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アパレルのMD設計には品揃え計画に連動した「販促計画」が盛り込まれているかと思います。月ごとの強化品番やプッシュしたいスタイルをファッション雑誌に掲載したり、テレビで芸能人が着用したりと様々計画している事でしょう。昨今、これに取って代わってきているのがInstagramを活用しての「インフルエンサーマーケティング」。Instagramでフォロワーの多いユーザーに商品を送る「ギフティング」から、費用をお支払いしてポストしてもらうなどメニューは様々ですが毎日のように目に付きます。フォロワーが多いインフルエンサーほど、広告代理店が間に入っている事が多いので費用が高騰しがちで、非常に費用対効果が悪いケースが散見されます。このような手法が流行し出してもう数年が経過しているにも関わらず、課題がそれほど解決されないままなのですが問題はどこにあるのでしょうか?
費用対効果が悪い理由として、まず「目的」が曖昧という点が見られます。
・認知度をあげたい
・イメージを良くしたい
・売上を伸ばしたい
などなど。インフルエンサーを活用して何を実現したいかで見る指標が変わるのですが、そもそもここからちゃんと設計されていないケースが多く見られます。単純に衣料品を送りつけてポストしてもらうだけで売上が上がれば誰も苦労しません。
認知度を上げる事が目的ならば、インフルエンサーの拡散から
・UGCがどれだけ発生したか?
・指名検索数はどれだけ増加したか?
を見るべきでしょう。また売上が発生した場合は、そのうちの新規の割合はどうなのか?も見ておくべきです。
単純に売上でペイしたい場合ですが、これは非常に難しい場合が多いでしょう。筆者が計測している1例をご紹介しますと、
Instagramで10万フォロワーのインフルエンサーがフィードに1回投稿
↓
1000セッション程度のトラフィック
↓
CVRが1%程度
↓
10件のCV獲得
と、案件によって差異はありますがこんな感じだったりします。仮に購入単価が1万円の場合、10万円の売上になります。粗利率50%のブランドが粗利でペイしようと思うとインフルエンサーの費用は5万円以下に抑えなければなりません。筆者の経験上ですが、10万フォロワーのインフルエンサーに1ポストしてもらうのに代理店を挟んで5万円はありえません。倍以上は確実に取られますし、10万円でポストしてくれるなら良心的な方でしょう。
顧客1人あたりのLTVを仮に3万円と考えた時、10件が新規なら単純に30万円の売上見込みになります。これで粗利が15万円という計算なので、1ポスト10万円ならギリギリ回収できる、といった具合でしょうか。どちらにせよ、劇的に効果が見込めるという訳ではありませんので、このあたりの予測を考えた上で起用を決めるのが良いでしょう。
もう一つ重要な考え方としては、あくまでコンテンツメイクとしての起用として捉えるかです。インフルエンサーがブランドのコンセプト・世界観と合っているなら、顧客にブランドを浸透させる為の手段としての費用と捉える事が出来ますし、起用する事でコンテンツ力の向上は見込めるでしょう。
ざっくり言うと「拡散力はあるがあくまでモデル」と捉える感じですね。もちろん、最低限の拡散力は計算に入れておきますが、メルマガや自ブランドのソーシャル、また広告を経由してコンテンツをたくさんの人に見てもらい、そこでCV獲得数を増やす、といった方向性になります。この場合、MDと連動したコンテンツの計画が必要になるので、結局はMD設計の精度が求められるのです。
品揃え計画立案
↓
それと連動したコンテンツ企画
↓
各コンテンツに合ったインフルエンサーの起用
と、上記のようなイメージですね。このルーティーンを実現しようと思うと、大元のMDがしっかりしていなければ成り立ちません。
広告代理店以外でもインフルエンサーマーケティングを生業にする企業は数多く存在しますが、アパレルのMD設計に精通している事業者などほぼ皆無でしょう。代理店の提案を受けるな、とは言いませんが、MDとの連動はアパレル側で担保しないとキャンペーンの実施やソーシャルを活用した拡散施策は大概が回収出来ない事をお知りおきください。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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