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前回は、”組織軸”で見る場合の”消化率”という指標を見る際の注意点についてを記事にいたしました。
今回は、”商品軸”でみた場合の”消化率”という指標を使用する際の注意点についてを記事にしていきます。
商品軸での消化率は、読者の皆様にも馴染み深いものだと思います。
何故ならば、アパレル・ファッション小売業の商品ならば、ある程度の販売期間。販売終了日ということがイメージしやすいからです。このことから識者たちがいうプロパー消化率なる指標が重視されるのでしょう。
そういう意味では、組織軸単位での消化率を考えるよりも、商品軸単位で消化率をイメージしている人は多いでしょう。
(しかしながら、この前提条件なしでのメディアの記事が多すぎる)
かつて私が見た光景を以下お話します。
まだPOSシステムが発達していない頃。ある組織の月曜日のMTの際、先週の売上ランキングを見ると先週土曜日に入荷した商品が、売上金額ランキングでも売上点数ランキングでも1位になっていました。
そして、その商品はかつてない初回発注数量だったので、消化率が2日間で70%を超えていても、また残在庫数量は豊富にある!かのような数字の出方をしていました。そのことで担当MD・バイヤーが大喜びしてました。私は冷めた目でその光景を見ていました。
これは皆様もおわかりの通り、圧倒的に商品の発注数量が足りないからです。
ましてや、この商品の販売期間を2か月と設定していた場合。その消化率はもっと低い方が正解と言えます。
(2日÷60日。3.3%。土日で週の売上構成の50%であれば、6.6%の消化率であることが大凡の目安?)
当然ですが、その商品はすぐに売り切れ、本来取れた筈の売上を多く逃した!ということになります。はっきり言ってMD失格です。
(因みにその組織は、この商品を追加発注し多くの在庫を残してしまった)
識者がよく言うプロパー消化率の理想論で言えば、60日売価変更をしないで売り切ることが理想となるのでしょうが、上記のケース(初回発注数量のみのケース)もプロパー消化率100%です(笑)
このように商品軸での消化率を見る場合は、販売期間のみならず、時期によっての適正な消化率を見ておかなければ、時点の判断のみで見た消化率の高さなど全く意味を成しません。
組織軸よりもより具体的な前提条件を提示しておかなければ、こんな消化率などという指標は、いくらでも誤魔化すことができます。
この業界の多くの組織は、定番品ならぬ1年以上継続して売っている商品を抱えている場合があります。
このような商品の消化率などというものは、本当にあてになりません。
販売期間の切り取り方にもよりますが、このような商品は消化率が高すぎると、店頭に商品が行き届いていない可能性があり、売上損失に繋がります。
また、このような商品の追加発注がセンター倉庫に入荷した時点での消化率は、えらい低い消化率の数字が出てきますから、消化率が悪い=ダメな商品ではありません。
こうした商品は、寧ろ日々シミュレーションを重ね、店頭が売り逃ししないような在庫の必要最低数量を探り、そのことを基にこまめに商品の追加発注することが求められますし、大量に追加発注すれば、仕入原価が大幅に下がるのらば、MDは逆にリスクを負ってそのことを実践すべきです。
このような1年以上継続して売っている商品の消化率などという数字は日々変わるものであり、使えないものでしかありません。
この業界には、販売期間が短くすべての商品に販売終了日が設定してある組織もありますし、1年以上継続して売っている商品を多く品揃えする組織もあり、一概に商品軸だけでみれば、消化率が高いから良い組織などということは当てはまらない!ということになります。
大事なのは、そのブランド・ショップにとっての最適な前提条件を設定したうえで、消化率という指標を使用すると良いでしょう。その際に注意すべき点として、
・期間設定等の前提条件をより具体的にすること。
・組織軸で見る場合と商品軸で見る場合を混同せず、正しい見方をすること。
・高い消化率でも良くない場合が多々あるということを理解すること。
・1年以上継続して売っている人気商品の消化率の高さは、あまり意味がないと認識すること。
このようなことを意識してもらえればと思います。
もういい加減、耳障りのいい言葉や目先の数字を鵜呑みにし真似をするのは止め、自分たち自身の顧客に真摯に向き合う体系作りをすることを気にし、実践するようにしませんか?
【(株)エムズ商品計画オフィシャルサイト】(株)エムズ商品計画代表取締役。大分県大分市出身。リテールMDアドバイザー。繊研新聞社より「数学嫌いでも算数ならできる筈〜算数で極めるMDへの道」出版。大手アパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、あらゆる分野のマーチャンダイジング改善に従事。唯一の趣味は古着収集。
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