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こんにちは。OMOTE TO URAのワダアサトです。月に一回というペースでお送りしているこの連載企画も5回を数えました。そこで、今回は「①MDってどう使うの?」「②P/Lを基にした費用対効果」「③月別売上構成とアイテム別売上構成」という内容でお送りしていきます。
文化服装学院でやらせていただいた特別講義を絡めて書いていきます。少々長くなってしまいますが最後までお付き合いください!では、いきましょう。
前回まではある程度の、ざっくりとした情報を書いてきました。はっきり申し上げて、アパレルに関係しておられる方なら、知っていて当たり前レベルの広く浅いお話でした。
しかし「MD」というものの全体像が見えてきても、「で、実際のところMDってどう使うの?」という疑問が生まれてくることは必至でしょう。4年という私自身の長い学生期間でも、そういう疑問を持つ同級生も多かったですし、私は今でもMDの本質やその影響がどこまであるのかが分かりません。
特に小さなブランド等にはその「MD」のリアリティが欠如していて、損益計算書(P/L)を作ってそれを基に戦略を考えていくことがMDなのか?あるいはP/Lを基に費用対効果まで出したプロモーションを含めたものなのか?という疑問があることでしょう。
しかし、事業を進めていく上で「数字」や「金」はどんなに小さな事業規模でも必須の事柄です。そこで今から「MD」を具体的にどう動かしていくのかについて書いていきます。
例えば5店舗運営しているブランドにて、Aさんというマネジャーが
A「この商品を作りました!」
と言ったとします。しかし部下をはじめとした周囲の人は「はい。で?」としか言いようがありません。ですがこれが
A「この商品を1000枚作りました!」
ならどうでしょう。数字が入ったことによって、より情報は明確になりリアリティが持てます。更に
A「この商品を1000枚作ったので、1店舗あたり200枚販売しないとなりません。販売期間は2か月なので1か月あたり100枚、1日あたり3枚を目標に販売しましょう。売価は5,000円です!」
と言われたら、より具体的で其々の店舗に合わせた戦略が取りやすくなるのではないでしょうか?これはvol.3で書いた「売上の構図」を基にしたものですが、「売上の構図」はこういう具体性を持たせてくれるのに加え、損益計算書(P/L)の基にもなりうるものです。
さて、いよいよ出てきてしまったこのP/Lですが、簡単に説明すると「どのくらいの収益があるか・その収益を確保するためにどのくらいお金を使ったか」を示した表です。
マーチャンダイジングにとって重要なのは「売上」ですが、それ以上に重要なのは「利益」です。つまりこの上図では「売上総利益(粗利)」と示された場所です。その為には
⑴売上そのものを増やす
⑵販売管理費(以下販管費)を下げる
といった方法があるのですが…そのあたりはマサさんにお任せして次に進めます。
さて、このP/Lですが「売上の構図」から導きだし、更にはコンセプトとの整合性も持たせねばなりません。近年では原価率の高さを売りにし、それを顧客に全て伝達するというコンセプトのブランドが多いようですが、それもこの「粗利」と「販管費」の数値を見なければ、リアリティに欠けます。
重要なのは「売上」の策定だけでなく、それを基にして各戦略を立案していくことです。このP/Lを基にすれば、一体どのくらいの価格で商品を仕入れてくればいいのか、更には販売促進(プロモーション)にはどのくらいのお金が使えるのか、といったことが見えてくるはずです。
そしてこの意義は「費用対効果」の算出である、と言い換えられます。あくまでも例ですが、P/Lを基に販促に利用できる金額を算出し(=費用)、それがどのくらいの人に伝わるのか(=効果)までを導き出すことで、やっとリアリティのある数値が生まれます。
言い換えると、「その『売上』あるいは『粗利』をどのように確保するのか」まで考えて、やっと企画なり次期販売戦略が策定すると言えます。
そしてそのP/Lを基にし、構成されたものが「月別売上構成比」です。その言葉通り「各月にどのくらいの売上を目標としていくか」という数値を表に示したものです。アパレルには当然「シーズン」が存在し、簡単に言うと秋冬物の方が春夏よりも単価が高く総売上も高くなる為、結果としてシーズン(月)ごとに売上が変遷していくということです。
そしてこの「月別売上構成比」と照らし合わせて考えていくものが「アイテム別売上構成比」です。これも名前の通り、「月ごとの『売上』をどのような商品群で占めていくのか」ということを表に示したものです。
一度整理します。
「月別売上構成比」は「各月にどのくらいの売上を確保するのか」
「アイテム別売上構成比」は「月別売上をどのような商品群で確保するか」
となります。
そして数行前に「照らし合わせて」と書きましたが、これはその月に特定のアイテムでどれだけの売上をとっていくか、という指標になります。図にすると以下の通りです。
つまりこの①月別売上構成と②アイテム別売上構成をかけ合わせれば、「その月にインナーでどのくらいの売上を確保していくか」という指標が算出され、更に一歩踏み込んだ具体性のある販促計画が立てられるようになります。
ということは、このプロセスを踏まなければ商品の数量も価格も、そして販促も立てられないということになります。もちろんP/Lや売上構成が必要でなくても、感覚で「売上」が確保できるビジネスの天才は不必要かと思いますが、そうではない方はこの超便利な指標を利用しない手はありません。
次回はこの内容を基に、私の実体験を含めたプロモーション戦略について書いていきたいと思います。長々とお読みいただきありがとうございました。(ワダアサト)
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OMOTE TO URA代表。文化服装学院グローバルビジネスデザイン科卒業。EXHIBITION NEW SHOCK・CULTURE BREAK MARKET主催。
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