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行き過ぎた”売上至上主義”を見直す時期なのでは?

★小売業における”売上”は大事なんだけど。。。

私自身もそうでしたが、この業界に入って一番最初に重要だと認識する数字。それは”売上”です。小売業においては、商品を顧客が購入することにより、売上が発生します。よって、売上を上げることが、商売においてのスタート地点となりますから、売上の重要性は、今後も変わることはないでしょう。

しかしながら、この業界における過度な”売上至上主義”が、弊害を招いているのも事実です。販売の現場では、過度な売上至上主義のプレッシャーから、販売の仕事を諦めてしまった人も多く知っていますし、本部業務においても真面目である人ほど、売上のプレッシャーから体調を崩し、他業種へ転職してしまう。という光景を、私は目の当たりしてきました。

 

★”売上至上主義”の弊害は、MDに顕著に表れる

売上至上主義の弊害は、MDにおいても顕著に表れます。かつて、弊社の個人塾を受講していた某アパレル小売り企業で部長をしていた方から、聞いた話を以下述べていきます。

 

その部長の企業では、販売をすべて販売代行に委託しているとのことでした。販売代行の契約は、売上からの料率になりますから、売れれば売れる分だけ、販売代行側が得る報酬が高くなります。そのことで、その部長が担当するブランドで起こったことはというと?

売上が不調だったある年に、販売代行側から福袋の要望が上がりました。その声を受け、その部長のブランドでは、福袋を、売上重視・利益度外視で多く製作し、多くの売上を獲得することができました。すると、そのことで販売代行側からも”福袋”の点数増の要望の声が絶えず上がるようになり、利益度外視の福袋の仕入れがさらに増えて、福袋を作ることを止められないようになったそうです。

また、その他の施策も”売上至上主義”くる目先の売上の欲しさにセール施策が横行し、プロパー商品の売上が低下し、毎年利益が減っていった!とのことでした。
(販売代行の起用はメリットもあるので、販売代行側が悪いのではないし、販売代行側の主張は、ある意味当然のこと)

このようなことは、テナントの利益など気にする必要がなく、売上の料率が収入源のECモールやファッションビル等にも、前述したことと近いことが起こっています。

(ディベロッパー側は、テナントの売上にシビアなくせして、プロパー消化率どうこうとか言ったり、セール時期ガ~!と言っているのは、ダブスタの気がしてならない)

 

★現場に”利益”の教育をしっかりと行うべきではないか?

このようなことで。私が何が言いたいのか?と言いますと。。。

・販売員には、売上だけでなく粗利益のことを。

・店長には、損益計算書の営業利益までのことを。

・MDには、粗利率ばかり気にすると在庫が増えやすい。在庫が増えると組織にどのような悪影響を与えるのか?ということまでを。

しっかり教育すべきである!ということです。

例えば、上述の部長の組織の例で言いますと、利益度外視の福袋の販売数が増えたり、目先の売上を稼ぐためのセール施策が増えたことで、粗利益が著しく低下し、赤字に陥ってしまう可能性が高まります。売上がどんなに高くても、赤字に陥れば、従業員の賃金の低下。場合によっては雇用の打ち切りを検討せざるえなくなります。

また、粗利益は会計学では”付加価値”と同義ということになりますので、前述した部長のブランドの顧客から見た”付加価値”は著しく低下したということです。顧客が、そのブランド・ショップの商品に”付加価値”を感じなくなれば、当然のことですが、そのブランド・ショップの先の売上は低下する可能性が高く、セール施策も止められないようになるという悪循環に陥りますから、そのようなブランド・ショップが継続するのは危うくなるでしょう。

更に言えば、MDは、粗利率を高くすることばかりが仕事の目的となると、在庫が急増する可能性が高まり、セール施策の抑制のしすぎからの売上・粗利高の低下も懸念されます。在庫が急増すると、手元のキャッシュが減少し、最悪の場合は黒字倒産ということもありえます。ですから、予算設計の段階での仕入予算ルール。期中において、売上が良くない場合は、セールを活用しながらの売上アップによる粗利確保と在庫消化が求められます。

 

★教育がない組織で働きたくない人は、今後増加する?

この業界の経営者の中には、”販売員に粗利益や原価のことを教えると、接客中に原価を顧客に喋ってしまう!”とか、”教育にお金をかけても、社員が辞めれば意味がなくなる!”ということを、未だに言っている方もいます。

しかしながら、社員にしっかりとした教育を施さずに、現場に”売上至上主義”を押し付けてばかりでは、それこそ、社員が辞める原因にもなるでしょうし、若い世代がそのような組織で働きたい!とは、ならないでしょう。だからこそ、売上も大事ですが、売上とともに”利益”も現場に教育することで、売上だけでなく利益からも、先の自分たちの組織の施策を、販売の現場・本部が共に知恵を出し、互いに協力し施策を実践する必要があると、私は感じています。

現在、コロナ禍でどの組織も厳しい状況であるのは間違いのないところでしょうが、今回のことを機会に、行き過ぎた”売上至上主義”を見直す機会になれば。。。と願い、今回のブログはおしまいですm(__)m

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