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マーチャンダイジングの「5適」の一つに、「適所」という考え方があります。私のMD講義では、「適所」が持つVMD的な側面には深く踏み込まないようにしていますが、ブランドコンセプトから想定される顧客層が多く存在する場所に出店することも、「適所」のもう一つの側面として重要だと考えています。これは私自身の経験からも言えることですが、たとえばレディースショップしかないフロアにメンズブランドを出店しても、目標売上を達成するのは困難だからです。
さて、ここで話題を変えさせていただきます。最近、私は出張で関東以外の郊外型大型ショッピングモールを複数店舗訪れる機会がありました。その率直な感想ですが、衣料品フロアは、東京資本の比較的規模の大きな企業が運営する低価格帯のショップが大半を占めており、どのモールも似たような印象で、それはまるで金太郎飴のようでした。特に気になったのは、実売時期にもかかわらずセール商品を前面に出しているショップが複数店存在していたことです。これは、「郊外のお客様は、安い価格を訴求すれば売上に繋がりやすい」という、ある種の安易な姿勢の表れだと感じました。ただ、そのような中にあって、際立って全く違う見え方をするショップも複数店ありました。そのことが気になり関係者に話を伺ったところ、そのショップの大半が地元の企業によって運営されていることが分かりました。
地元の企業が運営するショップは、東京資本の大規模な企業が運営するショップに比べると、どうしても商品の価格帯は高くなりがちです（店舗を多く展開できない場合が多く、商品の必要数量が少なく原価が下がりにくい等の理由がある）。それにもかかわらず、郊外であっても非常に丁寧な店づくりがなされており、私はとても好感を持ちました。しかも、売上面でも大いに健闘しているとのことでした。私自身の経験からも言えますが、郊外だからといって、全ての人たちが「低価格」を好み、ファッションに全く興味のない人ばかりではありません。むしろ、都心に買い物に行けない環境にあるからこそ、より深くファッションに興味を持っている層が、多くはないものの一定数存在します。そのようなお客様は、一度ショップのファンになると、優良顧客としてリピーターとなり、他のお客様よりも高い客単価も期待することができます。加えて、地元の企業が運営するショップが強みを発揮しやすいのは人材面、特に販売員のきめ細やかさです。なぜなら、東京の大企業に比べ、良い意味でVMD指示等の縛りが少なく、地域に根ざした店づくりや接客をしやすい環境にあります。また、人事異動も大手アパレル企業に比べれば少ないと考えられ、その結果、販売員自身に固定客がつき、安定した売上を期待することも可能となります。
昨今、アパレル業界でも「地方創生」が謳われ、様々な取り組みがなされていますが、残念ながらそれらは効果的な施策のようには思えません。また、大型ショッピングモールのディベロッパーも、地域の特性を考えているというよりは、「東京の人気ショップ」ばかりをリーシングの中心に据えているように感じます。しかし、先述したように、地方には地元のことを第一に考えた、規模は小さいながらも確かな魅力を持つアパレル小売企業が多く存在します。だからこそ、地方に多く存在する大型ショッピングモールのディベロッパーには、東京の人気ショップばかりを集めるのではなく、その地域の特性を意識し、お客様が真に喜ぶ「適所」のショップを選ぶことを強く意識するべきだと考えます。私は、こうした取り組みこそがその地域にとっての「地方創生」に繋がるのではないか？と訴え、今回の記事の結論とさせていただきます。
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【（株）エムズ商品計画オフィシャルサイト】（株）エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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