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先日、弊社のお客さまよりご質問があったのですが、
「新規獲得に対してどの程度の広告予算をかけるのが適正か?」
と聞かれました。WEB広告は大きく分けますと、「新規ユーザーを誘引する」ものと「再訪を促進する」ものに分けられがちです。当然、新規ユーザーを誘引する広告の方がCVR(コンバージョン率)は下がりやすく、費用対効果が悪くなります。とは言え、リピーターもいずれは離脱していく訳ですから、新規獲得を常に促進しておかなければ売上は下がる一方です。日本は人口が減少傾向にありますから、今後潤沢に新規を獲得できる見込みが無い=ロイヤリティプログラムを導入してCRM強化というトレンドではありますが、それでも新規獲得施策はやらなくていいか?と言われると絶対やらなければならない訳で。
そんな事態から上記のような質問がやってきたのですが、これに関しては一言で回答できるものではないと考えております。ではどのような手順で算出していけば良いのでしょうか?
新規獲得を促進…、の前に、まずは「どの程度新規を獲得しなければならないか?」が明確かどうか?ですね。年間の売上目標の中で、期待できるリピーター売上の算出は比較的容易ですから、そこから新規をどれだけ獲得すれば売上目標に到達するか?がわかります。リピーターをどう定義するか?もよりますのでご注意を。
例えばShopifyなら、カート側のリピーターの定義は過去、ストアがオープンしてから2度以上購入したらリピーターとして定義されます。直近1年でのリピーターを算出したければ上記のように別の出し方が必要になります。
これでリピーター売上を確認するのも良いですし、ロイヤリティプログラムを導入しているなら会員ステージ別に管理するケースもあるでしょう。リピーター内で「来期はこのステージの顧客をここまで引き上げたい」という要望もあるでしょう。それらをまとめて来期のリピーター売上が初めて算出されます。
(会員ステージ別売上の管理はVIPで容易にできます。)
来期の「全体の売上目標」と「リピーター売上目標」が確認できましたら新規獲得目標は、
「全体の売上目標」-「リピーター売上目標」
で算出できますね。あとは、この新規獲得に向けてどの程度の広告費を使えば良いか?を算出すれば良いだけです。またしてもShopifyで例を出しますが、ストア分析では「utmキャンペーン名」経由で新規 or リピーターがどの程度獲得できたのか?を抽出可能です。過去データがたまっている場合、これを元に予算を作成できますね。新規1件獲得あたり何円かかったのか、それでどの程度の売上が取れたのか?を確認し、来期予算に役立ててください。あと、何度も言っておりますが、Shopifyのストア分析はGoogle広告の自動タグは検出しませんので、可能なら手動でタグを設定してください。手間はかかりますが、正確な予算が組めないより断然マシです。
これで新規獲得の目標値はある程度、算出できるのですが最後にPL(損益計算書)をしっかり確認してください。(自社EC単体で作っているのが望ましいです。)広告費が高騰し過ぎている場合は調整が必要になるでしょうし、WEB広告だけが広告費とは限りません。アパレルの場合、雑誌掲載等のメディア露出も多いでしょう。ECのPLに費用を按分する事もあるかと思いますし、この場合はWEB広告の費用も削減できる可能性があります。雑誌を見て検索→広告経由で購買、となれば当然それも新規獲得になるのですから。
また、PLを日々確認する事でセール・値引き施策時の広告予算も算出できます。セール時期は広告効果も高くなりやすいので、また予算設計が変わってくるでしょう。ロス高・ロス率と広告予算の相関をPLから確認しつつ調整しましょう。(もちろんROASも合わせて確認)
このように、別の広告施策がある場合やセールなどのイベント開催時などの対応はPLからある程度調整できるのですが、普段から確認していないと適切な目標設定はできないでしょう。最終的には営業利益の最大化が目標になると思いますので、どこをどう微調整したら利益が出るのか?はしっかり見ておきましょう。もちろん広告費じゃない項目が圧迫し過ぎて利益を削っている可能性もありますが…。(ECは特に手数料にご注意を。)
そんな訳で、今現在◯◯円使っているけどそれは適正か?を確認しようと思うと色々と確認しなければならない項目があるという事です。ROASが良いからと言って適正かどうか?は意外とわからないものです。良すぎる場合、新規獲得施策が弱いという見方もできますので。
(広告経由売上が間接効果かどうかも注意が必要です。)
そして、めちゃくちゃ広告費使っている、と場合は急に広告費を大きく減額するとトップラインも下がります。もちろん、利益は改善しやすいのですがGA4などのデータだけでは「粗利」「営業利益」なんて出てきませんから業績が悪化したと錯覚しやすいです。(広告費をアップロードして広告だけの費用対効果の確認はできますが。)EC支援会社はPLまで見てくれないケースも多いでしょうから、アクセス解析のデータだけ見ていると「値引き・クーポン・WEB広告連発」が正解になっちゃいます。そんな運用にならないよう、日々PLを確認して利益の最大化を目指してください。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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