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先日アップされた深地さんの記事で、気になる部分がありました。
”課題としては、SKUが増えるとその分在庫も増えやすく、在庫は80億円ほど昨年より増加。結構な増え方なのでこれはやや心配ですね。”
そして、私の過去記事でも同じようなことに言及している部分がありました。
”先に24年1月期の在庫の話をしますと、24年1月期の在庫は約31億円となっており、22年1月期からの2年間で在庫が約10億円増加しています。対22年1月期比でみると、売上が113%に対して在庫が142%となっておりますので、かなりの在庫増と見て間違いありません(しかも22年1月期は、11ヶ月の変則決算なので、24年1月期は、実際には売上は伸びていない)”
上述した過去記事の抜粋からみてもわかるように、MDアドバイザーである私が決算資料を読む際に、先ずに目がいくのは在庫が増えていないか?という点です。これは最早職業病でもあります。売上が低迷している場合は、在庫が増えやすい傾向にあるのは、読者の皆様もご存じのとおりです。しかしながら、在庫が増えている=悪ではなく、その分の売上が増えていれば全く問題ありません。また、(前期よりも)在庫が減っているから良い!というわけでもありません。例えば、前年に在庫を大幅に増やしてしまった組織は、当年は在庫消化優先で仕入を抑制する傾向にあります。その場合、決算資料を読み込むと、売上原価>仕入原価の状態になります。この場合、当然のことながら新規商品の仕入を抑制しているわけですから、売上・粗利が低迷する可能性が大です。
というように、在庫が増える=業績が良くない!というわけではありませんが、在庫が増えると手元のキャッシュが減る!というのも事実で、むやみに在庫を増やしてもいけません。組織の在庫が増えるケースは以下のようなことが考えられます。
・売上が低迷している場合
・売上以上に仕入をしすぎた場合
・(在庫が増えているのに)セールを全くしない場合
・売上が想定以上に伸びている。また、今後の売上アップが見込まれる場合
・積極的に新店舗を出店した場合
また、大量に退店した場合、事前に退店分の商品を発注してしまっていた等の理由も重なり、売上以上の水準の在庫が残ることにも繋がります。ということで、今回は新店を積極的に出店し在庫が増加した場合、どのくらいの売上が増えてなければいけないのか?を、架空の組織を例に考えてみます。
【ある架空の組織A】
・決算月は2月
・(前年度の)売上200億円 粗利率50%
・年間在庫回転率3.5(前年度)
・(今期)3月に10店舗を出店
・今期の売上240億円 粗利率50%
・今期の平均在庫が10億円増加
このような組織があったとします。
架空の組織の数字をチェックすると、今期は出店をしたことで、売上が40億円増加し、平均在庫が10億円増加した!ということになっています。一見すると、売上が増えた分、在庫が増えるのも当然のように見えます。また、架空の組織の在庫回転率(年間)をみると、3.5という数字になっています。これは在庫回転日数で換算すると、104日(月数だと約3.3か月)となります。では、この在庫回転率を確保するということを前提とすると、この架空の組織は10億円在庫が増加することで、どのくらいの売上アップが必要だったのか?を考えてみます。
在庫10億円で在庫回転率3.5を達成する為に必要な売上は?
→10億円(平均在庫)×在庫回転率3.5=35億円(1年で必要な売上原価)
→35億円(売上原価)÷50%(売上原価率)=70億円(1年で必要な売上)
となり、この架空の組織で在庫が10億円増えた場合、1年で約70億くらいの売上アップが見込めないと、前年度の在庫回転率3.5が維持出来なくなる可能性が高まります。今回の架空の組織は、出店したことで売上が40億円増となっていますから、上記の計算から考えると、架空の組織Aは、この1年で必要以上に在庫が増えた可能性が高い!と言えます。
しかしながら、今回の架空の組織の例は、期初で10店舗出店したという例です。実際は期の半ばから出店が増えた等ということの方が現実的ですから、売上以上の在庫が増えたからといって、一概に在庫増えた=この会社はヤバい!というわけではありませんが、アパレル小売り業界の仕事に従事されている皆様方におかれましては、在庫が金額が増えた分、どのくらいの売上・粗利が必要になるのか?ということに、少しでも興味を持っていただけるきっかけとなれば幸いです。今回の記事は、これで終了です。次回もよろしくお願い致します。
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