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オンワードのEC売上はどう推移している?

大手アパレル上場企業決算解説第三弾。今回はオンワードについて見ていきたいと思います。

オンワード樫山と言えば、OMO店舗の「ONWARD CROSSET SELECT」の展開や、既存店舗での「クリック&トライ」の導入など、ECへの送客に注力しているイメージが強いです。一方で、新規ブランドの開発にも余念がなく、「UNFILO(アンフィーロ)」の成長や、23区のハイエンドライン「esteta(エステータ)」の展開など、注目の施策が複数あります。新規ブランドの開発やSKUの担保はEC売上に欠かせない要素ですが、24年度2月期はどうだったのでしょうか?

■全体で増収増益・EC売上は自社・モール共に成長

売上:1896億2900万円
営業利益:112億6000万円
営業利益率:5.94%
EC売上:477億1600万円円(内訳:自社EC 409億6600万円・他社モール 67億5000万円)
EC比率:25.16%

昨年度から増収増益でPLは絶好調のオンワードさん。大量退店からコロナを経て、ピーク時の2015年より売上は1000億円近く減少しているものの、営業利益は当時より多いという状況。百貨店依存からの脱却、ECへのシフトが成功していると言って良い状況でしょう。

消化仕入れを始めた会社が百貨店依存から早々に脱却おめでとうございます。

好調の要因として記載されているのは、新規・既存ブランドの成長でしょうか。

冒頭でも記載しましたが、まだそれほど規模は大きくないと思われますが23区のハイエンドライン「esteta」の展開、ブランド創設から快進撃を続ける「UNFILO」あたりはわかりやすく売上に直結してそうです。UNFILOは1年前の見通しで50億円と記載がありますし、毎年2倍で成長しているのでEC含めて結構なプラスだったかと。

課題としては、SKUが増えるとその分在庫も増えやすく、在庫は80億円ほど昨年より増加。結構な増え方なのでこれはやや心配ですね。特にEC専業ブランドは消化率が上がりにくく、成長と共に在庫は増えやすいでしょう。uncraveやUNFILO、#Newans(ハッシュニュアンス)などの店舗がぼほないブランドに関しては、オンワードクローゼットセレクト(実店舗の方)での現物販売はあるでしょうけど、1ブランドあたりの展開SKUからするとオンラインでの売上の比重が高そうで、それにより消化率は下がるのではないかと推測。(#Newansのお話、ほぼ出てこなくなりましたが…。)結果、トップラインは伸びるものの在庫も増えやすくなった可能性はあるかと思われます。

店舗情報

ちなみにオンワードクローゼットセレクトの店舗数は現在137店舗もあるようで、これなら展開しているブランドの認知度も上がりやすく、認知した後はアプリで試着予約から店舗への来店→購入というフローが比較的容易に確立できそうですね。昨今、大手アパレルはモバイルアプリが会員証の役割を果たしていますから、そこからプッシュ通知でECへの送客も容易になっておりますし、アプリDL数がOMO施策のKPIとして機能しやすいでしょう。

個人的には、既存店のクリック&トライだけで十分かと思っておりましたが、UNFILOの成長エンジンとして機能しているのだとしたらこの展開は成功なのかもしれません。気になるのは、OMO店舗としての位置付けにせず、UNFILOとして店舗を増やせば展開SKUが増え、消化率はもっと上がったのではないかとも思います。(既存ブランドはクリック&トライでカバーできますし)また、OMO店舗という謳い文句ではあるものの、直近の報道では店舗売上が月間で1億円を突破したとのニュースがありました。

OMO型店舗戦略の加速スタートから3年で全国137店舗へ拡大

売り場面積もトータルで650m2という事でかなりの大型店ですね。月間で1億円販売するという事は、こちらでも結構な在庫を積んだと推測しますが、地方の倉庫の役割も果たしているのでしょうか。面白い手法ですが、これだけ多店舗展開しますとフェイス在庫だけでも結構な量ですし、こちらも在庫の温床になっていそうな気はしますね。

■成長ブランドがEC売上牽引


(単位:百万円)

UNFILOのような、オンラインを主軸としたわかりやすい成長エンジンがあるとEC売上も伸びやすかったでしょう。自社ECで24億7100万円のプラス、他社モールで4億4700万円のプラスと、モール売上はZOZO撤退前より伸びているのではないかと。暖冬で厳しかった23年秋冬も、ECの昨対割れは9月のみという事でこれは素晴らしいですね。自社ECではやや値引き施策が目立ちますので、売上対策として販促強化はかなりやっている印象があります。

会員限定80%OFFセールの頻度は非常に高く、ポイント施策も多いですね。(ポイントは販管費計上かもしれませんが)販管費率に関しては、元々コロナ前から大量退店でかなり削られており、20年2月期の決算では46.6%程度だったので、店頭回帰もあってトップラインが伸び、率が下がってきたようです。

それ以外にEC売上が伸びそうな要因としては、規模は大きくないでしょうけど卸先店舗が非常に多いATON(直営店は1店舗のみ)と、ストライプインターナショナルとの相互出店でしょうか。

earth music&ecology

2018年からの取り組みなのですが、いまだに続いているところを見るとそれなりに成果があるのかもしれません。

 

まとめますと、全体的に業績好調ではあるものの、やや在庫の増加が懸念。成長エンジンとなるブランドや新たに開発したブランドがEC売上を牽引しており、OMO店舗でそれらの試着をカバー。既存ブランドもクリック&トライでECの活用を促進。他社製品を取り扱う事で更にSKUを担保、という状況でしょうか。店頭回帰からトップラインが伸びた事でEC比率は25%程度で止まっているのは他社と似たような状況。やはり成長しているブランドがある事が全てを解決していると思われますので、ECの取り組み云々の前にちゃんと商品開発とMD頑張りましょう。(そのあたりはマサ佐藤氏にご相談ください。)

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