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今回の記事は、私からマーチャンダイジング(以下MD)に関する例題を出題させて頂き、その例題を基にMDの学習していこう!という試みです。できれば、今後複数回記事をお届け出来ればと考えています。今回、なぜこのような試みを行うのか?という理由をお伝えさせて頂きます。
私はこれまで多くの皆様方にMD講義を実施して参りました。受講してくださった皆様方には感謝しかございませんm(__)m。MD講義の内容自体も日々、アップデートさせて頂いているのですが、かつてのMD講義受講者の方から「より実践的な内容でMD講義を行ってもらえないか?」という声が、チラホラと上がっていましたので、ゼミ的な要素を含んだ新しいMD講義項目として、今回の企画を考えました。また、今後は有志一同で”ファッションビジネススクール”の立上げも考えていますので、そちらにも繋がれば良いと考えています。
ということで、”MD脳を鍛えよう!~MDケーススタディ1問目”。以下例題をお伝えします。今回取り上げるショップの大枠の特徴は以下の通りです。
・メンズのカジュアルブランド
・特に春夏はTシャツ。秋冬はスウェットが強い
・リードタイム(以下)LT3か月
・値入率の設定は65%(原価率の設定は35%)
以下、上記のショップのTシャツ半袖というカテゴリーを取り上げ、MD予算(売上・粗利・仕入・在庫)と4月までの実績を入力したOTB表を作成致しました。以下のOTB表をご覧ください。
今回、私がMD講義で考えている流れは?
①MD予算からみえる(売り方の)特徴は?
②実績(今回は4月まで)からみえる、このショップの問題点は?
③今後(5月以降)の問題改善をどう実践していく?(数字も示す)
このような順序で進めたいと考えています。
読者の皆様は、上記のOTB表をご覧いただき気づいた点はありましたでしょうか?特に③の部分は、MDにとって一番重要な部分となりますが、答は無限に存在しますので、この部分は受講者の皆様方と議論を展開出来ればと考えています。ですので、今回の記事は③の部分は触れません。ということで、①②を読者の皆様方は考えてみてください。今回の記事では、私なりの①②の見解を、以下読者の皆様方にお伝えいたします。
先ず、売上・粗利率予算からみえるこのショップの特徴をお伝えしますと、販売期間を長く(3月~10月)とっています。また、売上のピークは世間一般でいうセール時期の7月で、8月・9月もかなり高い売上予算設定がされています。これは、昨今の温暖化から7月以降も主力商品はTシャツ半袖で考えている可能性が高いといえます。また、粗利率の推移をみると6月・7月は、セールを加味したのか?粗利率は下がっていますが、8月以降は粗利率は60%を超えています。ここから考えられることは、6月・7月で売れない商品を一度セールをし在庫をなくした後、7月中旬以降?はプロパー商品で売っていきたい!というMDの意志を感じます。最後に、このショップのTシャツ半袖の値入率は65%。粗利率は58.5%で設定されていますから、OFF率約16%となりますので、基本的にはあまりセールをしたくないショップ!定番商品的なものが多いショップ?と推測されます。
仕入予算でまず気づくことは、売上原価予算4440万円に対して、仕入原価予算約4774万円で設定しているということです。これは、販売終了の10月末に約334万円の在庫を残しても良し!としていることになります。(期間)消化率でいうと約93%の設定です。月別の仕入予算をチェックしますと、2月と4月に大きい金額の仕入を設定します。また、売上予算は3月から発生していますから、商品を店頭に展開する数週間前に仕入を考えているということがわかります。2月仕入予算の商品は、3月から販売スタートとなります。仮に売れる商品を追加発注した場合、このショップのLTは3か月になりますから、最低でも7月には入荷してきます。ということは、7月・8月の仕入予算は追加発注用と考えても良いでしょう。仕入予算で追加発注分を担保しているメリットは、下記の記事をご覧ください。
在庫予算の推移をみてみると、このショップの売上予算のピークは7月になりますから、在庫金額のピークは6月末になるのが理想なのですが、4~6月がほぼ同じ在庫金額となっていますので、在庫予算も特段問題があるようには見えません。
次は実績から見える問題点です。3月4月の売上予算を達成できていないのですから、商品に問題があるのかもしれませんが、仕入実績をみてみると、このショップの問題点が他にもあるようにみえます。2月の仕入実績は、予算の10%にしか達していません。3月にはかなりの仕入金額でカバー出来ていますが、この事実から見えることは、2月に仕入し、3月初頭から販売を計画していた商品が入荷せずに、売り逃しをしている可能性が高い!ということです。
しかしながら、先述したように3月にはかなりの仕入が発生しています。ですから、3月売れなかったのは、商品に問題があるのでは?と推理する方もいらっしゃるかもしれませんが、3月仕入金額が全て、3月1日入荷だと効果があるのですが、この例題の場合、仕入金額が3月初頭に入っていない可能性が高いといえます。その分、店頭に必要な在庫が足りず、売り逃しによって売上予算を達成できなかった可能性が高いとみるべきでしょう。ということは、このショップは商品の納期コントロールに問題を抱えている可能性が高く、早急な改善が必要です。商品の納期遅れが発生したり、店頭での売り逃しが多かった場合には、上記のような数字推移になることが多いので、MDはこのことを頭に刻んでおきましょう。また、このケースでは予定通り売れていない3月に、商品の追加発注の判断をするのが難しくなります。追加発注の判断が遅れれば、7月以降の売上にも影響を与えることになります。その他にも問題点があるのかどうか?読者の皆様も考えてみてください。
最後に、”③今後(5月以降)の問題改善をどう実践していく?(数字も示す)”この項目ですが、これは先述したように、答は無限に存在し、講義内で受講者の皆様方と議論(数字を使った)をする部分でありますので、今回の記事では取り上げません。ということで、今回のMD脳を鍛えるトレーニングは如何だったでしょうか?、喫緊で違うシチュエーションで例題を出せればと考えています。MD講義資料も現在作成中ですので、興味のある方は下記からご連絡くださいm(__)m。
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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