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アパレルECを生業にしている方々、今年度上期はECの業績が全体的に前年度を大きく超えていかない。もしくは前年を割る、という事態を想定しているのではないでしょうか?筆者がここ最近でご相談を受けた案件や、既存クライアントの数字を追っている際に、これらの動きが4月くらいから完全に顕在化してきております。
昨年の4月と言えばちょうど1回目の緊急事態宣言が出たタイミングであり、店頭が一斉に閉まった時期でもあります。直近の緊急事態宣言でも同様ですが、店頭が閉まると在庫を倉庫に戻し、その在庫をECで販売するという措置を取ったブランドばかりだったのではないでしょうか。(ECモールに在庫を送ったブランドも多かったと思います。)上場企業の月次報告でも前年を割る企業が増えている中、何故前年を割るような事態になっているのか少し検証してみました。
店頭が閉まれば、店頭顧客がECで買う確率は上がりますし、在庫が増えればその分ヒットする確率も上がります。おうち時間が増えたことでソーシャルの閲覧時間も格段に増え、接触頻度が上がっていつもよりEC売上が伸びる。在庫をはかないといけないのでクーポンの割引金額も上げ、セールは前倒し。これが昨年起こったことだと思われますが、それに対し今年度は4月末からはともかく、それまで一応店頭は開いていました。また、5月でも全店が完全に閉まっていた訳ではなく、肌感でも昨年と比較して開店していたショップはまだ多かったように思います。仕入れも絞った、というブランドもあるでしょう。
結果として前年と比較するとリピート率やCVR(買い上げ率)・客単価やセット率が下落したブランドが多く出てきました。セッションは落ち込んでいないのに売上は下がった、というケースもよく見かけますね。しかし、ずっと同じような施策をルーティンで回しているブランドは2019年と比較するとCVRや客単価が戻った、というだけで大きく落ち込んだということではないようにも思います。(施策によって変動します。)ですから「昨年が良過ぎた」と捉える方が正しい認識なのではないかと。
このような状況でも例外があるとするなら、「ブランドが成長過程にあり、需要自体が伸びている」「またはEC売上の伸び代が大きく、まだ既存顧客を取り込みきれていない」というケースでしょうか。(採算度外視で広告費使いまくっているショップは外します。)既に成熟したショップ・ブランドなら難しいでしょうけど、新規獲得がどんどん進んでいるブランドやショップであれば前年を超えることも可能でしょう。これは単純に施策やEC周りが優れている、というよりブランドの実力の問題ですね。こんな時期でも小規模ながら年商をどんどん伸ばすインフルエンサーブランドもありますが、ソーシャル起点でファン獲得出来ているからというのが理由だったりします。むしろ、規模感が大きいところは多店舗展開しているブランドが多いでしょうから、店頭が閉まると新規獲得の為の施策は打ちにくいですね。(もちろん、昨年から自社の弱点を補強し、計画的に数字を伸ばしたブランドがあるのも事実ではありますが。)
ではどうすればいいか?なんですが、昨年のように上がり過ぎたリピート率やCVRは期待せず、直近の数字から予測を立てることをお勧めします。その上で、現時点で自社の弱点はどこなのか?を洗い出し、中長期的視点でそれらを育てていくのが望ましいでしょう。ちょうどセール時期なので、各社早い段階でのプレセール・本セールの開催、または大幅な値引き施策を強化しています。直近はこれで凌ぐとは思いますが、値引き施策を連発してしまうとそれでしか売れないECサイトになってしまいます。まずは現状把握と、焦り過ぎず流入経路の中でどれを優先的に育てていくかの計画立案が急務です。
これ、実は昨年からもうわかっていたはずなんです。どのチャネルが弱いか、なんてデータ見ればすぐわかります。過去データから、
「ソーシャル経由のCVRが高過ぎるから、次年度に向けてセッションを常に伸ばせるようにしておきましょう。」とか、
「リピート率はかなり高くなってますが、新規会員獲得が鈍化していますから対策しておきましょう。」とか、
普段からしっかりデータを検証し、KPI設定して見ておけば対策は出来たはずなのです。「分析不要!」とか言ってたら足をすくわれます。外的要因によって上がり過ぎた数字は「棚ぼた」であるということを理解し、少し遅いかもしれませんが秋冬に向けて自社の弱点補強に注力して頂ければと思います。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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