メールマガジンを登録していただくと、セミナー・イベント開催のお知らせやブログの更新通知をお届けします
多くのアパレルでは店頭で売上の分析をする際、「フリー客」と「顧客」の割合は集計している事でしょう。この割合、当然ながらブランド属性によって大きく変わってくるかと思います。百貨店に出店しているような中価格帯から高級ブランドでは、顧客の顔を思い浮かべながら新シーズンの発注をする事もあるでしょうけど、量販店のようにマスに訴求するブランドでは、同様の事は不可能でしょう。
店頭におけるフリーと顧客の割合にはブランドによってばらつきはあるものの、大切な数値である事には変わりありません。顧客も永遠にその店舗でお買い物してくれる訳でもなく、数年で入れ替わったりするものです。つまり店頭においてフリー客というのは、今後の成長のバロメーターになります。これは店頭経験者であればよくご存知の事でしょう。
ECでも店頭と同様、新規獲得が減少してくるとサイトの成長性に陰りが見えてきます。例えば「新規セッション率」が非常に低いECは要注意です。
新規セッションは過去2年間、サイトに訪れていないユーザーからのセッションを計測していますが、それが鈍化しているという事はトラフィックを主にリピーターに頼っているという事です。そういう状況に陥っているサイトにはある共通点があります。それは、
「集客をリスティング ・ディスプレイ広告に頼りきっている」
状態です。これは、EC支援系の会社が提案する集客施策が、Web広告に偏重している事が原因です。
・コンテンツマーケティングで見込み客を検索から獲得
・ソーシャルを運用して新規獲得を強化
なんていう提案は非常に少ないです。コンテンツSEOもソーシャルメディアマーケティングも、専門性が高い割りに売上に即効性が無い場合も多く、短期的にブランド・EC支援会社の売上が上がったように見せるにはリスティング ・ディスプレイ広告が手っ取り早いのです。(ソーシャルはすぐ売上が上がるケースもありますが)
広告施策でコスパを上げようと思ったら、過去Webサイトに訪問したユーザーに広告を見せて再訪させるのが効率が良いです。これを繰り返すとROAS(Return On Advertising Spend)が良くなる訳ですね。
※ROAS…かけた広告費に対して得られた売上を%で表したものです。
結果、リターゲティング中心になり新規ユーザーの流入の割合が下がる、という事です。並行して新規流入を増加させる施策を打っていればいいのですが、結構な割合でそれをしておらず、気がつけば新規セッション率が非常に低い、成長性の低いサイトになっているのです。
ECの世界では認知度の高いブランドの事例がよく語られがちですが、そのようなブランドは新規獲得コストが初期必要無く、認知している人たちをWeb広告で誘引するだけで売上が取れました。しかし、今やWeb広告のCPAはリアル店舗より高いのでは?なんていう議論が出てきています。
リアル店舗なら、ブランド認知が無くともふらっと入ったお店で販売員さんの接客を受け、商品のシルエット・素材感を含めたデザインを見て購入を決める事があるでしょうし、それがきっかけでファンになるかもしれません。これとまだ似たような効果を期待できるのがソーシャルメディア、特にInstagramでしょうか。D2Cブランドがこれだけ持て囃されているのも、Instagramを利用しての新規獲得コストが今までのWeb広告と比較すると格段に安くなったからでしょう。
しかし大手でもまだまだソーシャルが手付かずなブランドは多々あり、今だに集客をリスティング ・ディスプレイ広告に頼りっきりだったりします。とは言え、他社のアクセスデータを見れる機会もそうそうありませんから、何が新規獲得に繋がっているのか想像もついていないのかもしれません。
大手の事例を見ていますと、バーチャルフィッティングや店頭受け取り・試着サービス、チャットボットなどなど、実装している機能は非常に豊富です。しかし、実はもっとお金をかけずに売上が上がる、もしくは利益率が上がる方法はあるかもしれませんし、手を付ける優先順位についてはしっかりと精査して頂きたく思います。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
小売ビジネスに関するMD(品揃え政策)アドバイス・サポートを
ご希望の方はお気軽にお問い合わせください。