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「あっという間に完売しました!」
「アクセス集中し過ぎてサーバー落ちてます…。」
といったセリフをWEB上でよく目にしないだろうか?
人気ブランドがオンラインショップで販売スタートした直後にこのような事態が発生し、ある者は購入出来た嬉しさから商品画像付きでTwitterにアップ。一方で、買えなかった者は落胆した様子をInstagramのストーリーズにあげる。サーバーが落ちているにも関わらず、何故かユーザー側はややお祭り騒ぎで囃し立て、ネガティブなワードはあまり見かけない。
上記のような現象を知っている人であれば、「完売」という事態がブランドにいかにポジティブな影響を与えてくれるか想像に難くない。仮にもっと売れたであろうと機会損失を起こしていたとしても、在庫は余らないし、買えなかった者は次回の販売時にはスタート直前から待ち構えてくれる。「完売」はオンラインを主戦場にするブランドにとって重要なファクターなのだ。だが、そのブランドは本当に完売しているのだろうか?
ECを少しでも触った事がある人ならおわかりだろうが、ショップの在庫は数字を入力するだけなのでいつでもゼロに出来る。「完売」にこだわるのであれば、一定時間経っても売り切れない場合はECサイトの管理画面から在庫をゼロにするだけで完売した状況は作り出せる。(ちなみにサーバーも自ら落とす場合があるそうだ。)残った在庫はどうするのか?さらに一定時間空けたら、「人気品番の為、再入荷しました!」と言えば良い。ユーザーを裏切る行為のようだが、このような手法は珍しくなく、すぐ完売すると噂のブランドも使っている。そして、既に勘の良い人たちにはバレはじめているのだ。
何故バレるのかは簡単な話で、「短期間での再入荷」は生産リードタイムを全く無視したお話だからだ。また、店頭を持っているブランドならば、在庫消化の為に店頭を活用する場合もある。地方や海外に送ってしまえばバレないと思うかもしれないが、意外と見ているユーザーもいて、「あのブランド、普通に余ってますよね。」とぼやく若者もいたりする。中には「ODMからの仕入れ」という事でさらに買い付けたから、という言い訳も立つかもしれないが、最初に自店の商品は「仕入れ」であると名乗っておく必要がある。
オンライン専業でブランドをやる場合、数時間で最小ロットを売り切るくらいの販売力が無ければ、ちゃんとした「完売」の状況を作り出せないし、自店の力を見誤って在庫を積みすぎると「偽りの完売」を使う事になり、ユーザーから不信感を持たれる可能性がある。そして、バレた時の事を考えると非常にリスクが高いと言わざるを得ない。
最近ではソーシャルメディアの隆盛の為か、パクリが発覚したり、中韓の格安ECサイトから輸入した商材を高値を付けて販売していた事がバレるとあっという間に炎上し、信用を毀損する。短期的にはボロい商売と思うのかもしれないが、長く続ける事が出来るほどユーザーは甘くない。ソーシャルメディアはユーザーと直接コミュニケーションが取れる為、熱量は伝播しやすいが、偽りの場合はバレるのも早い。偽の完売手法がどこまで続くのかはわからないが、普段若者と接している筆者からすると、早晩これも淘汰されるのだろうとふと感じた次第だ。
株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。Twitter(@fukaji38)
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