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専門学校の商品力について

専門学校の講師を始めて、今年で10年程度経ちます。10年も講師をしておりますとそれなりに専門教育まわりに詳しくもなるのですが、いつも思うのが「専門学校の商品力」についてです。

※あくまで非常勤講師として勤務した筆者の主観に基づく内容です。

◯入学の決め手となるもの

非常勤講師でも入学前の学生とお話する機会、というものがあるのですが、学生の入学の決め手となりやすいのは「認知度」「権威性」「活躍する卒業生」「学校の規模感・設備」あたりでしょうか。自分が学校を選択する時にも経験があるのですが、実際に授業を複数回受ける前から「カリキュラム」の内容や質を判断する力は無く、「なんとなく凄そう」という雰囲気を醸成するものがポイントになりやすいです。早い学校は学生さんが高校1年生の頃に「ガイダンス」と呼ばれる、高校内で開催される説明会に赴き、学校の説明をざっくりした後に個人情報を取得。その後、オープンキャンパスに誘引し入学を促進していますので、そこで見聞きする「なんとなく凄そう」という雰囲気は馬鹿にできないものです。

◯入学後の「満足度」は何が要因か?

しかし入学後の満足度は全く違うところで判断されます。それこそが「カリキュラム」「講師の質」「講義内容」あたりです。事実、とある関西大手の専門学校ではアンケート結果で講義内容の不満足度が非常に高い、というご相談を受けることもありました。つまり営業面で見た時と、学生満足度で見た時で「商品力」が大きく違ってくるのです。

そして、後者の商品力を担保する力において、専門学校間、もしくは学内のコース間でさえ大きな差があると考えております。筆者はビジネス関連のコースしか受け持ったことがありませんが、10年間で計5校の専門学校にて年間を通した講義経験があります。その経験上では商品力を担保できているコースはごくわずか、という印象です。

つまり現状、学生は学校の設備や認知度・権威生によって入学を決め、講師の質によって失望し卒業していきます。(もちろんそうでない一部のコースも存在します。)

◯商品力が担保されにくい要因

では何故、この商品力は担保されないのでしょうか?原因は大きく2つあると考えております。一つずつ見ていきましょう。

①学校側に講師をジャッジできる力が無い

まず、筆者が講義をしていた専門学校ではどこでもそうだったのですが、中で働く専属の講師は卒業生の比率が圧倒的に高く、ビジネス経験が少ない・もしくは全く無い状態で雇用するケースが多いです。学校のことをよく理解している卒業生であれば雇用もしやすく、普段の授業態度からでも真面目かそうでないかは判断が可能です。結果として、職員室の中には卒業生が溢れるという状況ですね。(これに関しては5校の中で例外はありませんでした。)ビジネス経験が少ないと一番困るのはカリキュラムです。どのような講義内容を設計すれば企業の中で活躍できるか?がわからなくなりますし、非常勤講師の雇用の際に、講師として適正か?の判断も難しくなります。せめて学科を統括する立場の方は、ある一定のビジネス経験が求められるでしょう。

②報酬が安い

筆者のようなto Bで支援事業を生業にする人間からすると、専門学校の講師給というのは、時間に換算しますと相場の1/5〜1/10程度です。もちろん教育を司る講師というお仕事は報酬だけで受けるかどうか判断できるものではなく、「後身を育成することによる業界の活性化」という重大な役割があると考えております。また、筆者のような専門学校出身の人間からすると、専門教育における「不足した部分」を理解していますので、若い世代にはちゃんとした教育を受けてほしいという願いも当然あります。しかし、報酬が安いせいで第一線で活躍する方々を誘引できなかった、というお話をよく耳にするのも事実です。(業界で活躍している人間が講師として優れているか?はまた別のお話ではあるのですが)

◯講師の良心を利用していないか?

このブログオーナーであるマサ佐藤氏も専門学校の講師を長年されておりますし、筆者も講義を見学させて頂いたこともありますが、「このような講義を学生の時に受ける事ができたらどんなに幸せだったか」と思うような内容です。学生に配布されている資料は、企業のMD担当者なら誰もが欲しがるようなものでしょう。ファッション業界のMDにおけるトップランナーであり、マサ佐藤氏個人の誠実な仕事振りが窺える内容であると認識しております。事実、マサ佐藤氏が講義を担当されているコースは近年希望者が急増しており、見学後に「このような技術を身につけたい」と希望する学生が後を絶ちません。出席率も学内トップクラスです。これは担任の先生が①を担保できた結果ではあります。ですが②に関してはどうでしょうか。講師の良心から講義を受けられていますがこれは健全では無いと考えております。

本来であれば「商品力」の担保は学校側に責任があるはず。ですが、現状はそれが一部「講師の良心」に委ねられています。学校も講師も、何より学生ファーストで考えるべきですが、その責任を専門学校側が果たしておらず講師側に負担させている構図になっているのではないでしょうか。そして誠実な方なら問題はここまでなのですが、そうでないと思われる方も講師の中にはいらっしゃいます。その場合、授業内容は長期間に渡りアップデートされない。アドリブだけで講義をする。テキストを読んでいるだけ。のような講義内容になるケースも散見されます。恐らくこれが、最もファッション教育を腐敗させている要因ではないかと考えます。

 

筆者にも経験があるのですが、講師を請け負う際に必ずと言っていいほどに「ささやかですが」「これだけしかお出しできませんが」と報酬面では言われます。安いと思うのなら何故上げる努力をしないのだろうか?と思いますし、「教育ならこのくらいの報酬が妥当」と思っているのなら胸を張って金額を提示すれば良いのですが、学校側が「適正でない」と判断しているようなものでしょう。

学校も商売なので営業面が大事なのも理解できます。ですが、本来の専門学校の商品力を高める努力をせずに学生の育成は実現できません。いい加減、講師の良心に商品力を委ねる習慣を見直してはどうでしょうか?と、10年程度講師をしておりますが、ファッション教育の腐敗は依然として変わっていないと考える一講師の意見としてここに記しておきたいと思います。

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