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D2Cブランドに在籍する事で得られる技術

最近それほど耳にしなくなった「D2C」と呼ばれるブランドですが、そもそも業界メディアやその周辺の方々、あとは一部の起業家が勝手に騒いでいただけなので、当事者からすると「そもそも名乗ってねぇわ」という感じかもしれません。筆者もこの「D2C」と呼ばれるブランドから依頼があり、ECのデータ分析などの対応をしたことはありますが、組織によってはアパレル企業として機能していないケースもあったりと、なかなか運営が難しいと感じることもしばしばありました。

最近では、卸を強化する方針のブランドも増えているようで「D2Cとは一体」という感じになりがちです。純粋なD2Cブランドの事例ではありませんが、上記の記事では「卸頑張ったからD2Cが伸びた」みたいなことが書かれており、「そりゃ流通増えて認知広がったらECでも売れるようになりますがな…。」という当たり前の状況。当然ながら、騒いでいた方々がこれらの状況を総括する訳もなく、過去からよく発生している「トレンドの横文字あったけどなんかよくわからないまま過ぎ去っていく」アレです。アナウィンターとマークザッカーバーグが合体した最強の組み合わせ説どこいった。また名称が変わって再来する可能性はあるので要注意です。

普段、専門学校で講師をしている我々ですが、このようなブランドが学生さんの就職活動の候補にあがることもあり悩ましい事もあったり。(インフルエンサーブランドや◯◯b◯ic Tokyoとかの名前も普通に出てきます。おそロシア…。)学生さんの目的次第なのですがそのような企業に入社して、どのような技術を得られるのか?を考えなければなりません。将来独立したいという学生さんも多々いらっしゃいますので、入社後にどのような技術が得られるか?を筆者の経験を用いて記載しておきたいと思います。

◯EC運用に関わる技術・知識

これらのブランドがメインの販路として活用しているのはECになりますから、日々の業務はECの更新作業が中心です。それに付随して、集客施策としてSNSや広告運用が挙げられます。なので、このあたりの使い方については技術として身につきやすいでしょう。初期設定から簡単な作業まで一貫して出来るだけでも企業では割と重宝されます。エンジニアの採用でも無い場合は、日々の業務はECの更新業務(ささげ・CSVアップロード・バナー制作/差し替えなど)になるでしょう。

お使いのカートシステムによってデータの形が違いますが、違うカートでもちょっと触ればすぐ対応できるかと思いますので、これらの作業になれているとEC担当者としては及第点。原稿(ブログ執筆・SNSのキャプションなど)も書けるならかなり重宝されますし、広告出稿を難なくこなせるならすぐ就職できそう。また、副業でもこれらの作業は求められやすいので、副業可能な企業に就職すれば案件次第ではあるものの収入アップは目指しやすいです。

■CSなどの対応も

少人数ならto C向けのカスタマーサポートを合わせて経験している方もいらっしゃる事でしょう。最近のチャットサービスは機能面でもアップデートされていますから、ここに詳しいのも企業からするとありがたいでしょう。このご時世、チャット対応やSNSからのDMの対応など、ECに関わる業務として必須になりつつありますからね。

■SNS運用は「使い方」は習得できる

こちらに関しては「得意」と思われている方が多いと思われますが、筆者の経験上、SNS運用で大きく実績を出した担当者というのはごく稀にしか存在しません。インフルエンサーマーケティングや広告出稿にてフォロワーが大きく伸び、表面上数字を伸ばすというのは資金さえあれば簡単にできますが、大概は費用対効果が見合いません。とは言え、簡単な操作については問題は無いでしょうから、まだSNSを本格運用されていない企業などは重宝するかもしれません。

◯決定的に欠けている技術・知識

■MD

まず代表的な技術はこちら。既存のアパレルブランドでも新卒で採用する枠はなく、それなりに店舗や生産管理等で経験を積んでからアシスタントを経てMDに就任するという流れが通例でしょうか。D2Cブランドはそもそもこのポジションが必要である、という認識すら希薄な気がします。そのせいか、プロジェクトが立ち上がる初期からこのポジションの方がいらっしゃらない事も珍しくありません。(自殺行為やろ…)最近は徐々に気づき出したのか、この職種の採用をスタートし始めたブランドも見かけますが、社内にその技術が無いせいか、誰がちゃんとした技術を持っているのか?自社のブランドの運営を任せることができるのか?の判断がついていないように思います。

しつこく言いますが、ECは消化率が上がりにくく、単品やカテゴリー別で消化スピードを追っておかないと在庫はたまる一方でしょう。消化する場合の方法論として値引き施策やファッションECモールに放り込む、などに偏重し、粗利を毀損する未来しか見えませんのでご注意を。そんな訳で、学生さんがこの業態の企業に就職してもまともな技術は身につきにくいでしょう。

■店舗運営

最近はリアル店舗を出店するケースもよく見かけますが、MDがいないのですから店舗運営も難易度が上がります。標準店舗面積の概念もなく、またディストリビューションも上手くできません。少ない店舗数なら販売員が優秀であれば売上を取ることは可能でしょうが、店舗が増えるにつれて在庫管理と店舗マネジメントのハードルが上がっていきます。

逆に大手小売アパレルの強みは、MDや店舗運営のノウハウがしっかりしている事でしょう。新人の頃にこのノウハウを得たいなら、大手アパレルに就職するのが無難でしょう。(アダストリアとか)

◯要は業界知識が弱い

結局はアパレル出身じゃない方が多いので、業界知識が弱いのです。一口に「業界」と言ってもその技術は細分化されます。生産と販売でも大きく違いますし、販売側にはPRやMDなども絡んできますが、1人で網羅できるものでもありません。業界に精通していない方にマウントを取りたい訳では無いのですが、上記の事に対して理解が無いのに参入するのは非常に危険という事です。また、そこで若者を採用してしまうと、その若者が本来得たかった技術が身に付かず、時間を無駄にしてしまう危険性もあります。

また、ECがメインの販路だからといって、WEB全般の知見があるか?と言われますとそうでも無いケースがあります。SNS・広告運用などはさわり方がわかっても、効果を発揮するには当然ながら業界の知見が必要です。筆者が生業とするWEB解析に関しても同様です。ECも結局は一つの店舗なので、アパレルの知見が無いと売上を伸ばす事は難しいのです。

 

もちろん、ちゃんとした技術を持った会社もありますので、若者は就職する前にしっかり調査してみましょう。(まずは「会社名 決算公告」で検索。債務超過の会社もありますぞ…。)ちゃんとした技術を持ったアパレル出身者が陣頭指揮取っている事もありますし、そのようなブランドはやはり伸びていたりもしますからね。既存のアパレルでも会社によって得られるノウハウはやや違いますから、就職の際は入念に調べてからエントリーシート出しましょう。

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