様なツールが存在しています。EC担当者がこの点で理解しておくべきことは、広告宣伝費に対して、どの程度売上をアップさせなければならないのかを正確に把握することです。では、架空のショップを例に取り、これまでに述べた点を具体的に考えてみましょう。

架空ショップAのX月の予算
・売上予算: 500万円
・粗利率予算: 60%→粗利高予算300万円
・広告宣伝費予算: 50万円(広告宣伝費率10%)

このようなショップがあったとします。このショップのEC担当者は、更なる売上向上を目指し、広告宣伝費を20万円増額することにしました。この場合、利益を維持するために、どの程度の売上アップが必要となるでしょうか?
→20万円(追加広告宣伝費)÷60%(粗利率)≒33.3万円
計算の結果、約33万円(20万円 ÷ 60%)の売上アップがあって初めて、この増額分の収支はトントンとなります。そのため、この約33万円を超えるプラスアルファの売上アップがなければ、追加した広告宣伝費は利益に貢献しないということになります(因みに、販管費率10%は堅持するとなると、200万円の売上アップが必要)
さらに、広告宣伝費の増額分をクーポンなどの値引き施策と組み合わせて実施する場合は、より一層の売上向上が必要となります。仮に架空ショップAの粗利率が50%に低下したと仮定し(その場合、粗利高の目標を変えなければ、売上予算は600万円となる)、広告宣伝費を20万円増額した場合、この20万円の費用を賄うためには、40万円(20万円 ÷ 50%)の売上アップが必要となり、収支がようやくトントンとなります。したがって、40万円を超えるプラスアルファの売上を達成しなければ、この増額分は利益に繋がりません。

★売上至上主義ではいけない?

今回はEC担当者向けに、MD視点での損益計算書の重要性をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。アパレル小売業界では、売上至上主義に陥りがちな傾向があります。そのため、値引きの影響や販管費増額の影響を加味せずに、売上目標のみを追ってしまうケースが散見されます。このような「売上は上がったが利益は出ていない」という事態に陥らないよう、本記事が皆様の健全なEC運営の一助となれば幸いです。

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