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今回は、現役MDの方々から質問を受けることが多い、「他社バイイング商品」のMD予算策定と期中運用について、記事にまとめたいと思います。今回お話する「他社バイイング商品」とは、年複数回の展示会をもとに商品をバイイングする必要がある商品のことです。わかりやすく説明すると、国内・海外デザイナーブランドを多く展開するセレクトショップや百貨店の自主編集売り場などがこれに該当します。他社バイイング商品のマーチャンダイジング(以下MD)における特徴を、私の独断と偏見ではありますが、以下に箇条書きでまとめます。
・(自社でコントロールできない部分が多いため)綿密なMD設計がしづらい
・展示会から商品入荷までのリードタイム(以下LT)が長い場合が多い
・展示会ベースの発注となり、期中での追加発注が難しい
・シーズン期初に商品が集中して入荷するため、在庫回転率が悪化しやすい
・値入率が自社商品に比べて低くなる傾向がある(原価率が高くなる)
などが考えられます。上述した特徴を持つ他社バイイング商品のMD予算策定・期中運用はどのように考えればよいのか、以下で考察します。
最初に、他社バイイング商品のMD予算策定・期中運用をどのように実践すべきかについて、私の見解を述べます。結論から言うと、MD予算策定・期中運用は「緩く」行うのが良いと考えます。
その理由を簡単にご説明します。年2回から4回の展示会で商品をバイイングする必要がある他社バイイング商品は、展示会の結果によって商品の発注数量・金額が変動します。また、ファッション業界特有の「気分・雰囲気・感覚」のようなものをMD・バイヤーが感じ取り、それを踏まえてバイイングを行うため、事前にMDの数字面を緻密に作成してから商品発注を行うことは不可能に近いからです。
例えば、他社バイイング商品のシーズン売上予算が1億円で、粗利率予算が45%だった場合、売上原価予算は5500万円となります。売上原価予算=仕入原価予算とした場合、5500万円の仕入予算をカテゴリー別やメーカー別等に分類した仕入予算に拘る必要はなく、大元の仕入予算5500万円の範囲内で、他社バイイング商品の発注活動を行えば良いということになります。
しかしながら、他社バイイング商品であっても、MD予算(売上・粗利・仕入・在庫)を策定する際には、暫定的であってもカテゴリー別にMD予算を策定することを、MDの皆様方にはおすすめしています。
以下、他社バイイング商品のカテゴリー別MD予算の策定方法を簡単にご説明します。カテゴリー別売上予算の策定は、前年の売上実績から月別の売上構成比を算出し、その構成比をそのままカテゴリー別の売上予算策定に活用すると、月別カテゴリー別の売上予算を簡単に策定できます。
売上予算以外の粗利・仕入・在庫予算の策定の考え方は、以下の記事をご覧ください。
ここで話を少し変えます。他社バイイング商品のMD予算策定は、暫定的であってもカテゴリー別で予算策定すべきとお伝えしましたが、他の方法としてメーカー別(ブランド別)で策定する方法も考えられます。しかし、なぜカテゴリー別を推奨し、メーカー別を推奨しないのかというと、メーカー別でMD予算を策定した場合、展示会に足を運び良い商品がない場合でも、メーカー別に予算がついていると、その金額分の発注をしなければならない事態になりかねません。また、メーカー別よりもカテゴリー別の方が、より顧客の購買行動を反映している可能性が高く、カテゴリー別でMD予算を策定・期中運用することをおすすめしています。確かに、ブランド買いを目的とする顧客もいらっしゃると思いますが、その場合は、メーカー・ブランド別に予算を組むのではなく、シーズン終了後の分析・検証を行い、次シーズンのバイイングに活用すると良いでしょう。
話を戻しますが、暫定的であってもカテゴリー別にMD予算を策定した方が良い理由は、期中にバイイング活動を終えたとき、暫定的に策定したカテゴリー別の仕入予算とカテゴリー別の仕入実績に、少なからず差異が生じます。前年のカテゴリー別売上から策定したカテゴリー別仕入予算と金額の差異を確認することで、事前に次シーズンのトレンドの傾向や自身のバイイングの傾向を読み取ることが可能となるからです。他社バイイング商品の期中運用においては、追加発注が見込めない状況下では、売上、粗利益、在庫の予算比を追跡する以外に方法はありません。ただし、追加発注が可能な商品も存在しうるため、その場合は、将来の売上・在庫シミュレーションを実施し、追加発注を検討するのが良いでしょう。
最後に、他社バイイング商品のMDにおいて特に重要なことは、シーズン終了後の検証です。先述したように、他社バイイング商品のMD予算策定・期中での運用は、「緩く」行うことが良いと申しましたが、シーズン終了後の検証は別です。暫定的にでも他社バイイング商品のカテゴリー別のMD予算を策定している理由は、シーズン終了後の検証・分析を詳細に行えるようにするためでもあります。トレンドを先取りしていると考えられる他社バイイング商品のデータは、翌年に繋がる多くのヒントを得られる可能性が高いと考えられます。さらに、自社商品も展開しているセレクトショップの場合、自社商品のMD向上に繋がる多くのデータを獲得することで、翌年の売上・粗利益の大幅な向上のヒントを掴むことにも繋がります。このことから、他社バイイング商品のMD予算策定・期中運用は、柔軟に対応しつつも、検証は徹底的に行うことが重要だ!ということを訴えて、今回の記事は終了です。
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【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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