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ファッション教育は意味がないのか?

専門学校も新年度がスタートしまして、早速初回授業が始まっております。講師業も9年目を迎えた筆者ですが最近ますます、

「ファッション教育が重要になってきている。」

と感じております。こんなことを書きますと、

「できる人間は勝手に育つ。」

だとか、

「教えている人間に実績が無い。」

だとか色々言われるんですけど、本日はなぜ今こそファッション教育が重要なのか?について書いていきたいと思います。

◯新しい技術が求められている

今やアパレルの現場で当たり前になってきている業務として「EC」や「SNS」がありますが、人材が不足していると感じることが多数ございます。筆者はファッションブランドのECディレクションを生業にしておりますので、よく「ECやSNS運用で良い人材はいませんか?」と聞かれることが多いのですが、このご相談に対して新卒を紹介するのが難しい場合が多いのです。それはある程度、専門的な知見を求められるからなのですが、それに対して学校側での授業コマ数が少なすぎるので、企業側が求める人材を十分に育成するのが難しいのです。

学校側もECに対して知見がある訳ではないので、経験値の高い講師を呼ぶことすらハードルが高く、カリキュラムが整備されておりません。結果として人材育成が進まず、供給が不足するという事態です。

EC担当者に求められるスキル

(ECと一口にいっても、これだけやる事ありますから。)

◯SNSがもたらした弊害?

筆者が学生時代だった約20年前はSNSを利用する人間は非常に少なく、一部でmixiが流行っていた程度でしょうか。ファッションの情報を取得するにはファッション雑誌や店頭がメインだった頃と比べ、今ではinstagramを中心に、より簡単に情報が取得できる時代になっております。それが原因なのか、最近店頭では「黒のTシャツには何を合わしたら良いですか?」という、誰でもわかりそうな内容のご質問が相当数増えたそうです。思えば過去、ファッションのコーディネートやアイテム名などはファッション雑誌から教わることが多かったのではないかと。筆者が新卒で入社した会社ではまず「Beginを読んで商品名やディティールについて勉強しろ」と先輩方から言われることもありました。

また、画像メインのSNSは活字を読む習慣を奪った可能性もあるかと思っております。これもインプットを妨げる結果となっているのではないかと。(もちろん、一部の方に限るケースだとは思いますが)インターネットの普及から、深掘りしたい人からするとインプットが捗るようになりましたが、一方でこのような弊害が発生し、二極化が進んでいるように思えます。

◯スターを育成するのが目的ではない

そのような理由から、ファッション教育が重要だと日々強く感じているのですが、冒頭でもお話したように、このようなことを発信しておりますと、よく否定的なご意見を見ることがございます。学生がカリキュラムの途中で退学する理由も、

「専門学校で学ばなくてもキャリアを形成できたという方の話を聞いたから。」

というものが出てきます。もちろんそのようなケースもあるでしょう。しかし教育の目的は、

「業界全体の知識・技術の底上げ」

にあります。これは持論ですが、自助努力を前提としたスタープレイヤーは確かに存在するものの、全体の割合からするとごく少数。大手の専門学校からスターが多く出てくるのは、人数が多く、自助努力ができる方の数が比較的多いからではないでしょうか。

業界で活躍している方ほど、恐らく自助努力で技術・知識を身につけた方ばかりでしょう。もちろんスタープレイヤーを輩出することを最初から諦めている訳ではありませんが、育成しようと思っても中々できるものでもありません。

一定期間、半強制的に反復して手を動かし技術・知識を身につける。本人の自助努力に期待せず育成する。

これがファッション教育においてとても重要なことだと考えております。

◯経営判断だけがブランドビジネスではない

これは実際に筆者が受けた批判ですが、

「自分でリスクを取らずにブランド運営をしていない人間が教えられることは無い」

というものがございます。しかし、ブランドビジネスは様々なセクションに細分化されています。経営者と言えど、その全ての業務を網羅した方は恐らくいらっしゃらないでしょう。「リスクを取る」という点では気概の違いはあるでしょうが、それは必ずしも技術力を担保するものではありません。現場で日々、業務をこなし培われた技術・知識は、経営に携わっていなくとも継承するに値するものでしょう。

(ちなみに筆者は企業のEC戦略の立案に携わることも度々ありますが、ブランドの根幹となるのはいつもMDであると考えています。それでもMD一人でブランドが成り立つ訳ではありませんので、技術の継承は細分化して考えなければなりません。)

また、教える技術は現場力とは全く別物ですから、

技術力が高い=講師として適している

とも言えないところが教育の難しいところでしょう。筆者も丸8年講師をしておりますが、「もっとわかりやすく教えることはできないか?」と日々試行錯誤しますし、授業終わりには「修正点がいくつもある」といまだに思います。

新年度を迎え、採用もやや復活してきております。コロナの影響から、いまだアパレルの市場規模は下がり続けていますが、自身の持ち場であるECの領域にて地に足がついた教育を実践して参りますので、アパレル企業のご担当にて積極的な採用をお考えであれば是非お声がけ頂きたく存じます。

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